気象病・天気痛、低気圧や台風で起こる頭痛の漢方薬とは

天気痛のメカニズム

天気の変化によって起こる痛みを「天気痛」といいます。梅雨の前になって、からだがおもだるい・しんどい・動けない・眩暈が酷くなる、そんなことはありませんか?その時に起きる痛みの種類は様々ですが、このページでは特に頭痛に絞ってお話しします。

目次

気圧の変化によって起こる頭痛

頭痛持ちの方で、台風、梅雨、大雨、そのタイミングで頭痛が酷くなるという方がおられます。だるさ・めまい・頭痛は並行して起こる場合が多いです。

佐藤純先生の書籍から天気痛について引用し要約します。

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天気痛とは「慢性痛」に「天気」が絡んだ複雑な痛みのこと。慢性の痛みは他人に理解してもらえないし天気は自分ではどうしようもできないため、気持ちが落ち込みやすく、さらにそのストレスで痛みを増悪させる。

気圧が大きく関係し、天気の崩れはじめと終わりに痛くなる。天気を感じるセンサーは内耳に多いようだ。そのあたりが敏感な場合は天気痛が起こりやすい。特に女性は鋭敏なので患者は女性が多い。男性は弱音を吐けないなどの社会的な制約で表面化していないだけかもしれない。

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天気痛のメカニズム

 

天気痛の症例①

「眩暈・頭痛」で来局する方は、ほとんどが既に病院を受診していて、、、。病院からはよくメリスロンやビタミンB12が処方されています。メリスロンは内耳循環改善薬(抗めまい薬)といわれます。佐藤先生の書籍から抜粋ですが、この場合は漢方の五苓散を使って改善しています。

Aさんは雨が降る前や台風が来る前に、眩暈と酷い痛みが出ることが多いと判りました。(中略)確かに天気の影響を受けているのです。眩暈の症状があることから、Aさんにはまず、天気が崩れる前に抗眩暈薬を飲んで貰うことにしました。(中略)めまいの症状がある人は、内耳のリンパ液が過剰になって浮腫んでいることが多いため、浮腫を取る作用のある抗眩暈薬を処方したのです。Aさんは非常に強い痛みがあるため、当面は痛み止めを併用して貰うことにしました。その状態でしばらく様子を見ましたがなかなかすっきりしません。抗眩暈薬の効きが良くないのです。

そこで、Aさんには漢方薬の五苓散を抗眩暈薬と合わせて飲んで貰うことにしました。五苓散には浮腫を取る作用が有り、吐き気や嘔吐、めまい、頭痛などの症状にも適応しています。これがAさんにはあっていました。天気痛が出ることが減り、半年後には頭痛薬を重ねて使わなくても良くなりました。(後略)

天気痛~辛い痛み・不安の原因と治療方法~ P.20より抜粋 著者:佐藤純

この時期の眩暈や頭痛は漢方薬が良く効く、、、と思うこともあります。今回は頭痛のことを中心に記載していますが、眩暈や身体のだるさも楽になります。

気象病と漢方

Googleで「天気によって起こる頭痛の漢方薬」と検索すると、まず紹介されているのが「五苓散」。確かに五苓散の効能効果を見ると「頭痛」と書いています。

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口渇、尿量減少するものの次の諸症。浮腫、ネフローゼ、二日酔、急性胃腸カタル、下痢、悪心、嘔吐、めまい、胃内停水、頭痛、尿毒症、暑気あたり、糖尿病。ツムラ五苓散添付文書より

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漢方に興味のある人だと「五苓散=尿を増やす(利尿剤)」と覚えていますが、それだけでなく五苓散は水(湿)が停滞するような病状によく使います。

五苓散が効く頭痛は水の停滞や水の偏りなど水に関係する頭痛です。ちょうど天気痛・・・によさそうですよね(^-^;;;;

「五苓散+α」でお渡しするとすごく良く効いた!という著効例もありますし、飲みやすく(利尿薬と比べて)副作用が出ることもほぼないという処方です。五苓散については詳しく解説していますのでご覧下さい。

