女神散のポイントを解説!注意点や早く治るためのコツも紹介

女神散と加味逍遙散の違い

名前がちょっと面白い女神散。「めがみ」と読めますが、漢方の場合の読み方は女神散(にょしんさん)です。この「神」は、神様ではなくて精神・神経・生命力のこと。女性の精神を立て直し生命力を高めるという意味があります。(女性に著効・神効だからという説もあります)

目次

女神散の効能効果

女神散の効能効果は、

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のぼせとめまいのあるものの次の諸症。産前産後の神経症、月経不順、血の道症。

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「産前産後のイライラのお薬か!」と思うところですが、女性すべて、男性にも使うことが出来る処方です。漢方のイライラの処方って種類が多くて層が厚い。昔も今も、女性のイライラは改善するべき最重要項目なんでしょう・・・。

さて、まずは他の処方と比較してみましょう。

処方名 効能効果
女神散 のぼせとめまいのあるものの次の諸症。
産前産後の神経症、月経不順、血の道症。
芎帰調血飲第一加減 体力中等度以下のものの次の諸症。ただし、産後の場合は
体力に関わらず使用できます。血の道症、月経不順、産後の体力低下

似た効能効果が記載されている「芎帰調血飲第一加減」と比較しました。黄色の部分が違っている部分です。

女神散は「産前産後の神経症、のぼせとめまい」、芎帰調血飲第一加減は「産後の体力低下」が中心になっています。女神散よりも芎帰調血飲第一加減は「補う」というイメージが強いです。

  • 女神散(疎肝泄熱・養肝温下
    (頭に血が昇ってる)無性に腹立つ。イライライライラ!!!!ヽ(*`Д´)ノ すぐに逆上せて顔も熱いが手足は冷える。
  • 芎帰調血飲第一加減(養血健脾・行気活血)
    なんだか気力ないよなー。疲れた・・・何となくイライラ、ウツウツ(;´Д`) 全体的な体質としては冷え症でお疲れ気味。

あくまでイメージです。女神散はのぼせと眩暈に血症を伴う、つまり自律神経失調症の強い状態にも使います。

女神散を漢方の言葉で伝えれば「気滞血瘀・心火旺・気血両虚」を改善する処方となります。

良く起こる(使う)症状としては、

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眩暈・のぼせ・不安感・動悸・不眠・頭痛・耳鳴り・肩こり・月経異常・体の上半身が逆上せるのに下半身が冷たい(心火旺)・うつ・PMS(月経前症候群)・更年期障害・不妊症

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などで、女性だけでなく男性にも幅広く使える処方です。

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女神散は元は、安栄湯(※栄は血のこと)と言われ「軍中七気を治す」との記載が古典にあります。具体的に七気は何かと考えると①七気湯のように「七情:喜・怒・憂・思・悲・恐・驚」の乱れを治す説。②「切傷、突疵、矢疵、打身、産前、産後、血の道」を治す説もあります。

傷病に刀傷なら分かりますがなぜ「産前・産後・血の道」と3つも関係なさそうなのが入っているの?と感じませんか?

これは軍医(外科)は平時、産婦人科医を兼ねていたからだとか。男性の処方が、女性に著効のため名前を変え女神散になったとも言われています。

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女神散と加味逍遙散との違い

女神散と加味逍遙散の違いを考えましょう。

処方名 効能効果
女神散 のぼせとめまいのあるものの次の諸症。
産前産後の神経症、月経不順、血の道症
加味逍遙散 体力中等度以下で、のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすく、
精神不安やいらだちなどの精神神経症状、ときに便秘の傾向
のあるものの次の諸症:冷え症、虚弱体質、月経不順、
月経困難、更年期障害、血の道症、不眠症

加味逍遙散と女神散は全く同じような効能効果です。イライラ・ストレスには、どっちを使ってもそれなりに効果があります。ただ、細かく見ていくと違うところもチラホラ・・・。

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女神散と加味逍遙散の構成生薬

構成生薬を見てみましょう。同じような効能効果ですが、構成生薬は全然違います。一緒なのは「当帰」ぐらいでしょうか。

処方名 成分
女神散 当帰・川芎・蒼朮(*白朮)・香附子・桂皮・黄芩・人参
檳榔子・黄連・木香・丁子・甘草(ツムラ)
加味逍遙散 当帰・芍薬・白朮・茯苓・柴胡・牡丹皮・山梔子
甘草・薄荷・生姜

※女神散に大黄を入れる場合もあります(参考:中医臨床のための中薬学)

疎肝のために加味逍遙散は柴胡と芍薬の組み合わせが組み込まれていますが、女神散は川芎・香附子+αの組み合わせです。まとめて図にしてみました。

女神散と加味逍遙散の違い

参考:図解 漢方処方のトリセツ じほう社

左が加味逍遙散、右が女神散です。赤い文字が症状で、青い文字が構成生薬。加味逍遙散は肝の気を流すのもそうですが脾虚・血虚を直す生薬も含まれています。

女神散は、熱感(黄連黄芩で上部の熱を冷まし、丁子で中部を暖める)を改善し気の流れを通すことを考えています。

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加味逍遙散は気滞だけでなく「脾虚・血虚」もバランス良く治す

女神散は気滞とともに上下の流れが悪くなり上に熱が籠もった状態も治す

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女神散の症例・口コミ

[st-mybox title=”症例” fontawesome=”fa-check-circle” color=”#757575″ bordercolor=”#BDBDBD” bgcolor=”#ffffff” borderwidth=”2″ borderradius=”5″ titleweight=”bold” fontsize=”” myclass=”st-mybox-class” margin=”25px 0 25px 0″]

40代後半 女性 高脂血症・尿酸値も高い。血圧がやや高かった(現在は西洋薬でコントロール)。アルコールが弱く、アレルギー性鼻炎あり。パニック障害とまでは言わないが、なんとなくざわざわした感じがある。なんとなく顔がのぼせて、手足・腰は冷たい。親の介護をしていて、ストレスも強く、めまいのような症状が気になって来局(後略)。

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この方の場合ですが、最初は脾虚からの「めまい」と考えて定悸飲(苓桂朮甘湯の類似処方)を考えていたところ、田舎の名家の出身でお嫁に行った先のお父様は元先生で・・・とポツポツとストレス原因になったお話を伺いました。お話しいただいた後は、ちょっと人に話をして楽になりました、とニッコリ

こうした肝の気がすごく滞っているタイプにおすすめするのが「疎肝薬」と言われる「加味逍遙散・柴胡疎肝湯」などですが、今回は女神散+○○○○○を組み合わせてお勧めしました。

数ヶ月して少し症状も改善してきたのでいままでの処方を中止して、加味逍遙散加四物湯(カミセーヌC)を長く養生できる処方としてお渡ししています。

女神散ではのぼせとめまい(上衝と眩暈)に血症を伴った症状に適応するもので、婦人の産前産後の神経症、月経異常、腰痛、血の道症や更年期の精神安定剤の役目を果たし、動悸、眩暈、精神不安、頭痛、頭重など自律神経失調症候群に広く用いられるが、気をめぐらし血熱を冷ますので安栄湯とも名付けられ、戦場での神経症を治すモノとされていた。大便が結せず通じのあるものには、大黄を去って使用する。体質にも特徴が少なく、瘀血証もはっきりしないが、脈証、腹証ともに虚していないものに適応する。(伝統と医療 Page3-4 Vol22 No3 2016 )

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この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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