要約:この記事では、むくみを解消するための漢方薬について説明しています。漢方では、むくみを体内の水分バランスの乱れが原因と考えます。五苓散が有名ですが、他にも効果的な処方があります。むくみの原因に応じて、適切な漢方薬を選ぶことが大切です。
むくみは体内の水分バランスが崩れることで起こる現象で、長時間の立ち仕事や座りっぱなし、塩分の摂り過ぎ、ホルモンバランスの変調などが原因となります。「急な浮腫・赤く腫れている・熱感がある」ときは病院の受診をお勧めしますが、それ以外は塩分量の調整、足のむくみなら弾性ストッキング、と生活環境を整えること、そして漢方薬で体調を改善することをお勧めしています。
むくみの処方は五苓散だけじゃない
「むくみ」だけでの店頭のご相談は少なくて、
- 生理前に体がむくんでしまう、
- 足がパンパンになって痛い、むくみかな
- お酒が最近弱くなった、むくみやすい、
- 花粉症で目・瞼のあたりがむくんでしまった、
- 体が重だるい、足がむくんでいる気がする
など「なにかの不快感+むくみ」でご相談いただくことが多いです。漢方を好きな人ならまず「五苓散(ごれいさん)ならどうですか?」と質問されるのですが、、、もちろん五苓散は効きます。効きますけど、効かないこともある、むくみの処方は五苓散以外にも「よい処方」があるので、ご紹介します!
東洋医学で考えるむくみとは?
気血水のバランスの乱れ
まず「気・血・水」で考えてみましょう。この3つのバランスが乱れると、様々な不調が生じ、例えば、気の不足はエネルギー低下・疲労倦怠、血の不足は栄養不良や冷え性、水の停滞はむくみや体重増加を引き起こします。今回のお話の「むくみ」に関しては水の停滞によることが多いです。
では水の停滞を何とかしましょう!と書かれているブログを時々見ますけれども、気血水は相互に関連していますので、水の停滞だけでなく他の方面も見る必要があります。
肺・脾・腎の機能低下
もう一つ「五臓」から「むくみ」を見ていきましょう。簡単な図を作りました。たとえ話をしながらお伝えします。
風邪をひくと「肺」に影響をして、体の水を上下させるポンプのような働き(宣発粛降)が働かなくなります。「肺」に影響する浮腫みは急に起きることが多いです。風邪の時になぜか顔がむくみますよね。風邪の処方の葛根湯の中には麻黄・葛根・桂枝という水を整える生薬が含まれているため、素早くむくみも改善してくれます。
花粉症、目の上の部分だけがむくんだりしますがこれは「肺-皮膚(皮毛)」に影響すると考えています。なかなか西洋薬では治らないのですけれども、漢方だったら越婢加朮湯+涼解楽を使います。越婢加朮湯には麻黄・石膏というこれも水を整える生薬が含まれています。よい処方なんですよ。
「脾」は消化吸収をつかさどる場所、湿気がたまりやすい場所です。日本人は「脾胃が弱い」タイプが多い+日本の湿度は高い、、、のに冷たいものもよく食べ飲みます。胃腸の症状って本当に多いんです。
例えば「梅雨の時期」にむくんだりしませんか?冷たいものをとった後に下痢になったり食欲が無くなったり。梅雨の時のビールとか特にそうですよね。これって胃腸の水はけが悪いからかもしれません。こういうときにサッと使えるのが五苓散なんです。
「腎」への影響は上の二つとちょっと違って慢性的な症状が多いです。逆に言えば、慢性的な方は必ず「腎」への影響を考えます。腎の力が弱くなり冷えやむくみが起きます。
症例:70代男性
腎が弱くなってむくみの起きた症例です。70歳・男性 冷えでの相談。本人からはからだが冷えている、寒いと自己申告。腰のあたりから下にかけて特に冷える。体温は35度台、狭心症はあるが手術をして改善した。手足がよくむくむ、頻尿だが尿自体はあまり出ない、尿蛋白ややあり。水っぽい痰が出ることがある。胃腸は強くない、いまは食欲はない、疲れやすい(後略)
このときは冬だったのですが、冷えて冷えて・・・ということで相談を受けました。腎が弱っていて、さら脾も弱い、図で言うところの「脾腎陽虚」です。まずは、真武湯+〇〇という処方を使いつつ、年を越して改善してきたので、あとは牛車腎気丸だけ続けてもらった例でした。
牛車腎気丸はまだ解説していないのですが、腎の処方としてもなかなか優秀です。いつか、書きたいですね!