ウイルス性の風邪・発熱(赤い風邪)に効く処方を紹介します。2023年以降メーカーの欠品や商品変更などがありましたので、ページを手直しをしました。
涼解楽は、涼解楽Tとして再発売しています。錠剤は金羚感冒錠(小太郎)をお勧めしています。天津感冒片(イスクラ)・銀翹解毒散(松浦)は現在製造が中止です。
銀翹散・涼解楽
銀翹散は原典に書かれた処方名で、実際は製品ごとにいろいろな名前が使われています。まずは有名な製品から引用して効能効果をみてみましょう。
イスクラ涼解楽T 効能効果 :かぜによるのどの痛み・口(のど)の渇き・せき・頭痛
基本的に使われるのは「風邪(感冒)」のようです。ただ、「葛根湯」も同じく風邪ですよね。どう違うのでしょうか。日本中医薬研究会で行われている分け方「青い風邪・赤い風邪」を引用して説明していきましょう。
風邪の種類を大きく「青い風邪、赤い風邪」の2種類に分けて考えます。
古くから存在するのが「青い風邪」、ゾクゾク冷えて起こる風邪です。ところが最近それだけに当てはまらない風邪のタイプが多く、新しい概念が誕生しました。それが「赤い風邪」です。詳しく説明します。
青い風邪(葛根湯タイプ)
「ゾクッ」としてから熱が出る、いわゆる初期に悪寒を感じるタイプですね、これを青い風邪と呼びます。
邪気が皮膚にとりついて侵入しようとすると、肩甲骨や首筋の辺りに冷え(悪寒)を感じます。この悪寒というものは「正気と邪気の闘争」ですから、服を着込んでも肌寒い・暖房をつけてもひんやり冷える、こんな状態です。
そこに投入するのが、麻黄湯や葛根湯です。こうした援軍が正気を応援し邪気を追い出すと、風邪が治ります。葛根湯は2000年ほど前の傷寒論という書籍に書かれた定番の処方です。
赤い風邪(銀翹散タイプ)
急にくる喉の痛み、悪寒が無いタイプの風邪も存在します。これを赤い風邪と呼びます。喉や口から邪気が侵入しますので、まずは喉が痛い・腫れる、そんな症状が出ます。熱邪がフワフワ~っと体に入ってきますが、悪寒が無いのがポイント。早く症状が変化する風邪も赤い風邪です。中国では、青い風邪(傷寒)と対比させて温病と呼ばれています。処方としては、銀翹散や桑菊飲が使われます。
どこで買えばいいの?
赤い風邪でつかう処方・銀翹散は、病院などの医療用医薬品としては販売されていません。漢方専門店(薬局・薬店)や一部のドラッグストアで販売されています。昔は大手ドラッグストア風邪薬棚の片隅でも見かけることがありましたが、品薄のためか活用されないのかして、見かけなくなりました。
当薬局の場合は、涼解楽T(イスクラ)・金羚感冒錠(小太郎)を取り扱っています。
その他製品として、銀翹解毒散エキス細粒(ウチダ和漢薬)、銀翹散エキス顆粒Aクラシエ(クラシエ)、 羚翹解毒丸(八ツ目製薬)、金羚感冒散(小太郎)も同一処方として販売されています。
少し変化したものとして、八ツ目製薬の銀翹錠(八ツ目製薬)、銀翹風熱丸(八ツ目製薬)がありますが、銀翹風熱丸は羚羊角が抜けて荊芥になっています。羚羊角が将来廃止になりますので、こうした処方構成がメインになっていくかもしれません。
涼解楽Tのハナシ
イスクラ産業は早い時期から「銀翹散」を天津感冒片と涼解楽として製品化し販売していました。「天津感冒片(錠剤)」が1980年代、「涼解楽(粉薬)」2001年です。なぜか名前が全く違いますが、原典は「銀翹散(ぎんぎょうさん)」という、同じ処方です。
