寒気には葛根湯 熱に天津感冒片

寒気には葛根湯 熱に天津感冒片

日本の漢方で、カゼといえば葛根湯がよく知られている。しかし、現代の中国ではあまり使われていない。(漢方漫歩より)

 

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 葛根湯は、今から約2000年前に著された医書『傷寒論しょうかんろん』の処方である。

 

中国で傷寒論が軽視されているということではもちろんない。

 

傷寒論よりもさらに古い時代の医書『黄帝内経こうていだいけい』の理論をもとに、各時代の医療的な成果を取り込みながら、今日に至っている。

 

傷寒論ころは、気候も寒く、栄養状態も今より格段に悪かった時代だ。そのため、冷えからくる寒性の病気が主流で、傷寒論の処方には体を温めて治療するものが多い。葛根湯(かっこんとう)もしかり。

 

ところが明、清の時代以降、都市への人口の流入、さらに地球の温暖化傾向が進んだことから、ウイルスなどによってもたらされる熱性の病気が急増。それに対処するため、温病学という新しい医療体系が生まれた。

 

比較的抗ウイルス力の強い金銀花きんぎんか>や連翹れんぎょうなどの生薬が見いだされ、銀翹散ぎんぎょうさんが温病の基本薬として開発された。当時、日本は鎖国の時代である。温病学が入っていれば、日本の漢方事情はまた違っていたかも知れない。

 

中国でカゼ薬といえば、この銀翹散系統の天津感冒片てんしんかんぼうへんが最もポピュラーな存在で、日本にも輸入されている。ゾクゾクと寒気の強いカゼ(傷寒)には葛根湯、ノドが赤くはれて、熱っぽいカゼ(温病)には天津感冒片を使い分けてみてはどうだろう。カゼの初期対策が一層充実するはずである。

 

路 京華(中国中医研究院広安門医院主治医師)讀賣新聞日曜版『漢方漫歩』1993/04/25

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この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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