疎経活血湯の効果とは?

​要約:疎経活血湯は17種類の生薬から構成され、特に「袪風湿・利水」に「瘀血」が絡んだ痛みやしびれに効果的で、慢性的で夜間に悪化する刺すような痛みに適しているとされています。​また、漢方での痛みやしびれの概念である「痺証」についても説明され、症状に応じた処方の使い分けが重要であると述べられています。​​

目次

疎経活血湯の効能効果

疎経活血湯の効能効果をまず見てみましょう。

体力中等度で、痛みがあり、ときにしびれがあるものの次の諸症:関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛(クラシエ・一般用)
関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛(太虎堂)

「痛み」が多くご高齢者さんに使えそうなイメージです。疎経活血湯は「痛みの漢方」として有名で、効果のよい処方です。ベースとして他の処方に併せても、単体で使っても。急性・慢性にも使えます。

ただし、「昨日の雪道から足に神経痛が出ました、疎経活血湯で治りますか?」といわれると、別の処方をお勧めしますし、「子供の運動会に出場して筋肉痛になりました、疎経活血湯で治りますか?」といわれても別の処方をお勧めします。効能効果の関節痛・神経痛・腰痛・筋肉痛という理解だけでは使い分けが難しい処方です。

漢方で考える痛み痺れとは?

疎経活血湯の説明の前に、漢方での痛み痺れ(しびれ)について少し解説しましょう。

痛みや痺れ:痺証

西洋医学では痛みや痺れ(しびれ)の部位・状況によって、坐骨神経痛・関節痛・関節リュウマチ・腰痛といった言葉を使います。漢方は違っていて、まず痛みや痺れをまとめて「痺証(ひしょう)」と呼びます。

痺証とは「気血の流れが滞り、関節・筋肉に痛みやしびれが生じる病証」で、主に「風・寒・湿」の外邪(がいじゃ)が体に侵入し、経絡を塞ぐことで発症すると考えています。

川に例えるとこんなイメージです↓↓↓↓

主な分類と特徴

  • 行痺(風痺):痛みが移動しやすく、風邪(ふうじゃ)の影響が強い
  • 痛痺(寒痺):激しい痛みがあり、冷えると悪化する
  • 着痺(湿痺):重だるさや腫れがあり、湿気で悪化する

大きく3つに分けていますが「風・寒・湿」は単体では少なく、複数が絡み合って症状が発症します。

川の氾濫は堤の弱い箇所から崩落しますし、川の氾濫が長期化すると土地の浸食・汚泥が溜まるといった二次的な災害が起こります。同じように、臓腑の抵抗力が弱いと外邪に抵抗できないし、津液の消耗と外邪が混じると熱を生じますし(熱痺)、長期化することで瘀血(血行循環不良・停滞)も生じます。

黄帝 問うて曰く、痺は如何にして生ずるか?と、
岐伯 応えて曰く、風寒湿の三気(外邪)雑(まじ)はり、至り合して痺となるなりと。
黄帝内経・素問・痺論より(簡易な文に変換)

主な分類と使う処方

どんな処方を使いますか?というご質問がありましたので記載します、あくまで例です。わたしも腰痛を起こすことがありますが、冷えると痛いし、気圧の変動でしんどいし、古傷痛むし、、、しんどいときは、全部当てはまる気がするんですね。メインの症状を考えて、複数の処方を組み合わせること多いです。

傾向処方例
風寒
葛根湯・防已黄耆湯
葛根加朮附湯
桂枝加朮附湯
湿麻杏薏甘湯
湿越婢加朮湯
白虎加桂枝湯
風寒痺+血瘀疎経活血湯
風寒湿痺
 +脾虚・腎虚
※臓腑虚損
独歩顆粒
大防風湯
やや風寒痺
 +気血虚
桂芍知母湯
黄耆桂枝加五物湯

疎経活血湯の使い方

疎経活血湯は、17種類の処方で、生薬を見てもバランスよく配合されています、その中でも「袪風湿・利水」に「瘀血」が絡んだ時に使います。慢性で、夜に悪化したり刺すような痛みがあったりがポイントです。

生薬名
解表和羗活・防風・白芷・生姜・威霊仙
利水防已・蒼朮・茯苓
清熱竜胆
駆瘀血
補血行血
当帰・芍薬・川芎・地黄・牛膝・桃仁
補気理気陳皮・甘草

メーカーで若干の相違はありますが基本は変わりません。
白朮:オースギ・太虎堂、  蒼朮:ツムラ
防風:ツムラ・太虎堂、   浜防風:オースギ

併用する処方を考える

ぎっくり腰:ある先生は、疎経活血湯+治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)をお勧めされていましたし、私の場合は+芍薬甘草湯でよく効いたり。

疎経活血湯の症例

60代女性、右ひざの痛み。2年前ぐらいから痛みが続く、歩き始めや立ち上がったときに痛みが出る。触ると少し腫れた感じはあるが、熱感はない。講師をしており、立っている機会が多い。寝ているときに動くと激痛があって驚いて起きることがある。(後略)

病院を受診したところ「年齢で誰でもそうなりますよ」と言われ湿布と痛み止めを処方されていますが、あまり効果がないらしく。少し冷たい風が吹き始めた秋口に来局されました。忙しいためか睡眠時間も十分に取れず、、最近は目の下のクマも気になるようです。去年もこの時期から痛んだらしいのですが、今年は特に辛いとのこと。

こういったある場所だけ痛む(固定痛)、瘀血(血行循環障害)の症状があると、まずは疎経活血湯がいいなーと考えます。この方の場合は、疎経活血湯+桂枝加朮附湯をお渡ししました。すぐに良くなったのですが、時々膝が痛くなるらしく、補肝腎の意味で独歩顆粒に変更して服用してもらっています。

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この記事を書いた人

福田優基のアバター 福田優基 薬剤師/国際中医師

ゆうき先生:漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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