癌の再発。口から食事を摂れるという状態を長く続けること。

70歳代、女性で「がんの再発」でのご相談がありました。6年前に定期検診で大腸癌のステージⅡを発見。手術をしまして大腸の一部を摘出、その後は検査をしつつ無事に5年経過しました。5年目の定期検査で、病院からは「完治しました」といわれ一安心。で、その後は友達とバス旅行に行ったり趣味の教室にと出かけていました。

注)ステージ0~Ⅰは癌の進行が腸の粘膜から筋肉の層まで。このあたりで早期発見できれば90%ほど完治します。ステージⅡになると筋層をこえます。大腸癌の場合は5年間再発がなければまず完治といわれています。

昨年末の定期検診。地元の主治医から「肺にうっすら影があるけれども、精密検査を受けておきますか?」と。医師は肺炎の初期では?と思ったらしいのですが特に肺に異常はなく。市民病院での検査の日々が始まります。腫瘍マーカーは一定で問題は無い、ただ、何か癌のようなものも感じられる?このあたり何があったのかは解りませんが、結果癌の転移と診断され、6年目にして抗がん治療を始めることになりました。

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抗がん治療を始めたところ、皮膚が黒くなり手の皮がむけ始めました。数週間経たないうちに、手はボロボロで、痒みと痛みでお箸が持てない。体力も消耗してどんどんと痩せはじめます。口内炎、ひどくて食事が旨くできません。

腫瘍マーカーが上昇するのは、一般に、体じゅうにがんが広がっている「進行がん」の場合です。CEAを含む、多くの腫瘍マーカーは、「早期がん」で上昇することはありませんので、(1)の「がんの早期発見」の目的で使うことには、無理があります。健康な人に検査を行って、腫瘍マーカーが高かった場合、それをきっかけに、「進行がん」が見つかることもありますが、がんとは診断されないことも多く、「早期がん」が見つかることは稀(まれ)です。逆に、腫瘍マーカーが正常値であったとしても、「早期がん」がないという保証にはなりませんので、それだけで安心してしまうのは、正しい理解とは言えません。
「再発の早期発見」に意義はあるか 「再発の早期発見」の目的で腫瘍マーカーを使うことについても、いろいろと議論があります。。真の「陽性」であった場合、がんの再発を早期に発見できたということになりますが、再発を早く見つけて、症状が出現するより前から治療を開始する意義があるのか、というポイントも考える必要があります。腫瘍マーカーの意味誤解していませんか?

どの程度から抗がん治療をはじめるのか。難しい問題です。ただ、体力的にも厳しくなって途中で離脱してしまう、精神的に参ってしまう。これが一番辛いパターンだと感じています。この方の場合「そんな姿を見てられない」とのご家族のご相談が最初でした。しかも、「副作用が酷すぎる」と相談した医師からは「治療をして治癒は10%程度の可能性です」とのこと。「もうこんな状態で継続する意味はあるのか」悩みも深かったようです。

ご家族の気持ちもわかります。出来るだけ長く、当然の願いです。ただ、そんな苦労が続くのなら、短くても、親しい友達や家族と楽しく過ごして看取られたい。これもまた真実だと思います。

癌でのご相談、いつもお話しするのですが「口から食事を摂れるという状態ができるだけ長く続くこと」が大切だと考えています。自分の口から自然の気と栄養を取り入れて、消化し自分のものとする。それを手助けするのが漢方です。

この方の場合。十全大補湯と亀鹿仙の併用をお勧めしました。十全大補湯は気血の処方なのでそれを中心に。体の火照りや熱感が強くなっているため陰虚陽亢がつよいと考え、亀鹿仙を併用しています。現状は小康ではありますが、ある程度落ち着いて自宅での療養が出来るようになってもらえれば、と思っています。

※手の状態もクリームでも塗って置いてください、とだけ言われ、市販のクリームを塗る毎日だったらしいので。タイツコウ(軟膏)をお勧めしました。いい感じだったようなのですが、ただ、状況にもよります。抗がん剤の場合は、中止しない限り皮膚症状が良化する・・・ことは少ないです。出来るだけ酷くならないように予防する、のが大切です。

ガンは、人によって、環境によってそれぞれ違います。話し合い、納得できればいいのですが、ただ告知されたときにはポーンと頭が白くなってしまい。何も出来ない、そんなことも多く。ほとんどのガンは1週間ほど調べて、悩んでも。進行はしません。ある程度、余裕はあります。ご家族が支えとなり、じっくりと相談の上、方針を決められると良いかと思います。

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この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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