要約:この記事では、飲み過ぎや二日酔いに効果的な漢方薬について説明しています。胃腸を温める「呉茱萸湯」や強い頭痛にも対応できる「黄連湯」などが紹介され、症状に応じた漢方薬の選択が重要であると強調されています。肝機能の低下や浮腫みなどにも言及されています。
もう20年以上も前の話です。大学の友達との打ち上げ会。飲み過ぎたA君がトイレで吐いてきて「寒い、胃が気持ち悪い」と。当時はウコンドリンクでしたけれども、今なら漢方薬で対処できちゃいます。「お酒のトラブルで使う漢方薬」についてお話します。
飲むとすぐに気持ち悪くなる
飲むとすぐに気持ち悪くなる。吐いてもすっきりしない(・・・酒に弱くなったのかな?)
冷たいビールをガブガブと飲む、冷えた刺身を酒の肴に。蛸ワサは美味しい、冷やし枝豆美味しい。唐揚げ追加。
仕事終わりに飲むビールって本当に美味しいですよね。20代のビールよりも40代に入って美味しさがわかった気がしますが、こうした冷飲食や暴食を繰り返すと胃のスペックが低下します。もう若くありません。漢方的には「脾胃の虚寒」とも言います。冷たいものはもう勘弁して!!と胃腸がジャブジャブになって泣いている状態です。
嘔吐・嘔吐感・悪心が起こり、たまに頭痛の方もいます。体の警告を無視して酒の量が過ぎると、ゾクゾクとした悪寒、ザワザワとした煩燥が起こることもあります。
こうしたときの処方が「呉茱萸湯(ごしゅゆとう)」胃腸をじんわりと温める作用があります。
呉茱萸湯:呉茱萸・人参・大棗・生姜
効能効果:手足の冷えやすい中等度以下の体力のものの次の諸症:習慣性偏頭痛、習慣性頭痛、嘔吐、脚気衝心(ツムラ)
頭痛を伴った冷え症で、胃部圧重感があり、悪心または嘔吐するもの:吃逆、片頭痛、発作性頭痛、嘔吐症(コタロー)
処方はシンプルで中焦を温める様な構成になっています。こうした虚証を改善する処方は、修理してエネルギーを補充するようなものです。ですので「飲み会の前だけに飲む」という処方ではありません、1ヶ月ぐらい服用してもらいます。
浮腫みやすいタイプには水の偏りをなくす五苓散を足します。
40代過ぎて酒に弱くなったときは、胃の機能もですが、肝機能の低下です。飲む前に木鶏丹という製品と共にお勧めしています。木鶏丹は飲み会の時だけ、というのもアリなんですが、これも毎日服用してもらうといいでしょう。
胃痛と頭痛で辛い
呉茱萸湯が虚とすると黄連湯という「実」に使う処方があります。
上焦に熱があり、中焦に冷えた水毒があって、為に腹が痛んで、嘔吐や気の上昇が起こるものは、黄連湯の主治である(傷寒論)
胃痛だけでなく強い頭痛も起こる状態。例えるなら、ひどい二日酔いの状態です。人生で数回経験する「頭が痛くて胃のあたりがポチャポチャ、焼けるように気持ち悪い、吐きたい・・・」という飲んだことを後悔する、あれです。
黄連湯:黄連・甘草・乾姜・桂枝・大棗・人参・半夏
効能効果:急性胃炎・口内炎・二日酔
胃腸の虚証は呉茱萸湯と一緒なのですが、上に熱がのぼってしまい頭痛まで出やすくなります。漢方では「上熱中寒」と呼びます。
手持ちに黄連湯がなければドラッグストアでも手に入りやすい「黄連解毒湯+五苓散」でもいいです。大正漢方胃腸薬(液体)もこの処方構成ですね。
頭痛にキリキリの胃痛、、、中寒(あたたかいものを好む・冷たいものをほしがらない・冷たいもので下痢を起こす・触ると胃のあたりが冷たい感じがする)が強ければ黄連湯の方がいいでしょう。
黄連湯って二日酔いだけでなく「ストレスの症状」「更年期の症状」「生理前後の症状」や「皮膚疾患」に使うこともあります。半夏瀉心湯から黄柏を抜いた処方とも考えると、けっこう汎用性が高い処方です。
この黄連湯が効く人は二日酔いなら1~3日で、他の症状でも1週間程度でも「良くなったなぁ」と実感されますが、ストレスか何かで再発しやすく「この前のお薬ちょうだいー」と再来局されます。性格的なものも関係するのかもしれません。完治、というよりも溢れたら使う、みたいなイメージです。
従兄弟の処方(瀉心湯類)
少し話はそれますが、黄連湯には従兄弟のような処方があります。例えば、さきほどの半夏瀉心湯は、黄連湯の桂皮と黄芩が入れ替わっているだけ。似たような症状で瀉心湯類を代用することもあります。
黄連湯 | 黄連・桂皮・半夏・乾姜・人参・大棗・甘草 |
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半夏瀉心湯 | 黄連・黄芩・半夏・乾姜・人参・大棗・甘草 |
※生薬量の比率は違います
飲むと翌日は浮腫んでしまう
飲むと顔が浮腫む、とか頻尿になる、とかのタイプには、五苓散です。有名な処方ですね。ネットで「飲み会 漢方」で調べるとまずこの処方が出てきます。
「五苓散は利尿の処方です!」と書いたブログもありますが、個人的には「五苓散は水の偏りをなくす処方」と考えています。
飲み会の時。吐き終わると「けろっ」としてまたお酒を飲めるタイプには、五苓散が効果的です。即効性がありますので、飲み会の時だけ、、、という服用法もアリです。すでに頭がガンガンするなら、黄連解毒湯を足すか、別の処方がいいでしょう。
飲むと股が痒い
時々ですが相談中に「酒を飲むと股が痒い」と言われることもあります。股が痒い、、、蚊に刺されたわけでも感染症でもありません。なんとなくムズムズする感じだと思います。
漢方では「湿熱」といいまして、お酒の熱がうまく排泄されず下の方(下腹部・泌尿器)に溜まってきたのでしょう。
この湿熱の処方は色々とありますが、押し出して掃除してあげる、竜胆瀉肝湯+αで処方を使うと「スキッ!」ととれたりします。
女性の場合、生理前後・排卵期前後に酷くなるとか、ホルモンバランスに関連して症状が出る方もおられます。
まとめ:お勧めの漢方薬は?
場合分けをして、色々と記載してみました。他のブログのお勧めとは少し違うかもしれません。
漢方業界のヒトと飲み会をすると、見事に皆さん「マイ飲み会前漢方セット」を持っています。統計を取ってみたいぐらいです(^-^;;;;
結論として、飲みすぎの漢方薬は何がお勧めですか?
そう聞かれましたら、私自身は「加味平胃散+黄連解毒湯」を推しています。加味平胃散の加味の部分は消化を良くする処方(晶三仙)ですから居酒屋飯にも対応できます。飲みすぎの「湿邪を抜く」というのにも即効性があります。プラス木鶏丹を加えると完璧でしょう。
頓服でもいいのですが、日常的にお酒を飲む方には、、、家の陰になっている湿った水たまりってなかなか乾かないですよね。根気よく服用してもらいます。
「お酒は適切に適量を飲むことが大切」だということで。よろしくお願いいたします。