薬の発汗解熱作用を高めるお粥

薬の発汗解熱作用を高めるお粥

日本には正月七日に、無病息災を願って、七草粥を食べる習慣がある。[漢方漫歩より]

 

IMG_6168s.jpg

 

お節料理やお餅をたくさん食べて疲れぎみの胃腸を、七草粥によって整えようという、食生活の知恵から生まれたものだろう。

 

七草には、解毒作用とともに、消化を促進し、酒による熱を冷ます効果がある。

おもしろいことに、中国にも、この時期に食べる「腊八粥(らーばあ)」というお粥がある。

 

旧暦の12月8日前後(新暦1月8日頃)につくるもので、仏前に供えたり、親戚や親しい人に贈る習慣がある。この日は、お釈迦さまが悟りを開いた日とされており、寺院が粥を炊いて祝ったものが、民間に広まったものだと言われている。

 

腊八粥は、粥の中にクルミ、小豆、蓮の実、ナツメ、落花生などを入れてつくる。クルミには補腎・健脳作用、小豆には利尿作用、蓮の実には消化促進と精神安定作用、ナツメには増血作用、落花生には消化促進作用がある。

 

胃腸の弱い人、お年寄り、病後・術後の人にすすめたい薬膳粥だ。

お粥といえば、中国では朝食のメニューだが、漢方薬を服用する際にも、一緒に食べることがある。

 

有名な古典『傷寒論』には、風邪による頭痛・発熱などの症状改善に用いる桂枝湯の服用法の一つとして、「桂枝湯を服んだ後、すぐに粥を食べるとよい」とある。

つまり胃腸の働きを助け、体力を充実させることによって、薬の発汗解熱作用を高め、邪気を除去することを狙ったものだ。

 

日常の食事も良薬とする「薬食同源」の漢方ならではの考え方が生きている。

 

路 京華(中国中医研究院広安門医院主治医師)讀賣新聞日曜版『漢方漫歩』1995/1/8

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

目次