平胃散と六君子湯の違い

平胃散と六君子湯。どちらも「胃腸」の処方です。六君子湯のほうが有名ですね、ただ、平胃散も良い処方ですよ。使う状態からしては違いがありますのでその解説を。

目次

平胃散・六君子湯何に効くの?

平胃散と六君子湯の添付文書から効能効果を引用します。・・・見比べてみますと、どっちも同じようなことを書いていますね(^-^;;;;

【平胃散の効能効果】胃がもたれて消化不良の傾向のある次の諸症:急・慢性胃カタル、胃アトニー、消化不良、食欲不振
【六君子湯の効能効果】胃腸の弱いもので、食欲がなく、みぞおちがつかえ、疲れやすく、貧血性で手足が冷えやすいものの次の諸症:胃炎、胃アトニー、胃下垂、消化不良、食欲不振、胃痛、嘔吐

どちらも胃が弱ってしまった状態に使う処方「胃アトニー」とは胃の蠕動機能が低下した状態です。田舎のおばあちゃんがセンブリを煮出して飲んでませんでしたか?アレです。今では機能性ディスペプシア(FD)という名前のほうがテレビでよく見るかもしれません。症状としては、

  • 食後のもたれ感(食べると気持ち悪い、ムカムカが続く)
  • 飽満感(食べるとすぐにお腹がいっぱいになる)
  • みぞおちの痛み(胃がしくしくと痛む)
  • みぞおちの焼ける感じ(ジクジク熱い・胸焼け)
  • 吐き気・おう吐・げっぷ(食べると気持ち悪い)
  • 不眠(何となく眠られない、もたれ感があって気持ち悪い)
  • ストレス感・倦怠感(しんどい、けだるい、うっとうしい)

胃もたれ、高齢の方の食欲不振、一般的に胃の不快感といわれる状態、これを改善します。

ただし、胃の症状と言っても、血を吐く、強い痛みが一定時間ごとに繰り返される、こんな急性の症状は急いで病院行ってくださいね。yomiDrを見ていたらこんな記事もありました。

最近、機能性胃腸症に対しても漢方薬が非常によく使用されています。漢方医学では、胃もたれは「気」が不足した気虚や「気」の巡りが悪くなった気鬱、「水」のバランスが悪くなった「水毒」が関係して生じる症状と考えています。
そこで、気を補う作用のある六君子湯や人参湯、気の巡りを改善する作用のある二陳湯や帰脾湯、四逆散、胃の辺りの水毒を改善する茯苓飲や平胃散などが用いられています。


「胃もたれ」は病気? 胃腸症を改善する漢方薬yomiDrより

六君子湯は「気」、平胃散は「水」たしかにそれでも間違いは無いんですが・・・。

平胃散と六君子湯の違い

六君子湯のイメージ

六君子湯のイメージはリフォーム。六君子湯を服用されている方は多いのですが、なかなか効かないとか太田胃散のほうが効くとか(^-^;;;; 言われます。確かに効くのはやや遅いですが、体質改善の代表格で胃腸のリフォームのような処方です。早く効果を、、、という方には加減した健胃顆粒(香砂六君子湯)などを使っています。

製薬メーカーのツムラが、六君子湯の学術発表に気合いを入れていまして

  • 胃腸機能の改善(胃酸過多や逆流性食道炎の改善)
  • グレリンに対する作用(食欲不振の改善)
  • ストレスによる食欲不振の改善

などを発表しています。手のひら一杯の錠剤を服用して胃が重いやら胸焼けが辛いという方にも、わたしは六君子湯、いい処方だと思っています。医療系専用のサイトですが一応リンクを張っておきます

平胃散のイメージ

じゃぁ平胃散は?というと除湿器のような処方です。部屋(胃腸)に籠もった湿気(湿邪)を除去する除湿器のような作用があります。たとえば冷たいものを食べすぎた、水を飲み過ぎた、体がおもだるい、そんな特に胃腸に関係する湿気を除いてくれる処方です。お酒もそうですよ。湿気です。翌日のもたれが減ります(^-^)平胃散のほうが効果が早く感じますね。

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脾虚がある→六君子湯 湿邪だけある→平胃散

どちらも同じような効果がありますが、リフォームしないと使えないなら六君子湯、まだ部屋は使えるけれども湿気(湿邪)で汚くなっているなら平胃散です。平胃散についてはこちらにも詳しく解説しています。

構成生薬の違い

同じような、と書きましたが、実際生薬の構成を見ると似てるように感じませんか?

蒼朮人参茯苓半夏大棗陳皮甘草生姜厚朴
平胃散
六君子湯

六君子湯には「脾胃の気虚」を改善できる生薬(人参・茯苓)が含まれ、平胃散は邪気を抜いて気を巡らすように「厚朴」が追加されています。

類似処方・派生処方

胃腸を改善する処方、六君子湯・平胃散だけでなく、人参湯・半夏白朮天麻湯・補中益気湯・加味帰脾湯などが有りますし、加減方としては六君子湯には四君子湯・香砂六君子湯などが、平胃散には加味平胃散など派生処方もたくさんです。

昔から(日本も)胃腸虚弱で悩む方は多かったのでしょうね。バリエーションが豊かです。六君子湯と決め打ちで服用するのもいいとは思いますが、専門店にしか無い処方もありますので、ご相談ください。

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この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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