妊活時には夫の「胃薬」もチェック!

36歳(妻)、45歳(夫)、すこし年の差のあるご夫婦で数年前に結婚とのこと。「早く授かりたい」とのことでご相談中です。「先生、この前、主人の会社の健康診断で胃が悪いと言われたのですが」『見せてもらっていいですか?』と結果をのぞき込むと。

健康診断の備考欄に『逆流性食道炎の疑い』とかかれています。その後、会社近くの内科を受診したらしく「タガメット」という胃薬が処方されたようです。

『タガメットですか、妊活中ですから別の薬にしておいた方がいいですね』「先生、どうしてですか??」

タガメットはPPIという種類の胃薬で、服用すると「精子の数」にも影響するという話もあります。

 年齢とPPI以外の他の薬剤使用を調整した結果、精液検査前6~12カ月間のPPI使用は低TMSC(総精子数)のリスクが2.96倍と高くなっていた。同検査前6カ月以内のPPI使用は低TMSCと有意な関係はなかったという。妊活時は要注意!胃潰瘍薬が精子に悪影響?- 【あなたの健康百科】

いまちょうど妊活中ですし、ご主人も胃の違和感がおさまっているそうなので、別の胃薬をお勧めしました(シビアに総数が減少するとは思いませんが)。

目次

PPI(プロトンポンプ阻害薬)はどんな薬?

PPI(プロトンポンプ阻害薬)は比較的強力な胃酸を止める処方です。胃酸を止めてその間に胃粘膜を修復しよう、そんな目的で処方されます。昔はご高齢の方にもたくさん処方されていました。

胃薬と言えば、「ガスター10」というCMをよく見たと思います。それよりも激しく胃酸を止めます。例えるなら「家の止水栓を締めるレベル」。

最近では色々な副作用があることがわかってきましたので別の処方を使うことも多い用ですが、高齢の先生は頻用します。もちろん、胃酸を止めると逆流性食道炎や胃潰瘍が治りますが、食物の消化がしにくくなります(^-^;;;;

制酸剤として処方されるものに、H2ブロッカーのファモチジン(ガスター)やPPIのタケプロンなどがある

胃酸の分泌を抑えるPPIは、ピロリ菌の除菌補助などに使われたり、他の処方薬と併用されることもありますので要注意です。薬の名前としては「オメプラール、タケプロン、パリエット、ネキシウム、タケキャップ」などがあります。

逆流性食道炎は何を使えばいいの?(漢方のはなし)

ご高齢の場合は「胃酸の調整機能」「胃酸からの防御機能」が働かなくなっています。逆流性食道炎という名前は雑誌でも見かけますが、急に出てきた病気ではありません。「胸焼け」と呼ばれてよく見られる症状でした。おじいちゃん・おばあちゃんが「胃の不快感」にセンブリやらゲンノショウコなど、使っていませんでしたか?

最近ではこうした生薬「どこで買えばいいのか」という質問すらいただきます(^-^;;;; センブリはレアな生薬になり、、、価格も高くなりました(泣)

さて、話は戻ります(^-^;;;;

30~50代の逆流性食道炎は、H2ブロッカー・PPIを服用している間は楽になるが、止めるとまた元に戻ってしまう、ということが見られます。胃が機能的に悪いわけで無く「ストレス」や「生活習慣」の結果として起こった症状、だからです。

ストレスは胃にも影響する

現代医学でも「胃」は大切ですが、漢方の世界での「胃」はもっと重要で「口から入った飲食物を受け止め、消化し、全身を養う」ための受け口であり、五臓六腑の一員で、脾胃からのエネルギーが途絶えると全ての動きが止まってしまうといわれるほど、大切な役割をしています。

そして、この動きを助けるのが「肝」という臓器。「肝」は現代医学では「解毒」の臓器とも言われますが、漢方では「消化を助ける」と共に「ストレスの処理」もしています。

つまりは、ストレスが過剰になり「肝」が動かなくなると、「胃」にも影響し、胃の「押し下げる働き」が低下して、エネルギーが逆流してしまいます。これの一種が逆流性食道炎です。

漢方処方としては「半夏瀉心湯、半夏厚朴湯、開気丸、梔子柏皮湯、(大柴胡湯:教科書的には使うらしいですが、余り使ったこと無いです)、逍遥丸」なども使います。

もちろん、胃の不調、つまり「動きの悪さ」が原因の場合もあります。胃腸の代表的な漢方処方、六君子湯でよく治る場合もあります。そして、胃下垂や、肥満、冷え、水分過多、遺伝的に虚弱な場合もあります。その辺りはきっちりと見分けないと行けません。

逆流性食道炎ばかりの話になってしまいましたが、妊活中ですのでもっと精子の動きが良くなればいいですよね。胃腸虚弱を改善すれば、精子の状況も良くなるんです。

時々、男性不妊に補中益気湯が使われていること、ありませんか?「胃腸の薬がなぜ男性不妊に?」と感じることはあると思いますが、脾胃も精子に関係するんです。この話はまた別のページで!

 

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この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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