漢方解説

竜胆瀉肝湯のポイントを解説!注意点や早く治るためのコツも紹介

竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)は効能効果を見ると「泌尿器・生殖関係の処方」。漢方ではもう少し幅広く使われています。使い勝手の良い処方ですので、ご紹介していきましょう。

竜胆瀉肝湯の効能効果

まずは効能効果から見ていきましょう。

効能効果

  • 体力中等度以上で、下腹部に熱感や痛みがあるものの次の諸症:排尿痛、残尿感、尿のにごり、こしけ(おりもの)、頻尿 「クラシエ薬品添付文書より」
  • 比較的体力のあるものの次の諸症:尿道炎、膀胱カタル、膣炎、陰部湿疹、こしけ、陰部痒痛、子宮内膜炎 「小太郎製薬添付文書より」
  • 比較的体力があり、下腹部筋肉が緊張する傾向があるものの次の諸症:排尿痛、残尿感、尿の濁り、こしけ 太虎精堂添付文書より

効能効果では、排尿・生殖関係、下半身の症状が書かれています。女性のお薬みたいですが、男性・女性どちらにも使います。

「こしけ」は女性の膣から出た粘液「おりもの」の異常のことを指しています。細菌性膣症など膣内の細菌のバランスが崩れて起こる症状一般です。

「おりもの」の異常には、早期に治療したい膣感染症もありますので、はじめて起こった場合は婦人科の受診をお勧めしています。

竜胆瀉肝湯は具体的な病名で検討するよりも、

抗生剤を中止するとまた元に戻る、繰り返し起こる、月経周期に連動して定期的に悪くなる、疲れたらすぐに起こる、菌を調べても悪い菌が見つからない、会陰部に違和感があるがステロイドでも治らない、股間の辺りに熱感や蒸れた感じが続く

といった後述の体質が絡む症状であれば、とても良く効きます。

ひとつのイメージとしてなんか熱感があってじんわりと湿っている、こんなものが特に下腹部の辺りに渦巻いているような症状に使います。イメージですよ。

漢方的な考え方

漢方的な考え方です。

「肝(肝臓じゃ無くて機能のことです)」は気の流れを通じて感情の調節をする機能があります。分かり易く言えば自律神経によって調整する機能です。この調整機能がおかしくなるパターンがあります。

竜胆瀉肝湯(肝経実火証・肝経湿熱証)

ストレスタイプ:肝経実火証

ストレスを受け続けるとイライラして眠れなくなったり、顔が赤くなったり、目が血走ったりしますよね。気分を発散させるタイミングも無く、毎日怒られている、毎日忙しい、だんだんと調子が悪くなってきます。頭が熱くなったり頭痛が起こったり。くすぶっていたイライラの火大きな火炎になる、漢方ではこれを「肝火」といいます。肝火が経絡を通って燃え上がり火災になることを肝経実火証といいます。

参考

肝経:「肝」の経絡(けいらく)。導火線のようなもので、その流れに沿って症状が起こると考えられる。

生活習慣・感染症タイプ:肝経湿熱証

高カロリーの食事、暴飲暴食、不定期な食事時間、水の飲み過ぎ、色々な原因で脾胃がいじめられ機能が低下して「湿」が生まれ「湿熱」に成長します。

感染症などの外邪もこちらに入ります。自分の抵抗力で治るはずのものでも、湿熱が絡むことで長引いたり繰り返したりします。

こうした湿熱は肝経を通り下に沈んでいき「肝経湿熱証」と呼ばれます。股が蒸れやすい、尿が黄色い、尿が濁るといった症状が出やすいです。

 

実火は上にのぼり、湿熱は下に沈む性質があります。上に行けば、頭痛や耳鳴りや不眠などに。下に行けば、陰部の湿疹・膀胱炎・尿道炎などに。もちろん、同時に起こる場合もあります。これらをまとめて改善しよう!というのが竜胆瀉肝湯です。

竜胆瀉肝湯の応用

日本の処方では抜けていますが中国の古典「医方集解」では竜胆瀉肝湯に柴胡が入っています。この「柴胡」って色々な役目があり、ストレスを緩和するのにも役立ちますから、、、例えば柴胡の入っている四逆散・加味逍遙散・柴胡疎肝湯などと竜胆瀉肝湯の併用、これは相性がいいです。

皮膚炎

アトピー性皮膚炎など皮膚疾患に竜胆瀉肝湯を使うことがあります。

①実熱・湿熱にずーーーっと燻されている状態だと炎症が進みます。②加えて、肝胆の機能が失調すると、血流が不足・血の不足が起こります。皮膚が養われなくなり、回復力も低下。アトピーの症状が悪化しやすくなります。ステロイドで炎症を抑えても・・・、中止するとぶり返します。根本的に解決するには体質的な、、、肝の湿熱や実火を改善する必要があります。

後述しますが、こうした皮膚の症状には「一貫堂の竜胆瀉肝湯」を使ったり、竜胆瀉肝湯に何か別の処方を加えて検討することが多いです。

副作用(飲み合わせ)

