薏苡仁湯は「さすってしまう」膝の痛みに

薏苡仁湯の特徴

秋から冬の時期の関節痛に使う処方として「薏苡仁湯(よくいにんとう)」があります。「ヨクイニン」はイボ、老人性疣贅を改善する生薬として有名ですが、薏苡仁湯はイボの薬ではありません(^-^;;;;

目次

薏苡仁湯の効能効果

まず効能効果を見てみましょう。

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関節痛、筋肉痛

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すさまじくシンプルですよね(^-^;;;; 薏苡仁湯は「関節痛」に効果のある処方です。

ただし、ちょうど炎症があって痛い、湿布を貼りたいというような関節痛では無くて。慢性化した、ジワジワとくるような関節痛・擦って(さすって)しまう関節痛。そして、筋肉痛も運動の後の筋肉痛というよりもなんとなく擦って(さすって)しまうような筋肉痛です。

具体的には、

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「冷え」によって酷くなる関節痛、つっぱるような引きつるようなおもだるい感じ、気圧の変動に弱い、膝や腰などの関節部分に腫れがある(もしくは腫れぼったい)、慢性化しておりなかなか改善しない、同じ季節に同じ場所が腫れる、ギシギシする感じ、体質的には冷え症、午後になると下肢に浮腫がでる

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こんな症状です。特にご高齢の方に多いですよね。病院での診断名では「関節リウマチ、変形性膝関節症、肩関節周囲炎(五十肩)など」でも使われます。

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薏苡仁湯(ヨクイニントウ)
ヨクイニン、蒼朮、当帰、芍薬、桂枝、麻黄、甘草

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薏苡仁湯の特徴

薏苡仁には冷やす効果はありますが、それほど強くありません(微寒)ので軽度の熱証です。どちらかというと

 

膝の痛み!薏苡仁湯での改善例

こんな症例がありました。

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65歳 女性、病院では変形性膝関節症と診断される。160cm、65Kg、徐々に体重は増加気味。右膝の痛みにて相談。寒くなってきて徐々に痛みが酷くなってきた。正座をすると痛みが出る。病院では数週間に1回、膝に溜まった水を抜いてもらっている。熱感はないが、なんとなく腫れた感じもある。食事は白米が大好きで、残り物をおかずについつい食べ過ぎてしまう。(中略)寒くなっていたくなったことと、溜まった水をいつまで抜かないと行けないのかと不安に思っている。服用薬は鎮痛剤と通販で購入した健康食品を複数・・・

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「整形外科で水を抜くと楽になるのよ」とのこと。触っても強い熱感が無かったため「薏苡仁湯+五苓散+     」をお勧めしました。その後、軽減してきたので処方を変えつつ継続されていますが、天気の悪い日には痛みは出るとのこと(^-^;;; ボチボチ継続されています。

膝の痛みに運動療法は大切

漢方では病名=処方ということは、あまり、ありません(参考にはしますが)。例えば同じ変形性膝関節症の方でも、体質・状況によって処方は違います。ただ「運動」は必ずお勧めするようにしています。

運動はダッシュや長距離走の意味では無くて「関節に大きな負担をかけずに違和感や痛みが出ない運動」。大きな負担をかけないがポイントです。無理する人、いますよね。ダメですよ。Googleで検索して自分に合った運動を発見してくださいね(^-^)

NHK「きょうの健康」では(変形性膝関節症の)運動のメリットとして、

①炎症性物質の減少 ②関節が安定 ③痛み予防 ④曲げ伸ばしがスムーズ ⑤肥満解消 きょうの健康(2016/11)

これらを上げていました。無理はせず、症状が落ち着いたときに行うのがポイントです。

薏苡仁湯には従兄弟がたくさん

ところで。「風邪の時に使う漢方処方」と言えば何を思い出しますか?有名な葛根湯もそうですし、麻黄湯なら鳥インフルエンザの時に報道されたので覚えている方もおられるかも。では「風邪の処方で膝の痛みも取れます」・・・というと「エッ!?」とびっくりしませんか?(^-^;;;;

漢方では上記のような風邪に使う処方を「辛温解表薬」と呼びます。麻黄や桂皮などの生薬で寒さから来る邪気を追い出す役割があります。実際、葛根湯は「肩こり」で使うことも多いのですし、麻黄湯は風邪のときの「節々の痛さ」にも効きます。

麻黄湯:体力充実して、かぜのひきはじめで、さむけがして発熱、頭痛があり、せきが出て身体のふしぶしが痛く汗が出ていないものの次の諸症:略

こうして考えると、寒さから来る邪気を追い出す=寒さから来る痛みにも効果があると。ええ、説明が長くなりましたが、下記のように薏苡仁湯は麻黄湯をベースにした処方とも考えられ、兄弟姉妹が沢山居ます(^-^;;;;

関節痛・痛みに使う漢方処方、使うときの目安

処方名 こんな時に使うかな?!という目安 解説
麻黄湯 寒さからくる風邪。ゾクゾク・節々の痛み 麻黄・桂枝・杏仁・甘草
麻黄加朮湯 冷えによる節々の痛みに加えて、腫れ(水湿) 麻黄湯+白朮
麻黄杏仁薏苡甘草湯
=麻杏薏甘湯
痛みの期間が比較的長く、午後になると腫れがだんだんと熱をもつなど、炎症傾向にある場合に。 麻黄・杏仁・薏苡仁・甘草
桂枝芍薬知母湯
=桂芍知母湯
 手足の冷え、寒がりなどがあるのに四肢・関節の疼痛や発赤と痛みもある状態に。寒と熱が入り交じった状態。関節の熱感が強ければ附子を外して黄柏・石膏を加える。石膏末なども。 桂皮・芍薬・知母・麻黄・
防風・甘草・白朮・生姜・附子
薏苡仁湯  四肢や関節の疼痛があるが、気温が低くなると痛みが悪化する、温めると和らぐ、寒冷によって左右されやすい。体が重い、四肢は熱感があっても、冷えを伴うなど。 薏苡仁・麻黄・桂皮・当帰・
芍薬・白朮・甘草
越婢加朮湯  浮腫を取る処方としてよく使われ、特に急性期です。慢性期には別の処方を使うことが多いです。 麻黄・石膏・蒼朮・大棗・
甘草・生姜
桂枝加朮附湯 薏苡仁湯と同じく、気温が低くなると痛みが悪化し、冷えも伴う症状に使います。ただ、腫れ(湿痺)ではありません。桂枝湯の加減処方です。 桂枝・芍薬・大棗・生姜・
白朮・茯苓・甘草・附子
独歩顆粒 薏苡仁湯と似た状況で使いますが、より血行循環をよくしたり温めたりする「補う」生薬がプラスされています。 独活・川芎・甘草・杜仲・桂皮・茯苓・牛膝・
防風・細辛・ジンギョウ・地黄・桑寄生・芍薬・
唐当帰・生姜・党参

薏苡仁湯と併用する処方

関節に水が溜まる場合は、薏苡仁湯に五苓散を併用したり防已黄耆湯を併用したりします。また、瘀血(血行循環不良)があれば、冠元顆粒や桂枝茯苓丸を併用します。上記のようなご高齢になって冷えて膝が痛い方は循環が悪いのかなという印象がありますので、独歩顆粒にするか桂枝茯苓丸+附子末などを併用することもあり。体質に合わせた漢方処方を選択することが大切です。ご相談ください。

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この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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