杞菊地黄丸のポイント!早く治るためのコツや剤型の違いを解説!

杞菊地黄丸には顆粒や蝋皮丸など、色々な剤型があります。「どれでも一緒ですか?!」というご質問をいただくことがありますので、杞菊地黄丸の解説とともに、剤型の違いも併せて記事を書きました。

目次

杞菊地黄丸の効能効果

杞菊地黄丸は効能効果としてかすみ目・疲れ目など「眼の処方」になっています。ただ、眼だけの漢方と考えると勿体ない。漢方で考えると六味丸に枸杞・菊花を加えた補腎の代表的な処方です。応用範囲が広く陰陽の偏りが少ないため安全に長期的に服用できるとても良い処方です。私も気に入っています。まずは効能効果について見ていきましょう。

処方名効能効果
杞菊妙見丸:八ツ目製薬体力中等度以下で、疲れやすく胃腸障害がなく、尿量減少又は多尿で、ときに手足のほてりや口渇があるものの次の諸症:かすみ目、つかれ目、のぼせ、頭重、めまい、排尿困難、頻尿、むくみ、視力低下
イスクラ双料杞菊顆粒体力中等度以下で、疲れやすく胃腸障害がなく、尿量減少又は多尿で、ときに手足のほてりや口渇があるものの次の諸症:かすみ目、つかれ目、のぼせ、頭重、めまい、排尿困難、頻尿、むくみ、視力低下
イスクラ杞菊地黄丸(蝋皮丸)体力中等度以下で、疲れやすく胃腸障害がなく、尿量減少又は多尿で、ときに手足のほてりや口渇があるものの次の諸症:かすみ目、つかれ目、のぼせ、頭重、めまい、排尿困難、頻尿、むくみ、視力低下

上から杞菊地黄丸の丸剤、顆粒剤、蝋皮丸の効能効果について並べたのですが、見事に一緒ですね。丸剤も顆粒剤も効能効果としてはまず一緒であると考えられています。

杞菊地黄丸について少し解説します、効能効果をよく見てください。かすみ目・疲れ目・視力低下は「眼の不快感・老化」ですね。では、排尿困難・頻尿・むくみ・・・?!頻尿とむくみって逆ですよね。おしっこが出る?=利尿のお薬?!・・・でもありません。

杞菊地黄丸は病院での保険調剤はしていない処方です。漢方専門店やドラッグストアでご購入ください。漢方処方にしては珍しくイスクラ・八ツ目製薬・クラシエ・NIDなど多くのメーカーから発売されています。昔は、ドラッグストアの片隅に置かれていたことがあったのですが、最近は専門店だけでの販売も多くなりました

杞菊地黄丸の構成

杞菊地黄丸について図にしてみました。

ストレス・加齢・慢性の病気・過労が始まりです。それによって、腎陰が不足します。車で例えれば、ずーーーーっとアイドリングをしていて冷却水が不足していく感じです。腎陰が不足し、腎が機能低下を起こすことで水の代謝異常が起きます。これでむくみや頻尿が起きます。

腎陰が不足し、つられて腎精が不足することで肝陰虚が起こり霞目や疲れ目が置きます。どれも慢性的でゆっくりと起こるのがポイントです。急に症状が悪化する場合は病院を受診してくださいね。

腎陰の不足は加齢・慢性疾患などでゆっくりと起こり、なんとなくしんどい、なんとなく耳鳴り・腰痛・だるさが強くなった、と「なんとなく」ひどくなっていきます。

杞菊地黄丸について説明するときには腎についてお話することが必要なのですが・・・漢方での「腎」は腎臓のことでなく、機能のことを指します。ですので、eGFRが下がった・・・という腎臓機能低下とはちょっと違います。「腎」のハナシだけでも10分ぐらいかかるんですね。ですので、ここではざっくりと。

腎とは? 漢方における「腎」は生命活動の基本となるエネルギーの種です。生殖、成長、発育の調整、水分代謝の調整、骨の健康、聴力の維持など、体内の多岐にわたる機能を担っているとされています。また、腎は「精」を蓄える場所とされ、生命力や健康の根源とも考えられています。

この腎を補うのが杞菊地黄丸です。杞菊地黄丸は、漢方の専門書では肝腎陰虚・肝陽上亢を解消する、滋補肝腎・明目の処方と言われています。

腎を補うことを「補腎」といいます。補腎については別ページに記載していますので、参考にしてください。

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使われている生薬

補腎の処方は八味地黄丸の骨格を基本として足したり引いたりしてできています。八味地黄丸も併記しました。

杞菊地黄丸:枸杞子・菊花・地黄・山茱萸・山薬・茯苓・牡丹皮・沢瀉
八味地黄丸:附子 ・肉桂・地黄・山茱萸・山薬・茯苓・牡丹皮・沢瀉  

枸杞と菊花だけちょっと違いますが、この2つがあることで陰陽の偏りが少なく穏やかな処方になっています。

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杞菊地黄丸の種類

では、杞菊地黄丸の製品について紹介していきましょう。発売されてる杞菊地黄丸の剤型は3種類有ります。丸剤・蝋皮丸(蝋の皮に包まれている大きめの丸剤)・顆粒剤の特徴を(私見も交えて)解説していきます。

