漢方解説 足腰の痛み、しびれ、脊柱管狭窄症

こむら返りと芍薬甘草湯

ふくらはぎの筋肉が突然痛みと共に、引き攣る、こむら返り。こむら返りは、ご高齢になっておこる場合もありますし、肝硬変や糖尿病、透析などの病気を持つ場合、さらに起こりやすくなります。

一度起こると、繰り返し起こりやすくなりますが、この症状に漢方薬の芍薬甘草湯がとてもよく使われて、大きな成果を上げています。

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芍薬甘草湯とは?

芍薬甘草湯は、白芍と甘草の2つの生薬からなる処方。大昔の傷寒論にも記載されている由緒正しき処方です。不思議なことに芍薬だけでも甘草だけでもそれほど効果はありません。

例えると、伸びにくくなったゴムを柔らかくするような処方です。頓服で用いる場合も多く、基本的に体質改善をしようという処方ではありません。ですので、当薬局では「繰り返し」こむら返りをおこす方には体質改善の処方と併用するようにしています。

女性の場合のこむら返りでは、陰血を養う、婦宝当帰膠などを基本に、その方の体質ごとに処方は変わります。

こんな時にも芍薬甘草湯

そして、芍薬甘草湯は応用範囲の多い処方です。

「柔肝解痙・緩急止痛」といい、肝の陰血を補い肝気を補う。

古典にはこのように書かれていて、胃けいれんなどにも使いますし、胆石の痛みや、腹痛。差込や、肩こり、神経性の症状や不妊症にも使われます。この芍薬・甘草の組み合わせは色々な処方に取り入れられています。

芍薬甘草湯と副作用

芍薬甘草湯の問い合わせのひとつに「取り過ぎによる副作用」があります。甘草の摂取量が多い場合、偽アルドステロン症、症状としては浮腫や脱力感などの低カリウム血症が起きるといわれています。

一般的に甘草換算で1日7.5gを上限と考えます。芍薬甘草湯は1日3回服用すると6gの甘草量になり、複数の処方の併用やその他の西洋薬を併用している場合(ステロイド/プレドニゾロン・利尿薬など)は注意することもあります。高齢の女性は服用の頻度が高いと言われています。

といっても(当薬局では)芍薬甘草湯だけを1日3回長期で服用してもらう例はほとんどありませんし、こむら返りなら「痛みのあるときだけの頓服」にするか別の処方にするかしますので、芍薬甘草湯を怖がる必要は無いです。偽アルドステロン症は気がついて服用を中止すると治ることがほとんどです。

こむら返りの原因は?

こむら返りの原因は糖尿病や、尿毒症、電解質異常、筋肉の疲労、ビタミン・ミネラルの不足、過剰な発汗とは言われていますが、結局病院で検査しても「原因不明」といわれることが多いです。一般的には養生法として、ストレッチなども勧められています。

こむら返りの食養生

漢方では、肝主筋(肝は筋を主る)と考えます。比較的よく起きる場合は肝血不足を考え婦宝当帰膠・当帰芍薬散など補血・活血の処方+食事の改善(タンパク質・アミノ酸をしっかりと)である程度改善できるかなと考えています。

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薬剤性でのこむら返り(カルニチン不足)

食事の改善(タンパク質・アミノ酸をしっかりと)と書きましたが、こむら返りはカルニチンという必須アミノ酸が不足したときにも起こります。

通常は、肉類(鶏肉・魚肉・乳製品など)で補充できますし、普通に食べていたら問題は起こりません。ただ、ご高齢で食が細い・ご高齢や小児で筋肉量が少ない(カルニチンは筋肉に貯蔵される)・薬剤性などが絡みあうと不足してしまいます。

特に、副作用を起こしやすい処方って、、、ご高齢の方が服用していそうな処方ですよね、、、

カルニチン欠乏症を起こす主な薬剤

●抗てんかん薬(バルプロ酸ナトリウム、フェノバルビタール、フェニトイン、カルバマゼピン) ●抗菌薬 ●抗がん剤 ●局所麻酔 ●イオンチャンネル阻害薬 ●HIV治療薬 など

日経DI 2019.04 P024より引用
詳しくは服用している薬剤の添付文書もしくは処方を受けた薬局にお問い合わせください

病院ではカルニチンの補充の処方としてエルカルチンという処方薬があります。添付文書を見ると、治療の場合は1日1500~3000mgと記載され、予防では250mg~750mg/日となっています。レボカルニチン(L-カルニチン)はサプリメントにもなっていますので、ドラッグストアで購入して服用するのもいいでしょう。

西洋薬のこむら返り治療薬

整形外科などでこむら返りに処方される西洋薬として、筋肉の緊張を取る「ミオナール」「テルネリン」「ダンドリウム」や、痙攣を取る目的で「ガバペン」「テグレトール」「アレビアチン」、カルニチンの補給のため「エルカルチン」や「ウラリット-U」(クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム)を使う場合もあります。

芍薬甘草湯はその中でも効果も有用性も高いと言われています。ただ、漫然と投与するのは私は反対です。「病院で芍薬甘草湯を2ヶ月処方された、大丈夫か?」という問い合わせの電話もありますが、そんなに「予防的に」服用しなくても大丈夫です。夜1回とかでもいいですし、始終こむら返りを起こすなら、何かの検査をすることをお勧めします。

「こむら返りに芍薬甘草湯」とてもいい処方なのですが、適切に使っていただきたい処方です。

(参考:NIKKEI DRUG INFOMATION 2009.03PE09 2006.03 P36

  • この記事を書いた人
福田優基

ゆうき先生

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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