要約:この記事では、漢方薬「柴葛解肌湯」の効果と使用方法について解説しています。特に、悪寒と発熱が同時に始まるインフルエンザのような症状の移り変わりの早い風邪に適しており、早期の服用が推奨されています。また、柴葛解肌湯の構成成分や代替処方についても触れられています。
「ゾクゾクしたら葛根湯」そんなCMを見たことはありませんか?普通の風邪はゾクゾクと悪寒があって翌々日ぐらいに発熱が始まります。柴葛解肌湯(さいかつげきとう)は、もっと激しい「悪寒と発熱が同時に始まる・・・」まるでインフルエンザのような変化の激しい風邪にも使える、ちょっとマイナーな処方です。
柴葛解肌湯の効能効果
柴葛解肌湯の効能効果を見てみましょう。
体力中等度以上で激しい感冒様症状を示すものの次の諸症:発熱、悪寒、頭痛、四肢の痛み、全身倦怠、口渇、食欲不振、はきけ、鼻腔乾燥、不眠(小太郎漢方)
「感冒」は「風邪」の別名です。普通の風邪の症状はゾクゾク悪寒から発熱まで徐々に進行しますが、この変化が激しいときに使われます。ひとつひとつの症状のある無しはあまり関係ありません。上記以外にも鼻汁・鼻水や喉の痛みが起こる場合もあります。全体的に見てくださいね。
柴葛解肌湯の服用量
柴葛解肌湯エキス細粒G「コタロー」の服用量は、1回2.5g 1日3回(15歳以上)です。コタローの細粒は粒が細かくて飲みやすいです。小学校に入る前の4歳とか5歳に出すお薬って悩むことが多いのですが、柴葛解肌湯は小児の用法用量があるため、使いやすい処方です。
食間の服用がオススメされていますが、どちらかというと「あっ、おかしいな」と思ったその時から服用し始めるほうがいいです。
小学校低学年は半量、小学校高学年から中学生までが2/3量を目安にします。最近は中学生も体格がよくなってきましたので、大人っぽい体つきの「1包必要かな」という中学生には加減することがあります。
年齢 | 1回量 | 服用回数 |
---|---|---|
大人(15歳以上 | 2.5g (1包 | 1日3回 |
15歳未満~7歳以上 | 1.7g (2/3包 | 1日3回 |
7歳未満~4歳以上 | 1.3g (1/2包 | 1日3回 |
4歳未満~2歳以上 | 0.8g (1/3包 | 1日3回 |
2歳未満 | 0.6g (1/4包 | 1日3回 |
どのくらいの日数を飲めばいいですか?
体質改善をしようという処方ではありませんので、日数としてはだいたい1~5日です。風邪の症状はコロコロと変わりやすいので、1週間も2週間も服用する処方ではありません。症状が変われば別の処方になります。ただ、小柴胡湯が方意に入っていますので、葛根湯よりは長めの服用が可能です。
柴葛解肌湯の構成
使われている生薬
柴葛解肌湯は
柴胡・葛根・麻黄・桂皮・黄芩・芍薬・半夏・生姜・甘草・石膏
10種類の生薬を使った漢方薬です。漢方薬は長い歴史の中で、同じ処方名でも生薬が切り替わる、マイナーバージョンアップされています。このコタローの柴葛解肌湯は浅田宗伯の勿誤薬室方函口訣(ふつごやくしつほうかんくけつ)を原典としています。この浅田宗伯は江戸末期の御殿医、浅田飴の処方を作った、とても偉い人です。
柴葛解肌湯と葛根湯の違い
風邪の基本処方である葛根湯や麻黄湯は風邪の初期、小柴胡湯は風邪がもっと進行してしまった中期に使います。柴葛解肌湯は?というと、初期と進行した中期をひっくるめています。とにかく病気の進行が早いから、もう一緒に処方してしまおうと言う感じ。
料理で言えば「塩コショウ」みたいなものです。味を見て塩と胡椒を加えるところを、予め「いい感じ」に混ざっている「塩コショウ」を使えば手早く料理と対応ができます。

処方名 | 処方構成 | 効能効果 |
---|---|---|
柴葛解肌湯 | 麻黄・桂皮・生姜・半夏・葛根・黄芩・甘草・柴胡・芍薬・石膏 | 体力中等度以上で激しい感冒様症状を示すものの次の諸症:発熱、悪寒、頭痛、四肢の痛み、全身倦怠、口渇、食欲不振、はきけ、鼻腔乾燥、不眠(コタロー) |
麻黄湯 | 麻黄・桂皮・杏仁・甘草 | 悪寒、発熱、頭痛、腰痛、自然に汗の出ないものの次の諸症:感冒、インフルエンザ(初期のもの)、関節リウマチ、喘息、乳児の鼻閉塞、哺乳困難(ツムラ) |
葛根湯 | 葛根・大棗・麻黄・甘草・生姜・桂皮 | 頭痛、発熱、悪寒がして、自然発汗がなく、項、肩、背などがこるもの、あるいは下痢するもの。感冒、鼻かぜ、蓄膿症、扁桃腺炎、結膜炎、乳腺炎、湿疹、蕁麻疹、肩こり、神経痛、偏頭痛。(コタロー) |
小柴胡湯 | 柴胡・黄芩・半夏・人参・甘草・生姜・大棗 | 体力中等度で、ときに脇腹(腹)からみぞおちあたりにかけて苦しく、食欲不振や口の苦味があり、舌に白苔がつくものの次の諸症:食欲不振、はきけ、胃炎、胃痛、胃腸虚弱、疲労感、かぜの後期の諸症状(ツムラ) |
