整体観念
漢方では人体を小宇宙のようにイメージしています。例えば、肝・腎などの臓器・働きはそれぞれ独立しているわけでは無く、お互い影響し合っています。
五行や五臓の相生・相克といった考え方をすることで、体質や本質的な治療をすることが出来ます。ただ、あくまでも経験則から現在の症状を重視するため、疾病のプロセス、例えば臓器がどうなったらどうなるのか、ATPや酵素の働きでどうなっているのか、などの認識に欠けています。
例)高血圧傾向(病院では境界線と言われている)の中年男性、仕事のストレスで疲れると血圧も上がりイライラして動悸が激しくなったり頭が痛くなる。
ストレス→肝火→動悸、頭痛と考えた。動悸(心の亢進)は、ストレス(肝の亢進)から治そうと考えた。
体質にあった処方をする(個別化)
漢方薬局のサイトを見ていると「あなたの体質に合った漢方をご提案=オーダーメード漢方」という流れがありますが、私はあまり好きではありません。なぜなら、東洋医学も西洋医学も、医療は個人個人を見てから行うのは当たり前で、医療はすべてオーダーメードなはずです。
オーダーメード:製品全般に対する受注生産や注文によって生産する商品、または生産工程を指す。wikipediaより
色々とあり「日本のオーダーメード漢方だめじゃん」言いたくなりますが(^-^;;;; 西洋医学と比べていいところは、同じ病気でも「個人を見て」別の治療方法を使う(同病異治・異病同治)にあるのかなと思います。
例えば胃痛で内科を受診するとまずはガスター・タケプロンなどの制酸剤が処方されます。漢方の場合は違い、問診して色々な処方を検討できます。「そのひとにあった漢方」を体現できます。いいですね。
ただし、こうした漢方の手法は、腕で左右される、つまり技量の均一性に欠けます。西洋医学のガイドライン・第一選択というシステムは、日本のどこにいてもだいたい同じ医療を受けられるシステムです。
例)高血圧傾向(病院では境界線と言われている)の中年男性、仕事のストレスで疲れると血圧も上がりイライラして頭が痛くなる。
ストレス→肝火→頭痛と考えた。「肝火」を抑える処方で頭痛は改善すると共に、イライラも早く落ち着くようになってきた。
同じ高血圧患者でも症状が違うと別の処方になる。高血圧群をまとめて同一の処方を使って効果の比較ができない。
未病を治す
未病とは病気と言うほどでは無いけれども、病気に向かいつつある状態。「養命酒」もよく宣伝しているアレです。病院での血液検査数値は基準値内だけれども、朝起きると体がだるい、疲れがとれない、そんな状態を思い浮かべてもらうといいです。
漢方では、症状や経過を見て処方を決めるので、状態を調整する、未病を治すことは得意ですね。その代わり、起きてしまった結果の改善、検査数値・指標の改善には(西洋薬と比べて)弱いです。
例)高血圧傾向(病院では境界線と言われている)の中年男性、仕事のストレスで疲れると血圧も上がりイライラして頭が痛くなる。
ストレス→肝火→頭痛と考えた。「肝火」を抑える処方で頭痛は改善すると共に、イライラも早く落ち着くようになってきた。
頭痛は改善してきたが、血圧の数値にはあまり変化がない。
まとめ
現代の医療は「漢方だけ」ではすでに成り立ちません。漢方と西洋、お互い補足しあって治療に役立てています。勉強することはたくさんあるわけですので、頑張っていきましょう。