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天気痛の症例②

ということで「天気痛には五苓散を飲んでおきましょう!」・・・と言いたいところですが、五苓散も万能薬ではありません(^-^;;;; 当薬局の症例です。

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男性 50代 180cm 75Kg 頭痛・眩暈で来局
眩暈・ふらつき・動悸・頭痛あり。5年前に会社の定期検診で高血圧と診断され降圧剤の服用で180/120から130/85まで下がった。頭痛は時々起こることがある。会社の忙しさや職場の変更などがありストレスは強い(明け方に眠りが浅いのか起きることがある)。
天気が悪くなる前から頭痛が酷くなるように。胸騒ぎなど不快感が出ることもある。9時頃に眩暈がして夕方にかけて戻ることもある。CTやMRIでも何もない。病院ではメリスロン・メチコバール(ビタミンB12)が処方されているが改善せず。別の医院で五苓散を追加で処方されたが、少しは良くなったが思わしくない。(後略)

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五苓散を服用したけれども、なぜかあまり効果は感じなかった例です。

大人の天気痛は複雑

大人の天気痛は姿勢の悪さ・スマホの使いすぎなどの生活習慣から偏頭痛・緊張性のすでにある頭痛、そして職場環境、精神的なストレス・不安などが複雑に絡み合います。「いつ治るんだろう、頭痛で動けない、治らないんじゃないだろうか」こんなストレスを繰り返すことでもより治りにくくなります。自分で自分の病気を作っている状況ですね。こうした内側からの原因を漢方では「内傷(ないしょう)」と呼びます。

外感頭痛 風寒 冷えや風邪によって悪化:葛根湯
風熱 風邪の発熱などにより悪化:銀翹散
風湿 気圧や湿気など環境で悪化:勝湿顆粒・五苓散
内傷頭痛 肝陽上亢 ストレスで陽気が浮き始める
肝火上炎 肝陽上亢が激しくなった状態
脾虚不運 胃腸虚弱により体が滋養されない
腎虚 体の老化や疲れ、生殖の弱り
瘀血 血行循環の不良、もしくは長く続く病状

※いかに弁証論治するか(胡栄先生)より引用、一部追加

漢方での「頭痛の分け方」の一例です。外感とは体の外側から来た影響。内傷とは体の内側からの影響。完全に切り分けることが出来ません。特に長く続いた病気は色々な原因が複雑に絡み合っています。

説明してみますと、

外感頭痛

「ブルブル、今日は寒いなー、頭が痛くなってきたぞ」風邪を引いたときに起こる頭痛、これは風寒頭痛と言います。風熱頭痛はインフルエンザの時の頭痛を考えると判りやすいかも。

湿気や気圧で起こる頭痛が「風湿」、天気痛に多いこのページのメインテーマです。湿はサラサラしたものではありません。ちょっとべっちょりしたスライムみたいなイメージですよ。停滞・固着して色々な症状が起こります。頭にいけば頭痛ですが、場所によっては体が重い、だるい、浮腫む、そんなことも起こります。

風寒と風湿が同時なら香蘇散+五苓散でもいいですし、状況に応じては眩暈・頭痛なら半夏白朮天麻湯+五苓散でも頂調顆粒+五苓散でも。処方は色々と使われています。

内傷頭痛

内傷とは内側からの歪み、例えば生活習慣(暴飲暴食)やストレス・環境などで臓腑が痛む(傷)ことをいいます。

今日、上司に嫌味を言われたよ!!ヽ(`Д´)  その日のことだけならいいのですが、毎日毎日繰り返されると・・・血圧も自然に上がってしまいますよね。自分のストレスが自分を傷つける・・・これも内傷です。血圧が上がれば、肩も凝り、頭も痛くなり、血行循環も悪くなります。

来局されて「いつからですか?」と聞いたときに「2年前から」「3年前から」という病歴の長い人はほとんどが内傷を伴っています(^-^;;;; ストレスは大きいと思いますので、この肝陽上亢、肝火上炎に対する処方を併用します。有名な処方なら加味逍遙散がありますが、芎帰調血飲第一加減、加味温胆湯などを併用することもあります。またどこかのページで説明していきたいと思います。

さらに病歴が長くなれば「瘀血」「腎虚」も絡み合うため、複数の処方を使うことが多いです。また「自分の痛みを見える化」することも大切。頭痛日記やスケジュール帳に記入してみましょう。

参考にして欲しいサイト・書籍

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この記事を書いた人

福田優基のアバター 福田優基 薬剤師/国際中医師

ゆうき先生:漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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