涼解楽は一時期販売休止の時期がありました。「羚羊角」を抜いて、涼解楽Tとして再発売しました(2021年末)
各社の製品紹介(類似処方)
各社の製品と比べてみましょう。処方構成は一緒で添加物だけ様々です。
製品名 | メーカー | 成分 |
---|---|---|
天津感冒片 | イスクラ | 金銀花・連翹・甘草・桔梗・薄荷・牛蒡子・荊芥・淡豆鼓・淡竹葉・羚羊角(※廃盤商品) ※添加物としてトウモロコシデンプン、ポリビニルアルコール、酸化チタン、タルク、大豆レシチン、マクロゴール4000、 キサンタンガムを含有します。 |
涼解楽T | イスクラ | 金銀花・連翹・甘草・桔梗・薄荷・牛蒡子・荊芥・淡豆鼓・淡竹葉 ※添加物として乳糖、ステアリン酸マグネシウムを含有します。 |
涼解楽 | イスクラ | 金銀花・連翹・甘草・桔梗・薄荷・牛蒡子・荊芥・淡豆鼓・淡竹葉・羚羊角(※廃盤商品) ※添加物として乳糖、ステアリン酸マグネシウムを含有します。 |
銀翹解毒散 | 松浦 | 金銀花・連翹・甘草・桔梗・薄荷・牛蒡子・荊芥・淡豆鼓・淡竹葉・羚羊角(※メーカー長期欠品) ※添加物としてトレハロース、メタケイ酸アルミン酸Mg、ヒプロメロース、軽質無水ケイ酸、トウモロコシデンプンを含有します。 |
金羚感冒錠 金羚感冒散 | 小太郎 | 金銀花・連翹・甘草・桔梗・薄荷・牛蒡子・荊芥・淡豆鼓・淡竹葉・羚羊角 錠:添加物としてカルメロースカルシウム、含水二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、アメ粉を含有しています。 散:添加物として含水二酸化ケイ素,軽質無水ケイ酸,ステアリン酸マグネシウムを含有しています。 |
成分など2020年12月末日のもの
少し変化した処方は別枠にしています。銀翹錠はかなり軽い喉の痛み程度に使います。駆風解毒散(松浦)も扁桃腺炎や喉の痛みなどに使いますし、風寒の風邪にも、他の処方に+αとしても使うこともあります(詳しくはまた別の機会で)
製品名 | 成分 |
銀翹錠 | 金銀花・連翹・ 桔梗・薄荷・ 荊芥 添加物として、乳糖、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウムを含有します。 |
銀翹風熱丸 | 金銀花・連翹・甘草・桔梗・薄荷・牛蒡子・荊芥・淡豆鼓・淡竹葉 添加物として 結晶セルロース、タルク、カルナウバロウ、アメ粉、 トウモロコシデンプンを含む |
駆風解毒散 | 連翹・甘草・桔梗・ 牛蒡子・荊芥・羗活・石膏・防風 添加物としてメタケイ酸アルミン酸Mg、ヒプロメロース、乳糖、 トウモロコシデンプン、香料を含有 |
各社企業秘密の部分ですが「どの産地の生薬を使っているか、どう加工しているのか」は腕の見せ所です。体感としても、同じ処方なら効果は全く同じ、、、というわけでもなく。西洋薬のジェネリックと比べても、違いが出やすい部分です。
添加物(賦形剤)の工夫は溶けやすさ・飲みやすさに関係し、舌触り・苦みも全く違ってきます。左がイスクラの涼解楽、右が松浦の銀翹解毒散です。銀翹解毒散はサラリとしていて飲みやすいです。
金羚感冒散(小太郎)はやや苦みが強く、涼解楽に似た味ではあります。
金羚感冒錠はやや小粒で、1回あたりの服用量は8粒です。
なぜ混乱しているの?
