更年期は女性の閉経前後の約10年間、一般的には45~55歳の時期をいいます。卵巣機能の衰退に伴い、ホルモン(エストロゲン)の産生が急激に低下するため、いろいろな症状が出現します。 たとえば「急にいらいらする」「ご主人のすることなす事に腹が立つ」「他の人のちょっとした言葉に落ち込む」「やる気が出ない」というご相談が多く聞かれます。
体質によって更年期の症状が出ないタイプもいるのですが、ただ、ホルモンバランスの低下に合わせて、子育ての悩み、両親の介護、ご主人の転勤や異動といった環境の変化があると、症状がひどくなっていきます。
何とかしようとして、 病院に行けば「鬱ですね。デパスを処方しておきます」か「ホルモン補充療法をしますか?」か「年齢ですから仕方がないですよ」・・・・。そう言われてショックを受けた方には第三の選択として漢方をおすすめしています。ある統計では、50代の女性のうち75%もの女性に、大なり小なり自覚症状はあるといわれています。
更年期の女性のうち、約75%で何らかの更年期症状が起こり、そのうち20~30%くらいで更年期障害を生じると言われている。一方で、更年期の女性の25%程度はほとんど症状が生じないとされる。2008.7 NIKKEI Drug Information
病院での 「更年期」病院の治療法:
FSH(卵胞刺激ホルモン)が40mIU/ml以上 E2(エストラジオール)が30pg/ml以下 の場合は卵巣機能が低下していると考えられます。ただ、これをグン!と上げておく方がいいのか?といいますと、時間とともに、下記の図のように低下していきくことは自然の摂理ですので、こうなるのが正常です。病院では、経過観察が多いです。ただ、更年期障害の症状がひどい場合。動悸がして動けなくなるとか、パニック状態になる、とか。そんな場合は薬物療法として、ホルモン補充療法、たとえば、エストラジオール貼付剤などを用いられます。
※E1、E2、E3という表記がよく見られますが、女性ホルモン(エストロゲン)の種類によって分けられています。強さとしては、E3(エストリオール:弱い)<<E1(エストロン)<<E2(エストラジール:最強)のため、E2のみ測定することが多いです。
漢方薬の対処法
漢方では、女性特有の生理現象で起こる、精神的な症状を「血の道症」と呼んでいます。血の巡りが悪くなることで、体のエネルギーの巡りが悪くなったり、水分代謝が悪く、感情が不安定になったり。漢方薬の場合は症状にあわせて、処方を選びます。 ざっくりとよく使っている処方を書いていますが、他にも色々な処方・使い方がありますのでご相談くださいね。
加味帰脾湯・心脾顆粒
憂鬱な気持ちで、不安感、不眠の症状。どちらかというと、長く服用して改善する、そんな処方です。慢性的な症状に用います。
加味逍遥散
冷えのぼせ、ホットフラッシュにも効果のある処方。気の巡りをよくするけれども、少し補う生薬も・・・という処方です。メジャーな処方の一つです。
半夏厚朴湯
いらいらするとのどのあたりが詰まったような。気の流れを整えてこういった閉塞感を改善する処方です。熱症状がある場合は別の処方を併用します。
柴胡加竜骨牡蛎湯
イライラによって頭痛や頭の重い感じ。熱傾向を取ることと、気の流れを改善すること、二つの意味があります。
婦宝当帰膠
冷え性があって、貧血、ふらつき。血を補うことを中心に考えた処方です。