「晶三仙(しょうさんせん)」は日本には珍しい山楂子(さんざし)を使った処方です。
晶三仙は健康食品です。他の漢方処方にプラスして晶三仙とすることが多いです
晶三仙って?
ドラッグストアで購入できる胃腸薬を手に取ると、パッケージには胃痛・胸やけなどの言葉と共に「総合胃腸薬」と書かれています。「制酸剤・健胃剤・消化剤・粘膜修復剤」など複数の処方が入っているのが総合胃腸薬ですが、晶三仙は消化薬だけ取りだしたもの、とざっくりイメージしてください。
じゃぁ、市販の消化薬でいいじゃん・・・となりそうですがちょっと違います(^-^;;;;;現代の胃腸と、漢方の脾胃では少し概念が違っていますのでその説明から簡単に。説明しているサイトから引用すると、
胃は六腑の一つであり、飲食物を受け入れ(受納)、消化し(腐熟)、食べた物を人体に有用な形(清:せい)に変化させます。そしてその清を脾に渡した後、残りのかす(濁)を下の小腸・大腸に降ろします(降濁)。
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脾は五臓の一つであり、清を吸収して気血を生成し、全身に輸送していきます(運化)。胃の降濁作用に対し、脾は清を肺に持ち上げ(昇清)、運化します。
肝も五臓の一つであり、体の諸機能を調節(疏泄:そせつ)します。自律神経系や情緒の安定、気血の流れと深い関係があります。脾胃の消化吸収機能も、肝が調節しています。
現代での胃腸はモノ(臓器)の名前です。漢方の胃腸(脾胃)は機能の名前です。漢方のほうが幅広い意味を持っています。その機能を簡単にまとめると、
胃は、受け入れて、消化(溶かし・発酵し)、有用な形に変化させ、残ったゴミを送り出す
脾は、胃が変化させたものから気血を生成し、全身に送り出す
こんな働きがあります。
そして、この消化(腐熟)がうまくいかない、つまり溶かすのが間に合わずたまってしまった状態、これを食滞(食積)といいます。食滞(食積)はベルトコンベヤーに荷物が詰まってしまった感じ、回転寿司で寿司が渋滞している感じです。「暴飲暴食など生活・飲食不摂生、それによって起こる胃腸の不安感・痞え・詰まり・食欲不振=食滞」とよんでいます。
西洋薬ならば「キャベジンいかがですかー!」といわれそうですが、漢方では便利な処方があります。「消化し押し流し・・・」、大きな意味で消化(腐熟)を導く「消導薬」と言われる存在です。
晶三仙の使い方
と、難しい話をしてしまいましたが、実際の使い方は簡単です。
今日は食べ過ぎだな、胃が重くなるなと思ったら、食事の直前でも食事中ででも、すぐに服用です。脂っこいモノを食べるとすぐにもたれちゃって。同窓会があるんだけど食事が心配で。こんな場合も晶三仙を食事の時に服用です。頓服でもいいですし定時の服用という場合もあります。
30代、40代のバリバリ現役の方はどうしても仕事に帰ってからの食事、食事の時間が遅くなります。寝る時間と食事の時間が近すぎるタイプです。このタイプに「漢方の効果が実感できない」方がおられますが、これは脾胃の休まる時間が無いから・・・夜の食事時又は寝る前に晶三仙の服用をお願いしています。
こんな時には別の漢方を
ご高齢で食事をしてからも胃が動かない。ずーっと何かが残っている感じ。こんな場合は、胃を動かす別の処方がいいです。例えば、ゲンノショウコ・センブリなど苦味健胃薬、日本に昔から有る民間薬で恵命我神散や陀羅尼助。太田胃散もいいかも。
空腹時に胃がムカムカ、いつでも胃もたれをしている、そんな場合は晶三仙ではなく、別の処方をメインにしてください。
晶三仙の症例(口コミ)
同時に検索されているキーワードをgoogleで調べてみました。「痩せる」とか「ニキビ」「便秘」「不妊」などの単語と同時に検索されています。不妊についてはお電話で質問を受けたことがあります。「一般的にどうですか?!」と質問を受けた場合・・・
晶三仙で痩せる?