丸剤の特徴

中薬杞菊地黄丸は昔からある丸剤です。1970年代頃から発売されていて、何回か製造工場を変えつつリニューアルしています。(当薬局の場合は)丸剤の使用率が高いです。一丸のサイズは6mmぐらいで飲みやすいサイズです。杞菊地黄丸というように、この丸剤が基本となります。

中薬杞菊地黄丸はメーカーの都合で廃盤(-2023)となりました。代替として「杞菊妙見丸」をおすすめしています。内容成分は同一です。

杞菊妙見丸

蝋皮丸の特徴

杞菊地黄丸(蝋皮丸)はエキスをハチミツで練った玉です。比較的高価な製品ですが、効果も高いです。生薬量は中薬杞菊地黄丸の倍で、それ以上の効果を感じます。そのまま噛んでもしくは、はさみで切りながら服用します。

蝋皮丸にすることで、保存性が良くなるとか、揮発する成分を押しとどめる作用があるとか、吸収が良くなるとかいわれています。ゴロンと丸くて大きな形状で、見た感じも効きそうです。

顆粒の特徴

双料杞菊顆粒、こちらは顆粒剤です。最近では病院でも薬局でも顆粒剤がメインになりました。サラサラと手軽に飲めて便利なのかと思います。

杞菊地黄丸シリーズ一覧表

製品名イスクラ
中薬杞菊地黄丸
イスクラ
杞菊地黄丸
イスクラ
双料杞菊顆粒
服用量1日24丸1日2丸1日3包
性状小粒蝋皮丸顆粒
特徴生薬粉末剤生薬粉末剤
ハチミツで
練っている
生薬エキス剤
含有量地黄 1.2g
山薬 0.6
沢瀉 0.45
山茱萸 0.6
茯苓 0.45
牡丹皮 0.45
菊花 0.3
枸杞子 0.3
2.86
1.43
1.07
1.43
1.07
1.07
0.71
0.71
6.06
3.02
2.25
3.02
2.25
2.25
1.51
1.51
発売時期1989年以前~
2009年リニューアル
1975年~
2010年に改名
2011年
金額(税抜360丸3800円
720丸7000円
10丸入3400円
30丸入9710円
90包7900円

この商品は店頭のみの販売になります

ここがポイント

表の左端の「中薬杞菊地黄丸」と右端の「双料杞菊顆粒S」の含有量を比較するとなんと4~5倍の違いがあります。じゃぁ効果は4~5倍も違うの?と思いますが、、、。漢方の場合特殊な事情があります。

「生薬粉末」は生薬を破砕して粉末にしており、「生薬エキス剤」とはグツグツと煮詰めてエキスにしたものを顆粒状にしています。作り方が違いますので、含有量と同じだけ効果に差があるともいえません

イスクラ杞菊地黄丸(蝋皮丸)はナツメの蜂蜜を使って伝統的な製法で練られています。ハチミツ・ナツメは胃腸を補うと言われています。個人的には、油分が飛ぶのを防いだり、保存性をさらに良くする効果があると考えています。

店頭での個人的な感覚で、効果としては「中薬杞菊地黄丸≦双料杞菊顆粒<杞菊地黄丸(蝋皮丸)」の様に感じます。

杞菊地黄丸や八味地黄丸など地黄を使った補剤は他の処方に比べて胃腸にもたれやすいです。丸剤や蝋皮丸にすることで、胃腸にもたれにくくなると言われています。長期的に効果が出てくる処方なので、含有量云々よりもそうした特徴、飲みやすさ・保存のしやすさが、好まれているのかもしれません。

結局ですが「気に入った剤型がベスト」という結論になります(^-^;;;

杞菊地黄丸の症例

77歳女性 眼精疲労での相談。夫の会社の事務作業を手伝っている。高齢になって書類が見えづらくなってきた。眼科を受診すると飛蚊症と言われているが特に対策はしていない。市販の目薬を指しているが、あまり変わりがない。画面を見ることが多く目の乾燥あり、疲れ、舌はテカテカして苔がない。冷えやのぼせなし、(後略)

眼精疲労でのご相談です。眼科ではドライアイ用の目薬は処方されていますが疲れ目には効果なく。市販の眼精疲労に効くビタミン入り目薬を常用していました。お話を聞いたところ、体の中から改善していきたいとのことだったので、杞菊地黄丸と晴明丹を併せておすすめしました。ある程度したところで、視界が明るくなったとのこと。喜ばれていました。また、半年ほどしてからは、杞菊地黄丸だけにして、継続していただいております。

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この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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