非結核性肺抗酸菌症で使う漢方薬

非結核性肺抗酸菌症のご相談がありました。「非結核」と医師から言われると、何か難病かと思い「びっくりして」ご相談頂いたようです。

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[症例]高齢女性、血痰が出たため・・・

●80代女性(相談者は娘さん)、もともと、肺の力が弱く咳などをすることが多かった。最近は、体重が減少しつつあったが、元気にしていた。年末に風邪を引いたためか調子が悪かった。

やや微熱があり血痰が出たため受診したところ、精密検査になった。身体がだるい、朝起きても倦怠感が残っている。長期で抗生剤治療をすると言われているが、耐えられるか心配。身体のだるさなども漢方で治らないか。

非結核性肺抗酸菌症とはどんな病気?

「よくある細菌」に感染し長期にわたって進行するのが特徴です。急激に悪くなったりはしません。そしてヒトからヒトへの感染はありません

非結核性肺抗酸菌症(NTM:nontuberculous mycobacteria):非結核性抗酸菌症は、毒力の弱いタイプの菌による慢性の呼吸器感染症。非結核性抗酸菌症はゆっくりと増殖するため、薬の効果が得られにくいというのが現状。体重が減少する、微熱が出る、血痰が出るなどしますが、いずれも結核と比べると軽いmedicalNote

非結核性肺抗酸菌症で使った漢方

よく病院の(西洋薬の)治療だけ、漢方の治療だけと思いがちですが、西洋・漢方のどちらのいいところも利用しましょう。病院での治療中でも、漢方は併用可能です。症状の改善と共に、(西洋薬)治療での副作用の軽減ということもありますのでお勧めです。

非結核性肺抗酸菌症ですが、だいたいは感染した原因がわかりません。その時のストレスや別の病気にかかった事による免疫力の低下かもしれませんし、遺伝子的な体質かもしれません。普通は自分の力で跳ね返せるような菌ですが「なぜか」感染します。急に広がるわけでは無くて、10年20年という長いスパンで徐々に徐々に勢力を広げていきます。

病院で治療をする場合は、複数の抗生剤を長期で使うことになります。そんなに頑張っても耐性菌になりやすい、根治は難しい病気ですから、漢方からは自分の持っている機能を長く元気に使って行こうという考えで処方をします。(経過観察になる場合もあります)

漢方の考え方では長期の病状により身体の元気が奪われる、つまり「虚証」が進むと考えます。これらを「気虚」による「疲れ、だるさ」、さらに進むと「陽虚」による「冷え」が起こることもありますし、「肺腎陰虚」による「微熱、ほてり」やなどが起こるとも考えられます。

ご高齢の場合は、必ず脾虚(脾気虚)は見られますので補中益気湯を使うことも多いですが、ただ単体の処方よりも肺の弱りを補う処方、例えば冬虫夏草や八仙丸などを加えた方がいいかなと思っています。

症状 処方
 身体の疲れ、食欲減少、だるさ、胃腸虚弱、体重減少 補中益気湯+冬虫夏草
(双料参茸丸・霊芝夏煌など)
 身体の疲れ、だるさ、体重減少、呼吸のしにくさ、
体の火照り、手足の火照り
補中益気湯+八仙丸
 身体の疲れ、初期、疲労感、内側からのなんとも
言えない火照り、咳痰があり痰も切れにくい
麦味参顆粒+養陰清肺湯
食欲不振、風邪にかかりやすい、腰の辺りから冷える 海馬補腎丸+黄耆建中湯
咳や痰がある、手足が火照る、呼吸のしにくさ 清肺湯+八仙丸

※これらの処方は一例です

漢方を服用してその後

先ほどの女性ですが、抗生剤3剤併用による長期治療となりましたのでプラスアルファで上記のような処方を。食欲のさらなる低下が心配でしたが、それほどでもありませんでした。病院の治療によっても完治ということはありませんでしたが「食事も美味しいですし」「元気でやっています」とお話ししていました。食欲があるのはいいことですね。

別件で、「補中益気湯と清肺湯の違いがわかりません。混ぜて使っていいのですか?」そんな質問がありました。違いについて書こうと思ったら、ページ数が足りなかったので別のページで紹介したいです。あと大切なことですが、体質に合わせて漢方処方は選ぶようにしてください。

こちらの症例も参考にしてください↓↓

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この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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