清肺湯のポイントを解説!注意点や早く治るためのコツも紹介

テレビのコマーシャルで清肺湯(せいはいとう)、よく放送されているためか、お問い合わせや雑談時に話題に上ったりします。「煙草を吸っている場合に効くんですよね」「咳を止める処方ですよね」「肺が綺麗になりますか」などなど(^-^;;;;

某製薬会社さんのイメージ戦略はすごいなぁと感心しきりですが、誤解されていることも多い処方です。

目次

清肺湯は肺を綺麗にする漢方ですか?

「清」肺湯、この名前からは「清掃・清潔・清浄」すごく綺麗にするイメージがあります。「気管支の汚れを綺麗にしながら~」というキャッチフレーズから「(汚れて傷ついた)肺が綺麗に復活するんだ!!」と思ってしまいそうです。

残念なことに、清肺湯は「漂白剤」みたいな「黒い肺を白くする」便利な処方ではありません。気管支の動きは良くしますが、『(風邪や何かの影響で)肺に籠もってしまった熱を取り去る処方』です。例えば、風邪の後の咳だけ長引く。風邪は治ったと思ったのに、ゴホッゴホッと熱の籠もったような咳や痰だけ続く・・・ありますよね、そんな時に使う処方です。

効能効果

清肺湯の効能効果:痰の多く出る咳
成分:黄芩・山梔子・桑白皮・貝母・桔梗・杏仁・大棗・竹茹・陳皮・生姜・茯苓・当帰・天門冬・麦門冬・五味子・甘草

効能効果には「痰の多く出る咳」と書かれていますが、清肺湯は熱(陰虚熱)傾向があるときにつかうもの、慢性の咳に使います。

「肺寒・脾虚」つまり、「痰が薄くて量が多い・軟便傾向が続く」症状があれば別の処方を使いますし、今まさに風邪の真っ最中・急性期の「ゴホゴホ!」の場合は麻杏甘石湯をお勧めしています。

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清肺湯はどんな処方?(もっと詳しく)

漢方的には「陰虚内熱・虚熱灼肺」による熱燥咳の病状に用います。原因として、熱邪・燥邪によって肺が傷害されることから始まります。もしくはもともとご高齢などで肺腎の弱さがあるのかもしれません。肺陰が消耗すると陰虚内熱が進行します。内側に籠もった熱は、肺の経絡を損傷することで、乾燥したような熱性の咳が起こります。

陰虚内熱とは
漢方的には「陰」が減少してバランスの取れなくなった状態、ほてりや熱感を訴えます。自覚症状での熱感・微熱で、体温計で測ってもそれほど熱はありません。布団に入ると暑くて眠れない、裸足が気持ちいい、手のひらが火照る、などの自覚症状を訴えます。

陰虚内熱のため、口の乾燥・声がれ・咳嗽、津液が煮詰められての痰の粘稠、血が混じった痰、さらに手足が火照ったり、寝汗があったりします。

清肺湯は、「黄芩・山梔子・桑白皮」の苦・寒の性質と、「貝母・竹筎・桔梗」「杏仁・茯苓・陳皮」の清熱化痰・宣肺止咳の性質によって火照りや咳を治めます。

清肺湯はマルチタレント、何かを併用して

清肺湯はマルチタレントな処方です。どこに出してもソコソコはできる子ですが、切れ味のいい相方が欲しいですね。体質に合わせて何かを併用する方がいいかなと感じます。

  • 咳が酷い、痰が酷い →→ +麻杏止咳顆粒・麻杏甘石湯・五虎湯
  • 乾燥性の咳が強い、単に粘りが強い → +滋陰降火湯
  • 頭痛がある、風邪が抜けきらない → +頂調顆粒
  • 高齢で肺は弱い、すぐに風邪を引く → +八仙丸・六味丸

※体質に合わせて検討します。

清肺湯と麦門冬湯の違いは?

「清肺湯は咳を止めて痰を出すなら麦門冬湯でも同じですよね?」確かに効能効果を見ればそう見えますが、漢方的には二つの処方は全然違ってきます。麦門冬湯は肺の虚熱をとる成分が含まれていません

どちらも肺の虚熱は改善したいのですが、麦門冬湯はより脾胃の陰虚から治すことに重点が置かれています。

清肺湯麦門冬湯
 黄芩・山梔子・桑白皮・貝母・桔梗・杏仁・大棗・竹茹・陳皮・生姜・茯苓・当帰・天門冬・麦門冬・五味子・甘草麦門冬・人参・甘草大棗・粳米・半夏

左右で見てみるとわかりますが、清肺湯と麦門冬湯では生薬がかなり違っています。

清肺湯と養陰清肺湯の違いは?

養陰清肺湯という処方があります。当薬局の場合は養陰清肺シロップとして販売していました。いましたというのは、メーカーさんの都合で廃盤になってしまいました。

熱感が酷く乾燥して咽が痛くなるようなときには養陰清肺湯です。咳は乾燥した場合が多く、痰は少ないかほとんどありません。清肺湯よりもより乾燥に対処するため、潤すような処方として地黄が入っています。養陰清肺湯でも咽の痛みがあるときは金銀花を含む天津感冒片などを併用します。

清肺湯養陰清肺湯
黄芩・山梔子・桑白皮・貝母・桔梗・杏仁・大棗・竹茹・陳皮・生姜・茯苓・当帰・天門冬・麦門冬・五味子・甘草地黄、麦門冬、玄参、川貝母、牡丹皮、赤芍、薄荷、甘草

参考:中医方剤マニュアル,漢方方剤ハンドブック,中医弁証,中医弁証学

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この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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