製造中止になったり、各社の商品名も変更されたり、と混乱が続く処方ですが、どうしてこんな混乱があったのでしょう。原因は「ワシントン条約」。2019年に羚羊角の規制引き上げが発表され、輸入がしにくくなりました。羚羊角を抜いた処方変更に薬事的許可や時間が必要のため、各社混乱しました。
第18回ワシントン条約締約国会議(COP18)が、(2019年)5月23日~6月3日にスリランカで開催される。COP18では、レイヨウカク(羚羊角)の基原動物サイガレイヨウが、附属書Ⅱ(輸出国政府の発行する輸出許可証があれば国際取引可)から附属書Ⅰ(商業目的のための国際取引禁止)へ引き上げ提案される見込である。日薬連の2017年度在庫数量調査によれば、レイヨウカクは年間約500kgが日本に輸入されており、提案が可決された場合、レイヨウカク配合医薬品の供給に深刻な影響が予想される(後略)
日漢協ニュースレター106号
「(製造中止って)何か問題があったの?!」とお客さんから聞かれますが、製品や処方に問題はありません。原料が入手できなくなったので、処方自体も変化していくことになります。現在販売されている製品は、すでに輸入されている羚羊角を使って製造していますが、数年後には別の処方構成に変更されると思います。
症例(こんな使い方をしています)
女性 68歳 数日前に風邪を引いた友達と喫茶店で話をしていた。喉がチリチリと痛む。寒気なし、節々の痛みなし。尿は急に出やすくなったような気がする。咳などはないけれども、このまま放置すると風邪を引きそうな気がする。(後略)
いつもご来店いただいている方なのですが「風邪かも?」とのご相談でした。風邪の初期には葛根湯・・・というイメージがありますが、ゾクゾクがなくて喉だけの症状が強い場合には涼解楽Tなどの赤い風邪の処方がよく効きます。最近の風邪はすーっと症状が移行していきますので、柴葛解肌湯と涼解楽Tを組み合わせる場合すらあります。
えっ?赤と青の処方って全く逆じゃない?
と言われそうですけれども、意外と組み合わせることができます。
応用として
漢方的には赤い風邪の処方は辛涼解表薬と言われるジャンルです。下でも解説しますが、肺経の症状に応用することもできます。例えば、顔のニキビ。赤色が強く熱傾向があって・・・清上防風湯に涼解楽Tを足してあげるなどですね。補佐的な役目も可能です。
漢方での考え方を詳しく
最後に、青い風邪・赤い風邪をもう少しだけ詳しく・簡単に説明してみましょう。
青い風邪
図の左側、傷寒病のところ、これが青い風邪です。外側から太陽病→少陽病→陽明病と内側に向かって進行します。寒邪が皮膚にとりつき、闘争している状態が太陽病です。悪寒があるのがポイントで、汗をかくなら麻黄湯、汗をかかないなら桂枝湯と書かれています。
太陽病に対応するこうした処方(麻黄湯・桂枝湯など)をまとめて「辛温解表薬(辛温解表剤)」といいます。この「辛」は「辛い」という意味もあるのですが。五臓でいう「辛-肺・皮毛」と関係し、強い温性で邪気を追い出します。処方名の通り麻黄・桂枝がメインの生薬です。
正気が負けて内側に攻め込まれると、寒邪は勢いをつけ熱を持ち始めます。この段階ではもう別の処方を使います。
赤い風邪
温病は傷寒病とまた違った概念です。熱邪はまず口や鼻から進入します。最初から「熱」の性質を持つので、寒気は無く、発熱や痛みで自覚します。
体の外側の薄いバリアを衛気と呼んでいます。ここが犯されるのが衛分証ですね。熱邪によって衛気のバリアが破られそうなのを、金銀花や薄荷をつかった辛涼解表薬(辛涼解表剤)で鎮火をするというイメージでしょうか。
ここが破られると、するする~っと病気は進行します。化熱する必要も無いので症状は傷寒病ほど大きく変化しませんが、熱感が強くなったり、からだがしんどくなったりしていきます。
まとめますけれども
青い風邪・赤い風邪の2つの概念の違いをざっくりと紹介しました。漢方が面白いのは、ウイルス・菌の「種類」で分けずに、個人の症状や症状の進行具合によって分けられていること。
この考え方を知っておくことで、
私はいつも寒気はあまり感じないが、喉が痛くなって風邪を引く。のどが痛くなったらすぐ銀翹散を使おう。とか、すぐにゾクゾクするから背筋が寒くなったら生姜湯を飲んでみようとか。喉が弱いから冬には強化する処方を飲むようにしようとか。西洋医学と違って、自分や家族のための予防や初期治療を素早くできます。