ストレス めまい、ふらつき 漢方解説 眠りが浅い、ぐっすり眠れない

定悸飲はこんな処方です

定悸飲(ていきいん)は漢方薬局をしている先生でも使い慣れない処方(マイナーな処方とも言います)。奔豚症、いわゆるパニック障害など耐えがたい恐怖感を伴った激しい動悸や不安への処方です。

定悸飲の効能効果

まずは効能効果を見ていきましょう。

効能効果

体力中程度で、ときにめまい、ふらつき、のぼせがあるものの次の諸症:動悸・不安神経症

動悸がポイントです。この動悸は、不安になって急にドキドキドキドキと強い動悸を感じる、冷や汗がでて頭が真っ白になってしまうような動悸です。まさしくパニック。さらにその動悸に不安を感じて、家を出たくない、嫌なことをグルグルと考え堂々巡りになってしまう症状を改善します。

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と、すべてのパニック症に効けば最高ですが。残念ながら「ときにめまい、ふらつき、のぼせがあるものの」と書かれているとおり、体質的に「胃腸虚弱で冷えがあって、眩暈や動悸を起こしやすい」ことが前提条件です。のちほど説明します。

定悸飲

定悸飲(錠剤)

小太郎の錠剤のなかでも小粒で飲みやすい錠剤です

定悸飲の構成生薬

定悸飲の構成生薬を見ていきましょう。

処方名 生薬
定悸飲 李皮・桂皮・甘草・白朮・茯苓・呉茱萸・牡蛎

基本骨格が「苓桂朮甘湯」で、さらに李皮・呉茱萸・牡蛎が加わった処方です。

基本骨格の苓桂朮甘湯は、上の図の右側「脾虚(胃腸虚弱など)→痰が上に昇って眩暈や動悸や自律神経失調の症状を起こす」の部分です。体が疲れやすい、冷える、便が緩い、下痢気味といった基礎の体質を治します。苓桂朮甘湯については別のページで詳しく紹介します。

加えている李皮・呉茱萸・牡蛎ですが、

「李皮」は、日本の製剤では定悸飲にしか組み込まれていない生薬で

李皮(李根皮) 寒・苦鹹 渇を消し、心煩、奔豚気を止める [中薬辞典(中国語)]

との記載が中薬辞典にあります。李皮というとなんだか縁遠い生薬に感じますが・・・カタカナで書くとスモモです。あのちょっと酸っぱいプラムです。李皮とはスモモの根(もしくは幹)の皮です。

「李下に冠を正さず」の故事のあるスモモは民間薬として用いられています。デキモノの解毒・入浴剤・咳止めと活用されているのですが、また別ページで紹介したいと思います。

で、話は戻ります。

「奔豚気」は、豚が猛烈に走るように下から(不安感や恐怖が)突き上げる状態。豚といわれると違和感がありますが、日本では猪とほぼ同じ意味です。猪突猛進といえば判りやすいかも。ずーーーっと不安感・恐怖などが続くわけではなく、時間が経つとある程度楽になります。

この奔豚気の熱を李皮で冷まして、呉茱萸を加えることでバランスを取っています。呉茱萸は、不安感・落ち込みに、四肢の冷え、軟便などが起こる裏寒症を改善しつつ、気を動かします。また、上に溜まった熱を冷ましつつ、下向きのベクトルがある牡蛎なども加えて「寒熱のバランスを取りつつ上の熱を冷ます」という処方になっています。

漢方って、バランスを取るのに逆属性の生薬を加える、ということがよくあります。学生から「わかりにくい!」といわれる原因です(^-^;;;;

質問をいただいたことがあるのですが、定悸飲が無い場合は苓桂朮甘湯+呉茱萸湯+ミンハオといった組み合わせもいいかなと。重鎮安神の琥珀(ミンハオ)を牡蛎の代わりに加えたほうがいいです。定悸飲に琥珀(ミンハオ)という組み合わせもアリです。

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症例:パニック障害と眩暈

症例

50代 女性、痩せ形、5年ほど前に心療内科にてからパニック障害と診断され、ドグマチール、レボトリールを処方されている。
ひとりでは不安感が強く外出できない(家族の付き添いがあれば可能)。不安感や怒りがちょっとしたきっかけで発生し、強い動悸を感じる。窓を閉めたかなど急に不安になり何度も確認する。
内科では高血圧や高脂血症など薬を処方されていた、現在は服用せず。フワフワの眩暈は10年ほど前から続いている。頭がふらつき・動悸がするので、急に動くことが出来ない。手足の冷え・肩こり強い。内科にて加味逍遙散・柴胡加竜骨牡蛎湯などを服用したことがあるが、変化無し(後略)

病院の薬もなんとか減らしていきたいとのことでご家族との来局です。10年前は脾虚からくる眩暈だけだったのかもしれませんが、徐々に不安感が強くなり、ひとりで外出できなくなってしまったとのこと(原因は覚えていない)

心療内科の処方は併用しつつ「定悸飲+    +頓用で敬震丹」もお勧めしています。1~2ヶ月ぐらいは良くなったり元に戻ったりと波がありましたが、、、。諦めずに頑張りましょう、とお話ししてちょっとずつ改善しています。心療内科でも薬の量を減らしていきましょうね、と言われ喜ばれています。

定悸飲の類似処方

定悸飲は苓桂朮甘湯から枝分かれする処方で、類似処方も多いです。

処方名
苓桂朮甘湯 茯苓・桂皮・白朮・甘草
苓桂甘棗湯 茯苓・桂皮・  ・甘草 大棗
聯珠飲 茯苓・桂皮・白朮・甘草 当帰・川芎・芍薬・地黄
定悸飲 茯苓・桂皮・白朮・甘草 李皮・呉茱萸・牡蛎

 

定悸飲のメモ

商品名  定悸飲エキス錠N(コタロー)
ジャンル 第二類医薬品
効能効果 体力中程度で、ときにめまい、ふらつき、
のぼせがあるものの次の諸症:動悸・不安神経症
内容量 135粒(15日分)
商品単価 3600円(税抜)
販売元 コタロー
摂取方法など 1日3回、1回3粒(食前・食間に服用)

この商品は店頭のみの販売になります

  • この記事を書いた人
福田優基

ゆうき先生

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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