疎経活血湯は痛み痺れを内側から治す漢方薬。特に慢性的な痛みやしびれに効果的で、夜間に悪化する刺すような痛みにも適しています。このページでは、漢方での痛みやしびれの概念である「痺証」についても説明し、症状に応じた処方の使い分けを紹介しています。
疎経活血湯とは何か?
漢方での「痺証(ひしょう)」とは
「疎経活血湯は痺証に使います」と言われるとギョッとしますよね。急に出てきた「痺証」という専門用語ですが、簡単にお話しすると「不快な痛みやしびれ」です。昔は、坐骨神経痛・脊柱管狭窄症・リウマチといった現代のような細かい区別がなかったんです。で、こうした症状をまとめて「痺証」と呼び、状態・原因・改善法をみて区別していきました。

疎経活血湯の効能効果
痺証に効く漢方処方は色々とあるのですが、その代表格、疎経活血湯の効能効果をまず見てみましょう。
体力中等度で、痛みがあり、ときにしびれがあるものの次の諸症:関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛(クラシエ・一般用)
関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛(太虎堂)
「痛み」が多くご高齢者さんに使えそうなイメージです。疎経活血湯は「痛みの漢方」として有名で、効果のよい処方です。ベースとして他の処方に併せても、単体で使っても。急性・慢性にも使えます。
ただし、「昨日の雪道から足に神経痛が出ました、疎経活血湯で治りますか?」といわれると、別の処方をお勧めしますし、「子供の運動会に出場して筋肉痛になりました、疎経活血湯で治りますか?」といわれても別の処方をお勧めします。効能効果の関節痛・神経痛・腰痛・筋肉痛という理解だけでは使い分けが難しい処方です。
処方としては「上半身に良く効く」といわれています。ただ、別に下半身の痛みに使って効かないわけではなく・・・。私はどちらでも使える処方だと感じます。
処方に含まれる生薬とその働き
疎経活血湯は、17種類の処方で、生薬を見てもバランスよく配合されています、その中でも「袪風湿・利水」に「瘀血」が絡んだ時に使います。慢性で、夜に悪化したり刺すような痛みがあったりがポイントです。疎経活血湯に使われている生薬とその意味について図にしてみました。

「体の弱り(経絡の気血が不足し外邪が侵入しやすい)」があり、実際に「外邪」が侵入します。気血の流れが悪化し、肝の気血の不足や血の阻滞(瘀血)が起こります。疎経活血湯は慢性的な状態を改善するために、まんべんなく治すように処方が構成されています。
| 生薬名 | |
|---|---|
| 解表 | 和羗活・防風・白芷・生姜・威霊仙 |
| 利水 | 防已・蒼朮・茯苓 |
| 清熱 | 竜胆 |
| 駆瘀血 補血行血 | 当帰・芍薬・川芎・地黄・牛膝・桃仁 |
| 補気理気 | 陳皮・甘草 |
よく似ている漢方処方との違い
もうひとつ痺証の代表的な処方、桂枝加朮附湯と比較してみましょう。同じ効能効果でも、かなり生薬の構成が違います。桂枝加朮附湯は冷えや痛みが強いときに特に有効で、疎経活血湯は慢性期・虚した部分も補うように使われます。
| 処方名 | 同じ生薬 | 違う生薬 | 効能効果 |
|---|---|---|---|
| 桂枝加朮附湯 | 芍薬・甘草・生姜・白朮 | 桂皮・附子・大棗 | 関節痛、神経痛 |
| 疎経活血湯 | 芍薬・甘草・生姜・蒼朮 | 和羗活・防風・白芷・威霊仙・防已・茯苓・竜胆・当帰・川芎・地黄・牛膝・桃仁・陳皮・ | 関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛 |
併用例
疎経活血湯は別の処方と併用することもあります。
ぎっくり腰:ある先生は、疎経活血湯+治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)をお勧めされていました。腰痛の場合は芍薬甘草湯を加える場合が多いです。
疎経活血湯の症例
60代女性、右ひざの痛み。2年前ぐらいから痛みが続く、歩き始めや立ち上がったときに痛みが出る。触ると少し腫れた感じはあるが、熱感はない。講師をしており、立っている機会が多い。寝ているときに動くと激痛があって驚いて起きることがある。(後略)
病院を受診したところ「年齢で誰でもそうなりますよ」と言われ湿布と痛み止めを処方されていますが、あまり効果がないらしく。少し冷たい風が吹き始めた秋口に来局されました。忙しいためか睡眠時間も十分に取れず、、最近は目の下のクマも気になるようです。去年もこの時期から痛んだらしいのですが、今年は特に辛いとのこと。
こういったある場所だけ痛む(固定痛)、瘀血(血行循環障害)の症状があると、まずは疎経活血湯がいいなーと考えます。この方の場合は、疎経活血湯+桂枝加朮附湯をお渡ししました。1か月ほどで良くなったのですが、時々膝が痛くなるらしく、補肝腎の意味で独歩顆粒に変更して服用してもらっています。
どの程度の継続が必要か
効果は意外と早い処方です。体にあっていたら1週間ぐらいから2か月ぐらいで楽になったとは感じられます。痛みが無くなったら「治った!」と感じて中止してしまいますが、疎経活血湯などの補う処方は長く飲むのがポイント、次の痛みへの予防になります。