処方を見てみても、いい具合に混ざっているのがわかります。
柴葛解肌湯の代替処方
柴葛解肌湯を在庫している店舗も少ないですから、代替え処方も考えてみましょう。
柴葛解肌湯 = 葛根湯 + 小柴胡湯加桔梗石膏
柴葛解肌湯 = 葛根湯 + 小柴胡湯 + 桔梗石膏
「葛根湯・小柴胡湯加桔梗石膏」はツムラの医療用にも存在しています。ドラッグストアなら「葛根湯・小柴胡湯・桔梗石膏」いずれもクラシエ・ツムラから販売されていますので、1箱ずつ買って、1包ずつ組み合わせればいいでしょう。
3種類混ぜるぐらいなら、うちの柴葛解肌湯の方が安くなるかもしれません > とりあえず宣伝です(^-^;;;; 風邪の引き始めは、スピード勝負ですので、葛根湯だけも手持ちにあれば先に飲んでしまいましょう。
柴葛解肌湯と同じような「変化の激しい風邪」でかつ鼻水・水が溢れる感じがあれば大青竜湯を使う場合もあります。大青竜湯は小青竜湯よりも効果が強い処方。これもマイナーなので、大青竜湯が売っていなければ、
大青竜湯 = 越婢加朮湯 + 麻黄湯
という組み合わせを使います。ただし、麻黄が多くなるので量を加減したり、越婢加朮湯+五虎湯にします。
日本漢方の先生は小柴胡湯を好まれますが、中医学が好きな先生は温病(の表熱)を考えてまず葛根湯+銀翹散(+小柴胡湯)という組み合わせも聞きます。体質に応じて使いたいものです。
柴葛解肌湯の症例
40代女性 子どもが「のどが痛い」というので病院に行くとインフルエンザだった。病院ではタミフルとトランサミンが処方された。
次は自分がインフルエンザにかかったような気がする。昨日の夜からぞくぞくと寒くてのどが痛い。運動会の役員になったり会社の仕事もあったりで出来るだけ短い時間で復帰したい。子どもの世話もあってゆっくりと休んでいられない。
普段なら葛根湯+銀翹散や麻黄附子細辛湯をお勧めする場面ですが、子どもさんもご主人様も次々と体調が悪い、あーこれは・・・と思いましたので、柴葛解肌湯と夜に養陰清肺シロップをお勧めしました。その後は予想通り急に発熱したのですが、いつもよりも軽くて、早く復帰できました、、、との連絡を頂きました。
柴葛解肌湯はコロナに効く?
柴葛解肌湯についてお問い合わせが数件続きました。どうしてかなぁと思って「どこでその処方を知ったんですか?」尋ねましたら「日経で読んだ」とのこと。検索したら下記の記事なんですね。
あくまでも一開業医の少数のデータではありますが、柴葛解肌湯(さいかつげきとう)、すなわち葛根湯(かっこんとう)と小柴胡湯加桔梗石膏(しょうさいことうききょうせっこう)の併用によって、約85%の症例で投与後24時間以内に解熱し、症状が軽快しました。
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/matsuda/202201/573583.htm
病院で検査をしてもらっても、結果が出るまで時間がかかる・・・といいますし、とりあえず漢方薬を飲んでおくというのも選択肢なのでしょう。
そういえばコロナの処方として、週刊誌などで報道された「清肺敗毒湯」という処方があります。この頃のデルタ株は肺の奥の方で増殖するらしく肺に熱・湿熱を持つらしいですね。そのため五苓散のような下焦にも効果のある方意を含んでいたのですが、コロナ(オミクロン株)はデルタ株よりも上の「気道・気管支の辺り」で増殖するようです。なので、柴葛解肌湯のような処方が効果があるのかなーと思ったり。コロナもだんだんとインフルエンザに近くなってきたのでしょうか。
.清肺排毒湯(軽症、中等症、重症患者)幅広い病態に用いることができます。中国からの最新のエビデンスについては後述します。清肺排毒湯は、漢代の張仲景が著した『傷寒雑病論』にある、寒湿邪によって引き起こされる外感熱病=感染症に対する処方である、麻杏甘石湯、射干麻黄湯、小柴胡湯、五苓散を組み合わせたものが基本とされています。
https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/news/gakkai/covid19_kanpou_0319.pdf
なんにせよ、私としては「コロナは重症化の可能性(基礎疾患など)があれば病院を受診してください」というスタンスではあります。
柴葛解肌湯のお値段

柴葛解肌湯エキス細粒G「コタロー」のお値段ですが、90包入り 12000円+消費税になります。ただ、そんなに使うものでもありませんので1週間分ずつ(21包)でも小分けしております、3000円+税になります。(レターパック可能) 在庫の有無・郵送の範囲などお問い合わせメールにてお尋ねください。