婦宝当帰膠・当帰芍薬散・四物湯の違い

婦宝当帰膠についてお話ししている時の質問に、

[st-kaiwa5]産婦人科で当帰芍薬散を処方されましたが、婦宝当帰膠と一緒ですか?[/st-kaiwa5]

他にも、当帰芍薬散と一緒に服用してもいいのですか?どう違いますか?色々な質問があります。

一緒の点といえば名前の通り「当帰」を含んでいること。 当帰は、婦人の聖薬とも呼ばれ、血液を補い、流れを良くして痛みを和らげる、女性のためのような生薬です。もちろん違う部分もあります。

目次

効能効果の比較

婦宝当帰膠・当帰芍薬散・四物湯の効能効果を抜き出してみました。一覧でみてみると全然違いますが、漢方では大枠で「血虚」に分類される症状です。

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効能効果
婦宝当帰膠 更年期障害による次の疾患:冷え症貧血生理不順,生理痛,腹痛,腰痛,肩こり,頭痛,めまい,のぼせ,耳鳴り
当帰芍薬散 筋肉が一体に軟弱で疲労しやすく、腰脚の冷えやすいものの次の諸症
貧血、倦怠感、更年期障害(頭重、頭痛、めまい、肩こり等)、月経不順、月経困難、不妊症、動悸、慢性腎炎、妊娠中の諸病(浮腫、習慣性流産、痔、腹痛)、脚気、半身不随、心臓弁膜症
四物湯 皮膚が枯燥し、色つやの悪い体質で胃腸障害のない人の次の諸症産後あるいは流産後の疲労回復、月経不順冷え症、しもやけ、しみ、血の道症

血虚は血の元気が無くなる症状です。わかりやすい例でいえば、貧血もそうですし、眩暈・顔色がわるい・唇や爪の色が薄い、酷くなれば不眠・手足の痺れ、女性の場合なら生理痛や月経不順も起こります。

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成分(生薬)の比較

婦宝当帰膠は膠艾湯(四物湯)・聖癒湯を合わせたような処方をしています。と急に難しい事を話しますが(^-^;;;; 膠艾湯(四物湯+阿膠・艾葉)は補血調経つまり月経不順や子宮の冷え、貧血気味や悪露などに使われます。そして、聖癒湯(四物湯+黄耆+党参)は補気や補血の効果を高めます。二つ合わせることで四物湯の効果をググッ!!!と高めています。

当帰芍薬散は、四物湯+蒼朮・沢瀉で不要な水分(湿)を排出する作用をアップさせています。

胶艾汤:治妇人冲任虚损,月水不调,子宫久冷,腰腹疼痛,赤白带下,或恶露不止。此药能通经络,活死血,生新血。
圣愈汤:补气,补血,摄血。

また、婦宝当帰膠は9種類の生薬から、当帰芍薬散は6種類の生薬から構成されます。生薬の数が多ければそれだけマイルド(落ち着いた)働きにはなります。

成分
婦宝当帰膠 当帰・黄耆・地黄芍薬茯苓・党参・甘草・川芎・阿膠
当帰芍薬散 当帰川芎芍薬茯苓・蒼朮・沢瀉
四物湯 地黄芍薬当帰川芎

構成比率の違いも

主薬の当帰は婦宝当帰膠は約6~7割を含みます。逆に、当帰芍薬散は約1~2割しか含んでいません。 漢方では、このように処方の構成・比率が違うと、全く違う処方として存在します。

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婦宝当帰膠は当帰・阿膠の働き(血を元気にする)を意識した処方

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もちろん、当帰芍薬散が全くだめ、という事ではありません。当帰芍薬散には茯苓や沢瀉が含まれていますので、当帰芍薬散は浮腫や軟便傾向、日本人的な水飲み体質には使いやすい処方です。

当帰芍薬散を服用していた30代女性、貧血症状が全く改善しなかったのですが。婦宝当帰膠に変えてみると、元気になったという事もあります。

剤型の違いも

当帰芍薬散は粉末やエキス製剤が多いですが、婦宝当帰膠は液剤です。

粉末や粉薬にした場合は香りなど揮発成分が飛んでしまうことが多いですが、手軽に持ち運び・服用することが出来ます。

含まれる生薬の違い

これはメーカーの違いにはなるのですが、作物と一緒で生薬の取れる場所によっても大きな違いがあります。中国は日本とは比べものにならない広さですから、北で栽培された生薬と山を隔てた所の生薬では違いがある・・・のは当然です。(もちろん、ある一定の有効成分は測定されています)

まとめ

のみ分け方は

じゃぁ、婦宝当帰膠・当帰芍薬散・四物湯・・・どれを使ったらいいの?!!!と逆に迷ってしまうかもしれません。イメージとしては

  • 四物湯(基本の処方/他の処方に入ってる)
  • 当帰芍薬散(四物湯+水を捌く)
  • 婦宝当帰膠(四物湯などの強化版)

という認識でいいかなと。困ったら婦宝当帰膠でOKです。

婦宝当帰膠と当帰芍薬散の併用は?

『当帰芍薬散と婦宝当帰膠を服用してもいいですか?』そんな質問を受けることもあります。生薬が重複服用している場合は大丈夫だろうか、そんな疑問もありますよね。サイトによっては、全面禁止のような書き方をしていますが、

当帰芍薬散を処方され服用中だが、一般用医薬品のイスクラ婦宝当帰膠を一緒に飲んで良いか? (県民)
重複投与防止生薬の4つの成分が重複している。一般用医薬品のイスクラ婦宝当帰膠は服用しない。医薬品や健康食品を服用する場合は、必ず医師・薬剤師に相談する。福岡県薬剤師会

我々も出来るだけピンポイントで体に合う処方を選びますが、現代のひとの病状は複雑で、日本で許可された処方も限られている。生薬が重複しないようにするには煎じ薬で調整するのが一番だが、煎じ薬は毎日が大変・・・という場合は、複数の処方を同時にお勧めする場合もあります。

何も検討無しで漫然と併用することは私も反対です。ただ、併用する方が良い場合も存在します。「婦宝当帰膠に夜だけ~~という処方を足してくださいね」そんなふうに使うこともあります。

生薬・処方の方向性や体調などによっても左右されますので、専門家に相談の上、服用する様にしてください。

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この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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