[st-kaiwa5]晶三仙はダイエットに使いますか?[/st-kaiwa5]
ダイエットの場合、三爽茶+晶三仙という組み合わせ・・・ただ、晶三仙を使って痩せてきたーというのはあまり感じないです(^-^;;;;;
ただしですよ、前半でもお話しした寝る時間と食事の時間がごく近い人。この場合は晶三仙をおすすめしています。
夕食(夜食)の時に2包ぐらい一度に服用してください。胃内の食物の滞在時間が少なくなることで、胃腸も休み不眠傾向が改善することがあります。洗濯機の中の洗濯物は早く出して乾かしてあげた方がいいのです。ずっと溜めていてもいいことはありません。
ただ、痩せるというよりも夜飯で太らないのほうかな。痩せるためには食事制限や節制も重要です。このタイプは「食事は、夜は少なく朝にしっかり」です。体も動きますよ。
松江先生が「不眠と焦三仙」について記載されていましたのでリンクを↓↓↓
肉を消化させる作用のある山査子は多分胆汁の分泌を促す作用もあるのだと思います。中医学では胆は決断の臓器、精神を安定させる働きのある臓腑です。多分山査子は胆囊の気の流れをスムーズにして精神状態を安定させることができるのではないでしょうか?
よく夜中の2時、3時になると起きてしまうとかこの時間帯までは眠れないという人がいます。この時間は胆に気血が巡る時間帯です。たぶんそういう方は胆の状態がよくないのだと思うのです。(漢方でなんとかしたい)
晶三仙とニキビ?
漢方では、ニキビの場所によって関連する臓腑が違います。口の周りや顎のあたりは脾胃と強い関係があります。たとえば、チョコを1週間ぐらい食べ続けると頬下から顎のあたりにプツプツとしたニキビが出来ませんか?(私は出来ます)
焼き鳥・ビールのような居酒屋飯、新年会忘年会、食に関連する赤いニキビには清熱解毒の竜胆瀉肝湯や黄連解毒湯、防風通聖散などをベースに+五行草も有効ですし、部位により清上防風湯を使うこともあります。脾虚のニキビ、あまり赤みのないニキビには参苓白朮散(+晶三仙 or +五行草)を使うことがあります。ニキビについてはまた別のページで紹介したいと思います。
晶三仙と不妊症?
[st-kaiwa5]不妊症で某薬局に通っていますが晶三仙の処方を受けています。胃腸の薬が関係しますか?[/st-kaiwa5]
確かに「 不妊の話を聞きに行ったのになぜ胃腸?(=_=;;; 」という疑問はよく分かります。
- 気血を生化する源は脾胃なので少しでも動かそうとした
- 補腎薬の地黄で脾胃が弱らない(+吸収UP)ように加えた
- 薬の点数を増やしたくないためシンプルな処方を加えた
ぐらいはパッと思いつきますが、当薬局としてもなんとも答えられないので「処方された先生に聞いてみては?」という返事をすることが多いです(^-^;;;; 漢方薬の場合はバランスを見ながら処方を考えますので、主訴とは違ってなぜこの処方を?ということもあります。
晶三仙と胃痛?
