抑肝散(よくかんさん)はこんな処方です

介護施設に勤務している患者さんと雑談をしていましたら、

「先生、抑肝散(よくかんさん)ってどんなお薬?」
『イーッとしてる方が多いんですかね?』
「施設のおじいちゃん、おばあちゃん、みんな処方されてるのよ」
みんなですか・・・!悪い処方じゃないんですけどねぇ・・・』

数年前のNHK報道(抑肝散が認知症に~)から病院でも使われ始め、今ではメジャーな処方になった抑肝散。看護師や介護の方への認知度では葛根湯に勝るとも劣らない状況です。

アリセプト、という認知症のお薬ご存じでしょうか。認知症の患者さんに「アリセプト」という認知症のお薬が処方されると、急に活発になることが多いんです。活発になりすぎると徘徊や暴言(BPSD)なども強く出てきて介護がほんとに大変になります。ある病院では、その活動的になりすぎた部分を押さえる目的で抑肝散を使っています。 向精神薬のようにぼーっとさせず、ある程度押さえてくれる、副作用も出ない、穏やかな処方のためとても助かるようです。

そんな抑肝散。そこから「認知症にも効果のある処方」のように勘違いされていますが、漢方でも使い方が大切な処方です。

抑肝散

【薬効】平肝熄風・疎肝健脾
【処方構成】柴胡(さいこ)・釣藤鈎(ちょうとうこう)・当帰(とうき)・川芎(せんきゅう)・白朮(びゃくじゅつ)・茯苓(ぶくりょう)
【効能効果】虚弱な体質で神経が高ぶるものの神経症、不眠症、小児夜泣き、小児疳症(疳の虫) ツムラ

この平肝熄風というのがポイントで樹がゆらゆら~と不安定に揺られているのを想像してみてください。支柱を立ててあげるのが抑肝散です。

抑肝散の効果とは

具体的には「感情が高ぶって、同時にムズムズと体を動かしたくなる、震えや眩暈で悩んでいる」場合に効果があります。「肝気が強い小児の感情の高ぶりを押さえる処方」として使われてきました。こうした処方の抑肝散が物忘れみたいな症状を改善するか、というと・・・いかがですか?ちょっと疑問ですよね。

前述の方にこの話をしたところ
「私もストレス溜まっているから、抑肝散でいいの?!!!」
『いやぁ・・・ストレスの処方はまた別ですよ』

ストレスの処方としては、四逆散からの応用の処方、加味逍遥散や柴胡疎肝湯などがありますが、慢性的なストレスや女性の生理前のイライラなどにはこちらのほうが効果がある場合が多いです。

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この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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