交通事故後遺症(しびれ)と漢方治療

交通事故はそのときのケガも辛いのですが、その後に起こる後遺症、古傷の痛みなども大変です。

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運転中の衝突(もらい事故)

50代男性からのご相談です。

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5年前に”もらい事故”をしまして、、、。運転中に後ろから追突されました。それほど大きな事故で無く少しの入院で済んで良かったのですが、首の辺りと右足に”痺れ”が残ってしまいました。

リハビリでずっと病院には通っているのですが痺れがどうしても気になって。涼しくなり酷くなった気がします。特に寒い時期は厳しくなりますのでなんとか漢方で治らないでしょうか?(後略)

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現在の服用薬を聞きますと「血圧のお薬」と「リリカ・漢方の補中益気湯・五苓散」とのこと。

数年服用しているが痺れは変わらない。血圧は120ぐらいにコントロールできている、食欲は正常、便通正常、睡眠正常とのこと。痺れは右足あたりの動き始めが特に酷く動き始めるとやや緩和する。デスクワークが多く座り仕事が基本。夏は「冷房の風」が辛い。

 

漢方を使うことで「動きにくいぐらいの痺れ」から「ある程度我慢できる痺れ」に改善できる場合は多いです。ただ5年も経てば「完全に元に戻す」というのは難しい、かもしれません。色々と問診をして処方を考えました。

交通事故後の急性期、漢方的な考え方

交通事故後の急性期(~1ヶ月程度)には「痺れ・むち打ち」などの症状がまだ出ていないことが多いです。この時期は”痛みは無いから大丈夫”と安心せずに「激しい運動を避け、頸部を安静に」保ちます。整形外科は必ず受診を。

漢方としては治打撲一方(ちだぼくいっぽう)・通導散・桃核承気湯という処方があります。皮下出血や打撲部位の腫れ・浮腫などの改善に使われます。痛み止めなどと併用することもできます、予防として使ってもいいでしょう。炎症を改善するために「大黄」という生薬を使っています。やや軟便傾向になりますので驚かないようにしましょう。

処方名 効能効果
治打撲一方 打撲によるはれ及び痛み
通導散 比較的体力があり下腹部に圧痛があって便秘しがちなものの次の諸症
月経不順、月経痛、更年期障害、腰痛、便秘、打ち身(打撲)、高血圧の随伴症状(頭痛、めまい、肩こり)
桃核承気湯 頭痛またはのぼせる傾向があり、左下腹部に圧痛や宿便を認め、下肢や腰が冷えて尿量減少するもの
常習便秘、高血圧、動脈硬化、腰痛、痔核、月経不順による諸種の障害、更年期障害、にきび、しみ、湿疹、こしけ、坐骨神経痛

※効能効果以外の応用方法もあります

上記の処方に「田七人参」「紅花」などを加えるコトもあります。

交通事故後の亜急性期~、漢方的な考え方

1ヶ月ぐらいが経ち、やや落ち着いた亜急性期。この頃から痛みや痺れが出ることが多いのですが。漢方治療を取り入れることをお勧めしています。早めからの方が、早く治ります。基本的には血行循環を改善する処方をベースとして処方を組み合わせています。血行循環を改善する処方、例えば上記の通導散や桃核承気湯、冠元顆粒や当帰芍薬散もよい処方です。

もともと通導散は「打撲やねんざの改善の処方」としてもよく使われていますし、上記の症例では「疎経活血湯」に鶏血藤・紅花を加えています。 脳梗塞などに使う補陽還五湯という処方も血行循環を改善する処方ですが「地竜」が入っていて使いやすい処方のひとつです。

よく使う処方
疎経活血湯・冠元顆粒・通導散・補陽還五湯 活血
+柴胡疎肝湯・加味逍遥散・柴胡加竜骨牡蛎湯 疎肝
+当帰芍薬散・十全大補湯・婦宝当帰膠 補血
+苓姜朮甘湯

自律神経のバランスが崩れていれば、柴胡疎肝湯や加味逍遥散などを。長期的な痛み・痺れの場合は血行循環不良と共に気の流れが悪いことも多いです。

体の元気が無い、貧血、冷えなどがあれば補血の当帰芍薬散や十全大補湯などを併用します。

“交通事故後の痺れ”もそうですし、“手術後の痛み”や”古傷”も「冬になると厳しくなる」「雨が続くと辛い」という方は、痛み止めだけでは根本的な改善になりません。漢方処方を併用して少しでも辛い毎日から脱却しましょう!

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この記事を書いた人

福田優基のアバター 福田優基 薬剤師/国際中医師

ゆうき先生:漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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