漢方解説

【帰脾湯】ただの胃腸薬ではありません、貧血や不眠症にも使います

帰脾湯はただの胃腸薬ではありません

帰脾湯、漢字を聞いて「胃腸薬ですか?」と言われることがあります。確かに「脾」とかかれていれば胃腸薬に見えますが、処方構成的には虚弱体質だけでなく、応用範囲の大きな良い処方です。例えば不妊症の女性に使って良かったこともあります。

不妊治療中の女性に良かった例

不妊治療中の30代後半、女性。不妊専門病院に2年通っている。人工授精のためホルモン剤を服用中。若いときは朝までぐっすりと眠るタイプだったが、最近では夜は1~2回ぐらい目が覚めてなかなか眠られない。クヨクヨと同じコトを考えてしまうし、将来に対する漠然とした不安感が強い。買い物をすると気力が続かなくてすぐにしゃがんでしまう。病院で貧血検査をしたところ、問題が無いと言われた。

「休みの日には絶対に出かける!」というタイプだったらしいのですが、この数年で急に体質が変わってしまったとのこと。色々と質問をしていたのですが不妊専門病院に通い始めた頃が始まりらしいです。長時間受付で待って受診をしての不安感、家では色々と思い悩んで落ち着くことが出来ない。こんな「思い悩むことで体調が崩れてきた」ときに使う漢方処方のひとつが「帰脾湯」です。この方の場合は加味帰脾湯と数種類の処方をお勧めして半月後に「気持ち的に楽になってきました」と。そして6ヶ月目に「先生、高温期が続いています!」とのお電話を頂きましたヽ(´ー`)

帰脾湯の効能効果

帰脾湯の添付文書を見てみますと、

帰脾湯の効能効果

虚弱体質で血色の悪い人の次の諸症 貧血、不眠症  ツムラ添付文書より引用

体力中等度以下で,心身が疲れ,血色が悪いものの次の諸症:不眠症,神経症,精神不安,貧血 小太郎漢方

こんなことが書かれています。貧血が起これば眠りにくくなるだろうな、と直感では分かるのですが、神経症や精神不安とか、どうして関係があるのかよく分からないですよね。

帰脾湯のはたらき

帰脾湯を表す漢方の単語として

  1. 心脾両虚
  2. 脾不統血

の二つが上げられます。漢方の用語が出てきました(;´Д`)がそんなに難しくないですよ。

1 心脾両虚、思い悩むことで「心」と「脾」の機能が低下している状態です。思い悩む、色々ありますよね。受験であったり、仕事であったり、不妊、人生、親兄弟。悩んで消耗していきます。臨床応用では、さらに幅広く使われます。

2 脾不統血、脾が虚したために血を治める働きが無くなり出血した状態です。この出血ですが「切り傷・大きな出血」ではなくて、青たんがよくできる・慢性的な出血(炎症とかの出血)・月経期以外の出血などダラダラ/タラタラの出血というイメージです。

例えばですが「産後の女性で体調が悪い、どこかでぶつけたのか青たんがよくできる」という方、帰脾湯がいいですね。

帰脾湯とは

先生、 胃腸と血は関係するんですか?

脾なのに血。血といえば西洋医学的には骨髄で作られますよね。おかしいですよね。漢方的には「気血生化の源である脾に帰って治療する(気血は脾から作られるので、まず基本を強くしましょう)」と考えます。

ただ、そう説明すると理系の患者さんは「ふーん(;´Д`)」という表情になることが多かったのですが、こんな記事がありました。

赤血球や白血球、血小板といった血球は、従来、骨の中心部の骨髄にある造血幹細胞からつくり出されていると考えられてきた。腸移植を受けた患者の血液にドナーの血球が含まれていることに気づき、移植された腸にドナーの造血幹細胞が存在することを突き止めた。ドナーから移植された腸には造血幹細胞をはじめとする複数種の前駆細胞が存在し、ドナーの造血幹・前駆細胞(HSPC)は患者のリンパ球表現型に寄与していた。「血球は腸でも生成される」ことがわかった──腸移植の耐性を高める可能性

骨髄だけでなく消化管(腸)も造血する可能性があるという。脾を強くすると実際に血を増やす意味もある、と考えると夢が広がります。

帰脾湯の処方構成

なんとなく、処方構成についても一応。

帰脾湯の処方構成は:人参・白朮・茯苓・大棗・黄耆・当帰・遠志・甘草・木香・生姜・酸棗仁・竜眼肉、加味帰脾湯は+柴胡・山梔子をします。(ひとつひとつの生薬の意味は省略します)

帰脾湯の臨床応用

帰脾湯は臨床応用がほんとうに幅広い処方です。

貧血や不眠症、神経不安だけで無く「イスクラ心脾顆粒」という製品では健忘の効能効果があったりします。例えば、漢方のエッセンスという書籍には臨床応用についてこのような記載があります。

各種貧血・不眠症・健忘症・血小板減少性紫斑病・下血・吐血・自律神経失調症・神経衰弱・不安神経症・ヒステリー・不正性器出血・不妊症・更年期障害・慢性胃腸炎・神経性胃炎・胃十二指腸潰瘍・低タンパク症・各種心疾患などで、心脾両虚・脾不統血の症候を呈するもの 漢方のエッセンス 日経BP社 P37より引用

加味帰脾湯と帰脾湯の違い

加味帰脾湯は帰脾湯に「柴胡・山梔子」を加えた処方です。柴胡は「肝」の熱を冷まし山梔子は「心」の冷まします。肝・心は相生の深い関係にありますので相性がよく、「イライラ・憂鬱」などを押さえる意味があります。添付文書には、

効能効果
帰脾湯 虚弱体質で血色の悪い人の次の諸症:貧血、不眠症
加味帰脾湯 虚弱体質で血色の悪い人の次の諸症:貧血、不眠症、精神不安、神経症

※ツムラ添付文書より引用

このように記載されています。

病状が悪化し、心の熱が強くなると不安感・イライラが強くなる。その場合は上記のような柴胡・山梔子を使った加味帰脾湯を使いましょう・・・ということで。じゃぁ、心熱がなければ帰脾湯なのか、といいますと。正直、そこまで使い分けなくても大丈夫じゃないでしょうか(^-^;;;; 

そして、他の処方と併用することも多い「帰脾湯」ですので、また別のセクションで話したいと思います。

  • この記事を書いた人

ゆうき先生

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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