中高年の女性に多い相談で「尿」に関する相談があります。細菌感染による「膀胱炎(頻尿)」や疲れると起こる違和感(頻尿)、それ以外にも「尿漏れ」という相談もあります。
- バス旅行に行きたいけれどもトイレが我慢できるか・・・(不安
- ゴルフを教えてもらいスイングをしたところ漏れそうになった(不安
- 子供のお迎えの時に立ち話をしていて、笑った瞬間にちょろっと(不安
女性の尿漏れはみんな同じ?
ただ、同じ「尿漏れ」であっても内容には違いがあります。30~40代にはくしゃみなどで尿が漏れる「腹圧性尿失禁」が多く、それより上の年代になると尿が我慢できないという「切迫性尿失禁」が多いのかなという印象です。
“NHKの今日の健康”では、女性の尿漏れの8割は腹圧性尿失禁、5割は切迫性尿失禁、そして混合型が3割と解説していました。なぜか漢方の店頭では「切迫性尿失禁」や「混合型」での相談が多いです(^-^;;;;
腹圧性尿失禁 | くしゃみ、せき、重いものを持つなど 腹圧が上がったことにより尿がちょろっと 漏れる。 妊娠・出産・加齢・肥満などが原因でおこる。 |
骨盤底筋などの緩み |
切迫性尿失禁 | 急に起こる尿意・頻尿。 トイレが我慢できないなど。 |
過活動性膀胱・ 膀胱炎など |
※溢流性(いつりゅうせい)尿失禁は男性の前立腺肥大などに多い症状です。漢方では「補腎」の処方で改善しますがまた別のページでご紹介します。 日本泌尿器学会のサイトに詳しいです
腹圧性尿失禁の対処方法
セキ・くしゃみなどで尿が漏れる「腹圧性尿失禁」ですが、原因は妊娠や加齢などによる「骨盤底筋」の緩みです。骨盤底筋とは骨盤の下でハンモックのように臓器を引き上げている筋肉で、そのハンモックがユルユルになって、ちょっとした刺激で水漏れを起こす、これが腹圧性尿失禁です。この場合、まずは骨盤底筋を鍛える運動療法が大切です。骨盤底筋体操をWebで検索するとたくさんでてくると思いますが、私は「今日の健康」で取り上げていた体操方法を患者さんにお勧めしています。
漢方での対処方法
漢方の理論では「筋肉の緩みを治す処方」も存在しています。
理論からになります(^-^;;; 簡単な話なので、少し我慢して下さいね。漢方では五臓六腑に色々な働きを割り当てていますが「脾の働き」には
- 運化をつかさどる
- 統血をつかさどる
- 気血生化の源である
- 肌肉と四肢をつかさどり、口に開竅する
これらの働きがあると、考えられています。
脾はつまり、上記の肌肉と四肢~、、、筋肉をしっかりとさせる(維持と形成)・内臓が定まった位置に落ち着くよう下垂を防いでいます。それらが弱って落ちてきているのですから、脾の代表的な処方の「補中益気湯」を使い上に引き上げ、補腎や補気補血の処方「参茸補血丸」などで根本の弱りを治すという組み合わせを考えます。
「えー、胃腸の薬が尿漏れに?ほんとうですか?!」と言いたくなりますよね(^-^;;;; 実際、補中益気湯には「落ちたものを引き上げる力」があり、脱肛などの痔にも使っています。もちろん、痔の場合は良い状態の維持に、ですよ!痛いときは槐角丸・乙字湯などを先に使います、注意して下さいね。
切迫性尿失禁(UUI)
「突然、強い尿意を感じ、トイレに間に合わず漏れてしまう」のが切迫性尿失禁。私は本屋さんや映画館に行くとトイレに行きたくなりますが(^-^;;;; そんな軽いものでは無く、もっと切実にトイレを探さないといけないのが切迫性尿失禁です。
原因として「脳が膀胱のコントロールを出来なくなり、急に膀胱が収縮して、尿意をもよおす」という過活動膀胱(OAB)などがあります。
過活動膀胱の治療薬として、病院ではバップフォー錠[プロピベリン塩酸塩錠]、オキシブチニン塩酸塩が有名です。病院を受診して処方された方も多いと思いますが、これらで改善できない方も実際おられます。
漢方での対処方法
漢方の場合は、さらにその原因・体質を改善しようとします。まず体質のタイプとしてざっくりと3つ、脾虚・腎虚・陽虚(腎陽虚)に分けて考えています。
脾虚 | 疲れると尿漏れ・疲労倦怠感・食欲低下・ 息切れ・下痢・胃下垂 |
清心蓮子飲・小建中湯・補中益気湯・五淋散 |
腎虚 | 夜間頻尿・腰の冷え・眩暈・耳鳴り・ 物忘れ・疲れやすい・足腰弱い |
八味地黄丸・牛車腎気丸 |
陽虚 | 寒さ・下腹部の冷え・年間を通じて 冷え疲れる・頻尿・関節の痛み |
海馬補腎丸・霊鹿参・ 苓桂朮甘湯・真武湯 |
※処方は表にするため簡便的に分けています。
12月よりご相談が増えるのが、冷えによって悪化する頻尿・尿漏れ。過活動膀胱と病院で診断されて処方薬も服用しているけどいまいち改善しないの・・・・という方にはまず冷えから漢方で改善することで、尿の回数が低下することもあります。
自宅での養生も重要!
膀胱訓練法:トイレに行きたい→すぐにいく、を繰り返すことで我慢が出来なくなっています。トイレに行きたくなったら少しだけ我慢をする、その次はもう少し我慢する・・・ということで段々と膀胱の耐久力を上げることが出来ます。毎日することがポイントです。 ※ 男性の前立腺肥大や女性に多い膀胱炎の場合は、我慢するのは良くありません。
排尿日記:だいたい1回の尿量は200~400ccほど。どの程度の量でどの程度の頻度でトイレに行っているか。それをチェックすることで傾向が見えてきます。毎日チェックすることが大切です。ユニチャームの排尿日記サイト(印刷できるもの)へリンク
あと生活上の注意点として「カフェイン・アルコールを控えること、水分を取り過ぎないこと、便秘に気をつけること」もあります。
混合性尿失禁が意外と多いため、骨盤底筋の体操も行いましょう。もちろん、適度な運動も大切ですよ。筋肉は老化しますので。頑張りましょう!