妊娠中の高血圧(妊娠中毒)で不安な時に覚えておいて欲しいこと。

不妊症のご相談をしていて「妊娠検査薬に反応がありました!」というご連絡はとても嬉しいです。ただ、そこで一安心、かというとそうでもありません。妊娠してからも大変なんです

 妊娠中の不調、といえば「つわり」が有名ですが、もうひとつ、妊娠時の高血圧にも注意しなければなりません。西洋医学的には「妊娠高血圧症候群」といいます。昔は「妊娠中毒」と呼ばれていました。

妊娠中毒は、妊娠時の「高血圧・タンパク尿・浮腫」の症状です。時々妊娠をして浮腫を起こす方はいますが、浮腫だけなら産後に自然に治るので安心してくださいね。問題は「高血圧の併発」です。高血圧は胎児への影響が強いです。お母さんと胎児は胎盤を通じ血管で繋がっていますから、圧力が高いと胎児もシンドイですよね。

妊娠中、産婦人科での定期検診で必ず血圧を測っていると思います。妊娠時高血圧症候群は、血圧だけでなく、尿タンパクも併せて検討します。血圧がちょっと高いだけなら焦る必要はありません。血圧だけで収縮時160mmHg以上もしくは拡張時110mmHgを超えてくる場合は治療が必要です。高血圧と聞くと「塩がちょっと多いんじゃないの?」と考えてしまいますが、妊娠時高血圧はホルモンバランスも関係していますので、減塩療法をする・・・ことはないようです。

妊娠中の高血圧に使われる西洋薬の処方

妊娠中に使う降圧剤は限られてきます。西洋薬の降圧剤は色々な種類がありますが、副作用が起きてしまう場合や絶対に使ってはいけない処方もありますので、注意が必要です。今まで服用していた処方をそのまま服用していませんか?受診したときに服用薬(お薬手帳)を病院に連絡してください。妊娠時に使える処方として有名なのは下記の4つの処方です。(ジェネリックのため名前が違う場合もあります、薬剤師さんに「この処方は、妊娠中も使えますか?」と聞いてください)

  • アルドメット(中枢性交感神経抑制薬)
  • アプレゾリン(血管拡張薬)
  • トランデート(αβ遮断薬)
  • アダラートCR、アダラートLなど(Ca拮抗剤 20週以降に。)

漢方での「妊娠中の不愉快な症状」の考え方 

降圧剤を服用するまでもない場合や、少しの浮腫の場合は漢方で対処することも可能です。もともと体の虚弱な方は、妊娠というイベントでトラブルも起こりやすく、例えば、からだの中を擬人化してみると、こんな事が起こっています↓↓↓↓

「少人数のスタッフで店舗(体)をギリギリ運営できていた。ただ、新しいスタッフが増えたところ、その教育に手間がかかってしまい、スタッフの疲労が極限に。みんなイライラ・ギスギスしはじめた」

妊娠で体調が悪くなる方は、からだの中でこういったことが起きています。

妊娠で体調が悪くなる方は、からだの中でこういったことが起きています。

新しいスタッフが増えたら最初は大混乱しますよね。スタッフが増えてロッカーを増設したり休憩場所を作ったり。持ち出すものも多いです。人間関係も変わってスタッフのイライラはピークに達します。

ちょっとの体調不良が、妊娠と同時にすごくしんどくなる、ということはよくあるんです。胸がザワザワしてちょっとしたことですぐに怒る、口が苦い、喉が渇く、頭がボーッとする、眠れない、眠りが浅い。こんなふうに、色々なところに出てきます。煎じ薬で対応する場合も多いようですが、私としては釣藤散+当帰芍薬散や、釣藤散+○○など、漢方のエキス剤で対応するようにしています。

特に、妊娠時高血圧とまではいかなくても妊娠中の不愉快な症状、できるだけ妊娠中は西洋薬は服用せずに済ませたいとき、「漢方薬で改善」する場合も多いです、ご相談ください。

妊娠高血圧は、平素からの陰虚に加えて、妊娠して血が胎児を養うようになると陰虚火旺を招き、その虚火が心肝に乗じるため妊娠心煩が引き起こされる:中医産婦人科の臨床応用

参考資料:日本高圧学会:高血圧ガイドライン2014、日経DI 2015.01、中医産婦人科の臨床応用

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この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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