人参と人参の仲間たち

人参と聞くと、八百屋で売っている赤いニンジンを思い浮かべませんか?このニンジンは、セリ科の植物で、カロチンを多く含みます。このニンジンは江戸後期から明治時代にかけて輸入された、比較的最近の野菜です。

漢方で人参といえば「朝鮮人参」を指します。一般に中国と朝鮮半島の国境付近に自生している人参を指します。吉林省側にできる人参を「吉林人参」、朝鮮半島側を「朝鮮人参」「高麗人参」といいます。ただ、名前は時代に応じて色々と変化しています。

明示的に拡張した「朝鮮人蔘」の名が使われるようになった。戦後になると、日本の人蔘取扱業者は輸入元の韓国に配慮し、「朝鮮」の語を避けて「薬用人蔘」と称してきたが、後に「薬用」の名称が薬事法に抵触するとする行政指導を受け呼称を「高麗人蔘」へ切り替えた。[wikipedia]

漢方の世界では人参(参)は総称のようになっています。だいたいは体を元気にする生薬として使われます。人参の中でも有名な四大人参として朝鮮人参、西洋人参、田七人参、シベリア人参があります。

人参

朝鮮人参(ちょうせんにんじん)

朝鮮人参はウコギ科パナックス・ジンセングの根で、日本ではオタネニンジンと呼ばれます。ほとんどが栽培ですが、収穫できるまで種をまいてから6年程の時間がかかります。野生のものは特に野生参といわれ重宝されます。薬として使う人参は、根を掘り出したあとに加工を行ないます。漢方ではそれを炮製(ほうせい)といいますが、それをすることで人参を害虫から守ったり成分が変質しないように長期保存できるようになります。

天然品は野山参、老人参、山参と呼び、人工栽培は园参と呼びます。最近では色々な名称で違うことも多いのです。

種類として、白参(はくじん)、紅参(こうじん)、加えて湯通し人参、生干し人参(きぼしにんじん)などがあります。

高麗人参

生晒(しょうさい)人参は新鮮な人参を日干ししたもの。天日の元で1日晒して硫黄で燻す。そのあともう一度天日に晒します。

糖参は新鮮な人参を綺麗に洗浄し、7~8分間沸騰したお湯につける。湯から上げた後は、冷水に10分程度浸してから最後の日にさらして乾燥させる。さらに硫黄で燻した後で、濃い砂糖水(100mlの水に糖135gをとかしたもの)に24時間つけたあと天日に晒す。

この二つは人参の色が白いので白参と呼びます。

紅参は水で洗浄してから人参が黄色く色づき表面が透明になるまで2~3時間蒸す、最後に日にさらし乾燥させる。保存性を良くしたものです。

白参と紅参の大きな違いは蒸すという工程があるかどうか。蒸すことで少しのサポニンは失いますが、逆に別の物質が作られます。日本ではその他、根の表皮を薄く剥いだものを白参とよんでいます。

湯通し人参は加工工程で湯通しを長くしてデンプンが飴色になったもの。生干し人参は湯通しが短時間のもの。以上が朝鮮人参です。

西洋人参

西洋人参は北米大陸に生えていたアメリカニンジン(ウコギ科)に由来。朝鮮人参は強壮作用がありますが、ただ体を元気にするため熱を持ちやすくなります。西洋人参は朝鮮人参と同じような強壮作用はあるのに、こもってしまった熱を冷やす作用があります。なので、体を元気にしつつ、神経を興奮させずにすっきりとする働きがあります。

西洋人参は肺気を補い、肺火を消す。津液を生じ、煩倦を取り除く。虚証に火があれば皆使える(本草従新)

田七人参

田七人参はサンシチニンジン(ウコギ科)の根。中国の雲南省から広西省にかけての海抜が1000mを超える地域でしか取れない特産品で、主根が発達していてこぶ状の突起があります。止血作用と血行循環を改善する作用、相反する作用を同時に持っている生薬です。

シベリア人参

刺五加(しごか)はエゾウコギ(ウコギ科)の根。シベリア人参の別名もあり、ロシア・シベリア地域に自生しています。原植物はエレウテロコックと呼ばれていて、シベリアだけでなく、中国の黒竜江省、日本の北海道などにも生育しています。人参とよく似た成分と共に、抗ストレスのちからがあります。 これはアダプトゲンと呼ばれ、悪影響に対する耐性を指します。

党参(とうじん)

朝鮮人参を「生きるか死ぬかの時に使われた高価な薬」とすれば、党参(とうじん)は庶民のための人参です。キキョウ科の植物で昔から栽培されていました。古典では朝鮮人参とそれほど区別して記述されていません。中国山西省の上党地方から取れる人参の意味で上党人参と呼ばれていました。党参は寒熱が偏りにくいので安全で使いやすい生薬ですが、朝鮮人参に比べて効果は落ちます。穏やかに補益するための処方に使われます。

四大人参の性味

朝鮮人参 甘・微苦 微温
西洋人参 苦・微甘
田七人参 甘・微苦・辛 微温
シベリア人参 微苦

その他の「参」

沙参(しゃじん)は党参と同じように人参の代用品として生産され始め、なかでも南沙参はキキョウ科の党参を指し、北沙参はセリ科のハマボウフウの根を指します。北沙参(ハマボウフウ)は肺を潤し肺の熱を取り咳を止める、発熱や熱病の口渇に使います。

玄参(げんじん)はゲンジン(ゴマノハグサ科)の根の部分です。玄は黒を表わし、黒は腎を表わします。腎陰を補う作用があります。

丹参(たんじん)はタンジン(シソ科)の根です。赤い色をしているため、赤を意味する「丹」がつけられました。生薬を見ると濃い赤をしています。丹参は血行循環の作用も強く、できものなどの化膿症も使います。

苦参(くじん)はクララ(マメ科)の根。口にすると苦く、皮膚疾患に湿布として使う場合などがあります。

インド人参はシュワガンダ(ナス科)の根、アユルヴェーダで使われます。

竹節人参はトチバニンジン由来。地下の根は節くれ立っています。

参考文献:体を元気にするニンジンの色々(叢法滋)、 大阪府薬雑誌2009.08
中国医学と漢方薬 池永優美子著

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この記事を書いた人

福田優基のアバター 福田優基 薬剤師/国際中医師

ゆうき先生:漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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