めまい、ふらつき 胃弱/下痢/軟便/浮腫

苓桂朮甘湯は眩暈・耳鳴り・頭痛にも

苓桂朮甘湯は、茯苓・桂皮・白朮・甘草の4つの生薬から構成される処方で、店頭では『めまい』の処方としても有名です。

苓桂朮甘湯の効能効果

苓桂朮甘湯の添付文書の効能効果を見ると

苓桂朮甘湯の効能効果

めまい、ふらつきがあり、または動悸があり尿量が減少するものの次の諸症:神経質、ノイローゼ、めまい、動悸、息切れ、頭痛(マツウラ苓桂朮甘湯エキス顆粒より)

と記載されています。眩暈ってしんどいですよね。「ふわふわ」したり「グルグル」と回ったり。苓桂朮甘湯は水(湿)が滞ったような眩暈に効果のある処方です。

ポイントは脾と「水」

中医学で「苓桂朮甘湯」を調べると「脾胃気虚(脾陽不足)による痰飲」という言葉がまず出てきます。このポイントは「脾と水(水分代謝)」です。

 

水(津液)は脾で生成され、脾→肺→腎と形を変えながら移動します。

脾(脾胃)は、外から穀物を取り入れ、受け止め、使いやすいように形を変えて送り出します。このときに、脾の機能が弱まっていると正常に津液が作られずに「痰飲」が生まれます。

花壇の土がずーっと湿っていると根腐れや虫も繁殖しますよね。適度な湿り気であることが大切。過剰な湿から生まれた痰は、動悸であったり頭痛であったり眩暈などを引き起こします。こうした水分代謝異常は五臓によって呼ばれ方も対処する処方も変わります。

  • 脾 湿困脾胃 → 健脾利湿
    全身の浮腫、倦怠感・食欲不振 藿香正気散 苓桂朮甘湯
  • 肺 肺気不宣 → 宣肺利湿
    顔の浮腫、頭痛  越婢加朮湯
  • 腎 腎陽不足 → 温腎利水
    下半身の浮腫 腰痛 冷え 真武湯

からだの「水分代謝の異常」の呼び方として【痰・飲・水・湿】がありますが、痰は一番濃く動かないもの、右に行くに従ってだんだんと薄くなります。

痰は有形無形がありますがベチョッとした汚い粘稠の感じです。焼鳥屋の換気扇の油のイメージでしょうか。そこから粘りが減っていくと最後は湿です、湿は水濡れというよりも、夏に雨が降った後、ムワッとした纏わり付く湿気のイメージです。

同じ脾の水分代謝異常でも、苓桂朮甘湯は比較的動きにくい痰飲を解消し、藿香正気散は軽いふんわりとした湿を解消する処方です。

効くタイプ

眩暈で使われる場合、具体的には「立ちくらみのような眩暈」に苓桂朮甘湯がよく効きます。「立てば苓桂、回れば沢瀉、歩くめまいは真武湯」(出典は思い出せないのですが)、このキャッチフレーズがよく出来ていて、苓桂朮甘湯は立ち上がりなど急に動いたときの眩暈、強く回るのは沢瀉湯、歩いていてフワフワするのは真武湯、さらに突発的に強く起こるなら半夏白朮天麻湯です。

「痰」は頭痛・頭重も起こすため、帽子を被っているような、頭を押さえつけられているような状態になることもありますし、心陽が虚せば心悸も現れます。

症状としては、下記のような体質に心当たりがあって、

  • 低血圧っぽいモノ
  • 眩暈・立ちくらみのようなモノ
  • 心臓神経症など動悸を伴うモノ

体質(タイプ)としては、Informationの過去の記事に詳しく書かれていましたので抜粋します。

朝寝の宵っ張りで朝はずっと床に居たい。たとえ早く起きても、頭がぼーっとし、はっきりしない。朝は食欲もなく、午前中は体や頭が働かない。段々よくなり、日が落ちる頃に、最も元気になる。夜は逆に頭がさえて眠れない。いわゆるスロースターター型である。また、冷え症で、眩量はいわゆる立ちくらみで、座ったり、横になった状態から急に立ち上がるときによく起こる。横になればよくなるが、よくならなければ冷や汗が出て、心悸亢進し、皮膚蒼白する。また立ちくらみの前段階として、フラフラと揺れることもある
東医雑録(山本巌先生)より今井先生の要約  松浦Information No305(11.2014)

苓桂朮甘湯を使う目標 下記傾向が2~3個見られる(参考:北川宗正先生)

    • 冷え症で顔色が白いが、時々ほおに赤みをさす
    • 目の下が膨らんでいる
    • 眩暈・立ちくらみ・身体動揺感
    • 肩こりや頭重・耳鳴りや動悸
    • 普段血圧が低くなる傾向
    • フクロウ型の生活
    • 乗り物酔いしやすい
    • 小便は出にくい

フクロウ型

寒い冬は元気で、暖かくなり始めた春の方がしんどくて体の力が抜けていき何も出来ない
参考:継承漢方による匙加減(吉岡孝麿先生)P198

と、吉岡先生の書籍にフクロウ型として記載がありました。

眩暈が今まさに出ていなくても、苓桂朮甘湯はやや温性で利水作用もありますから「冷たいモノで胃腸をいじめた、今は食欲が落ちて体が重い」そんなタイプにも継続的に使えます。苓桂朮甘湯+補中益気湯や香砂六君子湯を組み合わせ、浮腫があれば苓桂朮甘湯+真武湯という組み合わせもあります。

構成生薬

基本骨格は桂枝甘草湯(桂枝・甘草の組み合わせ)で、それに茯苓・白朮を加えたものが苓桂朮甘湯になります。

苓桂朮甘湯

茯苓・桂枝・白朮・甘草

桂枝と甘草の組み合わせは、苓桂朮甘湯・苓桂味甘湯・苓桂甘棗湯・桂枝湯・炙甘草湯・柴胡加竜骨牡蛎湯・柴胡桂枝乾姜湯など、とても多くの処方で使われています。また、苓桂朮甘湯からさらに生薬を加減すると定悸飲・聯珠飲・女神散・芎帰調血飲第一加減などに発展していきます。

類似処方

類似処方に「苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)」という処方があります。苓桂朮甘湯の桂皮→生姜に変更した処方で、たった一味の違いですが、使い方は違います。

日本では桂枝ではなく肉桂がよく使われることから、生姜・肉桂ともに温める処方。その点で、苓桂朮甘湯・苓姜朮甘湯も似たような処方である、と話す先生もおられます。

眩暈や痛みなど分かりやすい不利益のある症状は、症状が改善するとすぐに患者さんも飲み忘れたり中止したりしてしまいます。根底にある脾虚は一朝一夕で治るものではありませんから、眩暈の治まっている時期にこそ体質改善(養生)を継続しましょう。

臨床応用範囲

基本的な処方ですので応用範囲が広いです。病名で言えば、慢性胃炎・胃酸過多(留飲)・胃下垂・胃アトニー・十二指腸潰瘍・膀胱炎・高血圧・低血圧・心悸亢進・メニエール症・起立性調節障害・自律神経症・月経不順・小児神経質などがありますが、水や痰湿という点に着目して使うと良いでしょう。

  • この記事を書いた人
福田優基

ゆうき先生

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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