同じ名前の漢方処方なら、どのメーカーでも同じですか?

薬学部の実習生に話した内容を改変し掲載ました。薬学生といってもなかなか授業以外で漢方について学ぶ機会は少ないです。実習のときには、漢方と西洋薬の違いについてを中心にお話ししています。

2016032101

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「薄い」葛根湯って?

日経トレンディに「市販されている漢方薬は配合量が異なる」という記事が載っていました。普段は余り気にすることは無いと思いますが、確かに、そうなんです。例えば、ドラッグストアに売っている「葛根湯」パッケージを手にとって、見てみると違いがわかります。

実は市販されている漢方薬は商品によって配合量が異なる。医療用と同じ量を配合しているものは「満量処方」と呼ばれる。市販の漢方薬は「75%量」や「50%量」など、配合量が少ない目のものが多い。医療用並を期待するなら満量処方の漢方薬を選びたい。日経トレンディ2015/05 P41

医療用のツムラの組成・成分・分量の欄を抜粋しました。葛根の横に書いているのは生薬のグラム数です。それを煮て加工して顆粒にします。製薬会社では、インスタントコーヒーのような製法を用いて作っているらしいです。

ツムラの葛根湯(医療用)
本品7.5g中、下記の割合の混合生薬の乾燥エキス3.75gを含有する。
日局カッコン   4.0g
日局タイソウ   3.0g
日局マオウ    3.0g
日局カンゾウ   2.0g
日局ケイヒ    2.0g
日局シャクヤク  2.0g
日局ショウキョウ 2.0g

ツムラの市販品(ドラッグストアでセルフで販売している処方)を抜粋しました。ちょうど2/3量ですね。医療用と差がある場合は2/3量(75%)や1/2量と記載されています。

ツムラの葛根湯顆粒エキスA
本品2包(5.0g)中、下記の割合の葛根湯エキス(2/3量)2.5gを含有します。
日局カッコン 2.68g
日局タイソウ 2.01g
日局マオウ 2.01g
日局カンゾウ 1.34g
日局ケイヒ 1.34g
日局シャクヤク 1.34g
日局ショウキョウ 1.34g

別メーカー、太虎精堂の医療用はこちらです。

太虎精堂の葛根湯エキス顆粒
1日量7.5g中
カッコン:8g
マオウ:4g
タイソウ:4g
ケイヒ:3g
シャクヤク:3g
カンゾウ:2g
ショウキョウ:1g
以上のエキス:4150mg

こちらはツムラの葛根湯よりさらに倍量の生薬が記載されていますね。

生薬が多いと効果は強くなる?

さて、問題です。ツムラの葛根湯より太虎精堂の葛根湯のほうがよく効くのでしょうか??病院での実習で知った処方、色々とありますね。2倍飲めば、効果は2倍・・・とまでは言えないですが、効くのは間違いないでしょう。

では、半量なら効果は半分??漢方は不思議なことに「通常量の半量でも」効くときは効きます。きっと効果を出す濃度(有効血中濃度)が個々によって幅が広いのかもしれません。煎じる方法を工夫することでエキスの収率を上げることが出来ます。

さらに、処方が体質に合っているのか、養生(食養生・生活養生)も重要になります。

製剤に含まれる「生薬の産地やメーカーの製法」も大切になります。自然の生薬ですから含まれる成分にも違いが出来ます。日本という島国の「大根」でも地方・品種によって甘さも辛さも違いますよね。ましてや、広大な中国原産の生薬は・・・。

メーカーも作りっぱなしかといえば、そうではありません。全ての成分を分離して検査するわけにはいきませんが、効果があると思われる主要な成分をメーカーは測定して、指針にしています。

防風通聖散に含まれるエフェドリンの含有量

小林製薬 把握しているが公表していない
ロート製薬 把握しているが公表していない
カネボウ薬品 把握しているが公表していない
ツムラ 把握しているが公表していない
JPS製薬 把握しているが公表していない
オオスギ製薬 把握しているが公表していない

日経トレンディ 2007.03

ただ、残念ながらこのようにデータは公表されていません(^-^;;;; こうして測定したデーターを見つつ、製薬メーカーも成分が出来るだけ変動しないように気をつけてはいます。それでもメーカーごとに差は出ますし、数年のスパンで見れば、同一メーカーの製品ですら味や色調の違いも出てきます。

料理と一緒で、生薬も天然成分ですから、漢方薬は西洋薬と違う部分がたくさんあります。西洋薬の場合は同じ名前ならある程度一緒(ジェネリックなど)であるはずですが、漢方薬の場合はもう少し違いのかなと感じます。

 

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この記事を書いた人

福田優基のアバター 福田優基 薬剤師/国際中医師

ゆうき先生:漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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