竜胆など苦寒薬は体のエネルギー(陰分)を消耗します。当帰・地黄で補うため副作用はそれほどで無い処方ですが、症状がないのに長期連用しないこと。陰虚傾向がある場合は注意して使用する必要があります。

治すポイントと予防

図を見てもらうとわかるのですが、ストレス・生活習慣、これを改善しない方は、ぶり返すことが多いです。治っている間に、脾胃を補う、ストレスを流す、生活習慣を改善する、こういった処方を服用する・方策を練るといいでしょう。

竜胆瀉肝湯の構成

使われている生薬

竜胆・当帰・地黄・沢瀉・木通・車前子・黄芩・山梔子・甘草 (ツムラ)

竜胆瀉肝湯には二種類の処方がある?

竜胆瀉肝湯には2種類の処方があります。原典から、薛氏の竜胆瀉肝湯、一貫堂の竜胆瀉肝湯といわれます。全く内容が違うわけ・・・ではなくて、ボンカレーとボンカレーネオ程度の関係です。ちょっと違うかもぐらい。

同じ 違う
薛氏十六種(せっし)
竜胆瀉肝湯
竜胆・当帰・地黄・沢瀉
木通・車前子・黄芩・山梔子・甘草
一貫堂
竜胆瀉肝湯
芍薬・川芎・黄連・黄柏
浜防風・薄荷・連翹

ツムラ・クラシエ・イスクラ・太虎精堂など日本の主要メーカーは「薛氏の竜胆瀉肝湯(表の上段)」が使われています。

「一貫堂の竜胆瀉肝湯(表の下段)」はコタローの【医療用】竜胆瀉肝湯エキス細粒、もしくは【一般用】竜胆瀉肝湯エキス細粒G「コタロー」ぐらいです。

一貫堂は黄連・黄柏・薄荷・連翹などを加えることで上焦にも効果があるような組み合わせになっています。処方構成から見てみると「薛氏 + 温清飲  ≒ 一貫堂」というイメージです。

一貫堂のほうが生薬数が多くて「お得!」と思いがちですが。残念ながら、生薬数を増やして一つずつの生薬量を減らして平均化していますのでお得というでもなく、使い分けです。あえて、薛氏の竜胆瀉肝湯+温清飲という使い方をする場合も、あるぐらいです。

竜胆瀉肝湯と猪苓湯との違い

猪苓湯も膀胱炎などに使う処方です。効能効果だけを見ると同じものに見えますが、使い方は違います。

猪苓湯

尿量減少、小便難、口渇を訴えるものの次の諸症。尿道炎、腎臓炎、腎石症、淋炎、排尿痛、血尿、腰以下の浮腫、残尿感、下痢。

含まれる生薬を図にしてみました。実は「沢瀉」だけしか重複してないんです。

竜胆瀉肝湯は瀉火ですね。炎症と言い換えてもいいでしょうか、竜胆瀉肝湯は熱を取るような生薬が多いです。

対して、猪苓湯は水が偏ってしまって出ない状態に使います。小便がでにくいだけでなく、浮腫んだり口が渇く、なども起こります。水を捌くような生薬が多く含まれます。

ポイント

熱や蒸れた感じがあれば竜胆瀉肝湯がお勧め

竜胆瀉肝湯の症例(口コミ)

陰部掻痒感(40才女性)

Aさん、40代女性、身長160cm程度。2016年に出産後、急に激しい外陰部の痒みに襲われる。いくつかの皮膚科を受診するが、改善せず、現在に至るまで痒みが続く。おりものの検査をするが、細菌が検出されない。ステロイドや抗生剤でも痒みは改善しない。排卵期および生理前に特に痒みが酷い。甘い物、スナック菓子で痒みは悪化する気がする。アレルギー歴あり、皮膚はやや赤みあり、股間に蒸れたような熱感あり。不眠はややあり(熟睡できない)。生理前に、頭痛がする。急に逆上せることがある。仕事は看護師で、出産後しばらくして働き出した。毎日イライラするほどもないが、昔よりは怒りやすくなった気がする(後略)

出産・手術・更年期など何かのきっかけで、体調の変化を起こす方がおられます。Aさんの場合は出産で、もともと免疫力なども弱く風邪を引きやすかったりしていたのが急に悪化したとのことでした。

竜胆瀉肝湯+小柴胡湯+α でしばらく服用してもらったのですが、1ヶ月ほどで多かったおりものが少なくなってきたとのこと。1ヶ月半ほどで痒みや蒸れた感じが半分ぐらいになって嬉しいとのご連絡をいただきました。続けて、食生活の改善をお願いしました。

2ヶ月後ですが、外出時には頭痛や喉の痛みが酷かったのが、今は改善したとのこと。竜胆瀉肝湯(加減)+加味逍遥散に変更して、継続しています。

  • この記事を書いた人

ゆうき先生

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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