キリキリ!とした胃痛。
晶三仙を使う場合は、胃が重いといった消化不良。杞菊地黄丸の服用で胃が重くなる方がおられましたが、同時に晶三仙を服用することで改善します。キリキリとした痛み、チクチクとした痛みなら安中散や延年半夏湯を選択します。胃痛がひどすぎる場合は迷わず病院に受診を。
晶三仙と類似処方
晶三仙は独特の組み合わせのため、類似処方が日本には少ないのですが、中国にはいくつか存在します。その中でも、保和丸、大山楂丸、山楂末、日本にも販売されている加味平胃散についてご紹介します。
晶三仙と保和丸
中国では消化不良の漢方薬(消導薬)に「保和丸(ほわがん)」という処方があります。中国のドラッグストアで必ず置いてあるようなメジャーな処方です。脂っこいものをガツガツ食べる国民性ですので、こうした消化薬はよく使われているのでしょう。晶三仙と比較してみました。
処方名 | 成分 |
---|---|
晶三仙 | 山楂子、麦芽、フスマ、ドクダミ、小麦、紫蘇、春菊、赤小豆、甜杏仁 |
保和丸 | 山楂(焦)、六神曲(炒)、半夏(制)、茯苓、陳皮、連翹、莱菔子(炒)、麦芽(炒)[百度百科より] |
主要成分のみ記載
赤文字は似通っている部分です。神麹(六神曲)は「小麦・フスマ・赤小豆・甜杏仁などなどなどと発酵させたもの」ですから、ほぼ似通った処方です。
小麦とか小豆はそのまま使わずに、発酵させて加工しています。表示する場合は日本の法律的に分けて書いています。もう少し似せようかなと思ったら、晶三仙+茯苓飲(半量)あたりが適当かな。
発酵させると、消化酵素や菌やらビタミンが増えまして、、、すっごくざっくり話すと「エビオス」のようなものです。発酵にテクニックがいるらしく、他のメーカーが試作しても晶三仙のような効果が出せないとか。たぶん、杜氏のようなプロ職人がいるんでしょうね(^-^;;;;
晶三仙と大山楂丸
マイナーですが、大山楂丸(だいさんざがん)という処方があります。これも食べ過ぎ、消化不良の処方ですが、山楂子・神麹・麦芽が使われていてほぼ晶三仙と一緒です。剤型は違い、大山楂丸は蜂蜜で練ったような蝋皮丸です。こちらのほうは、中国に行って2回ぐらいしか見たことないです。
処方名 | 成分 |
---|---|
晶三仙 | 山楂子、麦芽、フスマ、ドクダミ、小麦、紫蘇、春菊、赤小豆、甜杏仁 |
大山楂丸 | 山楂、六神曲(麸炒)、麦芽(炒) [百度百科より] |
山楂子末
山楂子を使った健康食品では、下記のようなものも中国では販売されています。山楂子を乾燥させて粉にさせたもの。中国のスーパーで大規模陳列されていて面白そうだったので買ってきました(^-^)
個別包装しているのですが、すっごくパサパサして溶けにくくて。飲むのに苦労しました。中国での山楂子は、乾燥させてドライフルーツになったり、お菓子になったり。健康食品やら医薬品やらと幅広く使われています。
晶三仙と加味平胃散
加味平胃散の加味の部分は食滞・食積を改善する部分、、、成分を見てもらうとわかるのですが、晶三仙です。
といっても、加味平胃散のメインは平胃散ですから。食積が強ければ、加味平胃散+晶三仙という方法もあります。
処方名 | 成分 |
---|---|
晶三仙 | 山楂子、麦芽、フスマ、ドクダミ、小麦、紫蘇、春菊、赤小豆、甜杏仁 |
加味平胃散 | 蒼朮・厚朴・陳皮・甘草・生姜・大棗・神麹・麦芽・山楂子 |
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晶三仙と併用薬
晶三仙とアレルギー
晶三仙には「小麦」が使われていますので、小麦アレルギーの方は心配するかもしれません。発酵させた小麦(※神麹:小麦やふすまを発酵させて使っている)を使っているので軽い小麦アレルギーなら特に問題になりませんが、重度の小麦アレルギーの方は念のため避けるようにお願いしています。
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晶三仙の歴史
晶三仙はイスクラ産業より2001年7月に製品化されています。当時は三仙茶という名前でしたが、リニューアルされて晶三仙となりました。
ネットで成分表示に色々と違いが見られるのですが、晶三仙は2009年にリニューアルしています。
成分 | |
---|---|
旧製品 | 乳糖、山楂子、麦芽、フスマ、デキストリン、小麦粉、トウガラシ、五行草、春菊、赤小豆、甜杏仁 |
2009年~ | 晶三仙エキス末(山楂子、麦芽、フスマ、デキストリン、小麦粉、ドクダミ、紫蘇、春菊、赤小豆、甜杏仁)、トレハロース |
旧製品は固まりやすかったのですが、リニューアルして飲みやすくなりました。