慢性下痢の漢方薬

男性にも多い慢性下痢

男性でやせ形の患者さんの便通を尋ねると、「慢性的に下痢」の方がよく見られます。ただ、最初、本人に聞いても、慢性下痢という自覚はありません。「他人と違って便が緩いかな」ぐらいの認識です。

「下痢止めを飲むと、軟便は止まる。ただ、下痢止めを飲まないとまた軟便になる」

こういった方で、

やせ形、疲れやすい、太れない、食欲不振

の自覚症状がある方は、漢方での「脾気虚(ひききょ:胃腸の元気不足)」という証。漢方薬で改善する可能性があります。

脾気虚そして慢性下痢の種類

下痢にも色々な種類があり、色々な処方薬があります。

先ほどお話しした、「胃腸虚弱、食欲が少ない。軟便でやせ」の「脾気虚」によく用いられるのが、参苓白朮散、香砂六君子湯、胃苓湯などの水を捌く処方。

その他にも、お腹が冷えて、水様性の便になる場合は、人参湯や人参四物湯、附子人参湯など温める処方を中心に。腹部の張りが強く、軟便または便秘を繰り返す、ストレスにより悪化する過敏性腸症候群などの場合は、開気丸などの処方を中心に検討します。

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50代での慢性下痢「症例ノート」

50代男性、食べてもなかなか肥ることができないという相談。体格はやせ形。顔色は悪くはない。睡眠は余り良くない。仕事では、夕方に疲労感が強い。食欲不振で、奥様よりも食事の量が少ないこともある。

詳しく聞くと、慢性的な下痢もあったため、食事の改善と参苓白朮散と○○という処方を併用した。3ヶ月後、下痢は改善し、食欲も向上してきた。肥るにはまだまだだが、継続してもらう。

参苓白朮散

参苓白朮散は四君子湯をベースにした処方ですが、それに理気薬(縮砂・桔梗)、滲湿薬(意苡仁・連肉・白扁豆・山薬)を配合しています。そのため、脾気虚に加えて、脾陰虚にも使うことができます。

「脾」は、土と一緒。作物を作るための基本となる土地です。たとえば、畑の水はけが悪くなると、梅雨の時期には「しめってふやけた状態」になります。これを漢方では「湿盛」と呼びます。この余った水を捌く、土壌を改善する処方が、参苓白朮散

そして、余った水が体の上に登ってくると、湿ったような咳や痰に。下に向かうと水っぽいオリモノになったりします。この場合も、参苓白朮散を使うことがあります。

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この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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