五淋散(ごりんさん)はこんな処方です

膀胱や尿道のトラブルに使う「五淋散」についてのお話です。最近では膀胱炎、というとすぐに”泌尿器科→抗生剤”という流れではあります。

ただ、漢方の処方は

  • 初期の膀胱炎、
  • 繰り返す膀胱炎、
  • 無菌性の膀胱炎、
  • 冷えて起こる膀胱炎
  • 抗生剤の連用は抵抗がある

そんな方にも漢方での治療をお勧めしています。

漢方の処方と行っても、今回お話しする五淋散だけでなく、猪苓湯、五苓散、八味地黄丸、竜胆瀉肝湯、清心蓮子飲あたりも有名です。

それ以外の健康食品も合わせてると色々と考えられますので、体質などに合わせて服用してください。ということで、今回は「五淋散」の説明です(^-^)

目次

五淋散の処方について

五淋散は5つの淋(尿の渋り)を治す処方という意味で名付けられていまして、

  • 石淋:尿路系の結石
  • 気淋:神経性の頻尿
  • 膏淋:尿の質がクリーム状であったり濁ったり、
  • 労淋:過労や性交渉が多すぎるとき
  • 熱林:痛みや出血、尿路感染症

という泌尿器の症状全般に効果があるといわれています。

ただし、結石の場合は別の処方を、目視できるほど尿が濁ったら泌尿器科に行ってもらいます。検査しないといけませんよね。

「気淋」「労林」「熱淋(の初期)」なら対応できます。もちろん、他の処方を足す場合も大いにあります。

どういった症状を治すのか

添付文書の効能効果には下記のような記載があります。先ほど説明した通りですが、尿関係にはよく使います。

体力中等度のものの次の諸症:排尿痛、頻尿、残尿感、尿のにごり(五淋散エキス錠N「コタロー」より)

処方構成、生薬の解説

原典である和剤局方には「茯苓・赤芍・当帰・山梔子・甘草」の5つの生薬が記載されています。“循環をよくして尿を出し、炎症を和らげる”ような方向での処方です。

解説された書籍を引用すると、

腎気不足で膀胱有熱・排尿困難・頻繁に尿意を催す・下腹部痛み、休んでいるときには起こらないが、疲労時に発生し、尿が大豆の汁もしくは砂石のようなものを主冶とする。
適応:尿路感染症(腎盂腎炎・膀胱炎・尿道炎)、淋病、腎・尿結石、前立腺炎、妊娠中毒症、チック(常用漢方方剤より)

このように特に炎症のあるものに効果があると書かれています。

日本で販売されている処方は、上記の5つにプラスして「黄芩・地黄・沢瀉・滑石・木通・車前子」を加えた11種類の加減方が使われています。

日本でちょっと進化したんですね(^-^;;;;

処方をよく見て、どういった処方に似ているかなぁと・・・。

当帰芍薬散+炎症を抑える&抗菌+利尿(菌を押し流す)

つまり、抗菌というだけでなく体の弱った部分も改善しようという考えです。昔の人はえらいです。

参考:当帰芍薬散(当帰・茯苓・沢瀉・芍薬・-川芎-白朮)+山梔子・黄芩・滑石+地黄(生地黄)+木通・車前子+甘草

症例:膀胱炎での相談

56歳男性、「膀胱炎」とのことで相談。やせ形。病院にて猪苓湯と抗生剤を2週間処方されるも変化無し。菌は検出されず。頻尿傾向が続く。

排尿時灼熱・・・というほどでも無いが痛みは少しある。夜に尿のため起きることが複数回。十二指腸潰瘍、胃もたれあり。ストレス強い。外耳炎あり(耳鼻科受診中)。

胃腸が弱くすぐにストレスで胃に来るらしい。肩こり強い。腰のあたりから鼠径部にかけて冷えあり。この数週間は仕事が忙しく、落ち着かない生活を送っていた。

便は下痢便。詳しく聞くと、一回あたりの尿量は少ない。舌:淡 その他省略

 

忙しく疲れやストレスもひどいという男性からの相談でした。「膀胱炎」は基本的に女性からのご相談が多いのですが、菌も検出されていないため漢方での「気淋」や「労林」といわれる症状かと感じます。

こういった状況に対しては西洋薬よりも漢方は効果がいいように感じます。

今回は「五淋散と(  )」の処方でお話ししたところ、1~2週間ほどで尿の症状がやや改善、それからは体を温めて元気をつけるような処方を中心に(体が弱っていたので)服用してもらっています。調子はいいようで、夜中も尿の回数が少なくなったよーと喜ばれています。

五淋散の類似処方

よく使われる類似処方として猪苓湯・五苓散と比較してみました。茯苓・沢瀉・猪苓という基本骨格は一緒ですが、五淋散は山梔子・黄芩といった生薬も入っているためより効果があるかもしれません。また、根本的な原因、たとえば冷えや尿道(膣)の洗いすぎなど生活習慣に原因のある方もおられますので、そのあたり改善するとよいかと思います。

 茯苓  沢瀉  猪苓  滑石  芍薬  蒼朮
五淋散  ○  ○  ○  ○  山梔子・黄芩・木通・車前子・地黄・甘草
猪苓湯  ○  ○  ○  阿膠
五苓散  ○  ○  桂皮
八味地黄丸  ○  地黄・山茱萸・山薬・牡丹皮・桂皮・附子末
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この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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