パニック障害、大きな音が怖い。漢方処方

『音が怖い』という相談があります。聞いてみると、雑踏やテレビの音などでイライラと不快な気分になったり、耳がボーッとなる(うわんうわんとするとか)、気が滅入ったり、頭がパニックになって考えられないなど色々な症状があります。「生活音で心臓がバクバクする(洗濯機の音などでも)」「誰も居ない早朝か深夜しか屋外に出られない」という例もあります。

表に出る症状は色々とありますが「元気に頑張っていた方が、仕事・家事・家庭などのストレスで疲れてしまった」タイプが多く。実際、心療内科に通おうかどうしようか、通っているけれどもほんとうにこのままでいいのか不安、そうして漢方相談薬局に来店されることが多いです。

目次

西洋医学的な治療

西洋医学では、心療内科で不安障害、いわゆるパニック障害と診断され、抗うつ剤(SSRI)での治療が多いようです。何か原因がある場合はそれに併せてカウンセリングも実施されます。

漢方での改善の症例

「パニック障害」は本人も辛いですが、ご家族の不安も大きく。「今まで元気だったのにどうして」と悩まれるようです。上記のような何かのストレスや疲れで糸が切れたようになっている場合は、西洋医学・東洋医学で治療をすることで時間はかかりますが、ある程度改善する事も多いです。

ただ「食事も取れなくてどんどん体重が減っている」ような方、不安以外の症状が強い・長期にわたる方は、また違う病気の場合もありますので病院の受診をお勧めしています。

パニック障害の症例:20代後半女性

「娘なんですが。大きな音が怖いみたいです」そんなご来店がありました。お母さんからのご相談で、娘さんは20代後半とのこと。運動部に所属していましたが、元々は内向的でマジメな性格。卒業をして大手の会社に入社。仕事をし始めた頃からストレスで体調を崩して、紙の音や新聞の音でもイライラする。イライラするときには偏頭痛と共に吐き気がでてくる。胃腸が動いていない、冷える感じが強い。

屋外に出ると雑踏だけでなく、自転車のブレーキ音だけでも堪らなくなる。朝に買い物には出られるが、混雑するとダメ。現在は休職中。病院に通ってパニック障害と診断されるが出された処方で吐き気などが出るし、待合室で不安が強くなり、動悸が起こるため通院も中断している。とのこと。

漢方では「弱り」を治すことから考える

家ではまだ元気なのですが、屋外に出ると気持ち悪くなる、動悸がする、というパニック障害に近い症状でした。真面目な性格もあり「仕事はしないといけない」「頑張らないといけない」と毎日感じているようです。

心は焦るけれども、身体が思うようにならない。サイドブレーキを掛けながらエンジンを踏み込むようなものです。解除するにも手順が必要で、漢方の場合では弱った部分を助けてあげる、バランスを取ってあげることを考えていきます。

原因も体質も、色々と絡み合って症状が起こります。現状を少しでも改善したいので、抑肝散半夏陳皮+呉茱萸湯で症状を抑えつつ、体質改善にシベリア人参+ミネラルの補給(ワタナベオイスター)も加えてみました。

四逆散の延長方として逍遥散があり、抑肝散加陳皮半夏がある。これらは特に自分自身に降りかかってくる身内の相続争いなどで不眠や神経がすり減る思いをしている人に効果がある。主薬は釣藤鈎・柴胡で、鎮静鎮痙作用を持ち、自律神経機能を調整する。継承漢方による匙加減:吉岡孝麿先生

漢方で、よく使われる逍遥散(加味逍遥散)は、ある程度ストレスに抵抗する元気があると良く効きます。逆に、すでにパニック障害となると、もう少し何かを足してあげないと効きにくいことが多く牛黄・麝香の製剤やサプリメントなどを加えます。

現在はですが、「頭痛・吐き気」も軽減しており、徐々に気持ちが落ち着くと共に音への敏感さも少なくなってきたとのこと。まだまだ、仕事に行ける、というレベルでは無いそうですが、本人もご家族も前向きになってきたと喜ばれていました。将来的にはシベリア人参とミネラルの補給のサプリメントを中心にしていくのでも良いかなと考えていますが、まだ先の話かな・・・。

パニック障害と動悸

パニック障害での動悸には、ドキドキと心臓の音を感じたり、焦ったり不安に思ったときだけドキドキということもあります。漢方で虚証の場合をザックリと分けてみました。下記のように考えますが、それ以外も多いです。

心の弱り:漠然とした不安感・そわそわ・不眠 帰脾湯・婦宝当帰膠・炙甘草湯
肝胆の弱り:すぐに驚く・敏感・怖い夢を見る・優柔不断・胃腸虚弱 温胆湯(竹茹温胆湯
腎の弱り:冷える・腰の寒さ・浮腫む・トイレが近い・耳鳴り 参茸補血丸・参馬補腎丸・杞菊地黄丸

 あくまで一例ですので、ご相談の上で服用して下さい。

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この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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