漢方の素材に植物だけでなく鉱物や動物や虫を使うことがあります。一般的には植物よりも生物(動物・虫)を使った方が効果が強くなると言われており、生物には水蛭・地竜・牛黄・海馬・蛤蚧など結構な種類があります。
ただし、日本で製品になっている動物・虫の処方は少ないです。イスクラ産業「水快宝(すいかいほう)」はそういった中で、水蛭(すいてつ)を使った面白い処方です。
こんな時に使います
どんなときに使うのか。メインの漢方処方は欠かさず服用しているけれども。さらに水快宝で補助したい、そんな使い方です。
メインの処方としては、冠元顆粒・血府逐瘀丸・桂枝茯苓丸・通導散・折衝飲・桃核承気湯・補陽還五湯などで、特に血の流れを良くしてあげたい場合に加えています。症状で言えば、婦人病(不妊症・子宮内膜症・子宮筋腫など)、脳血管障害、腰痛や膝痛などの痺証、糖尿病の合併症(血管の症状)、、、などです。
処方構成の解説
水快宝の主成分といえば、水蛭です、まずはそれからお話ししましょう。
水蛭とは?
「水蛭(すいてつ)はヒルの一種です」というと「えっ、本当ですか?!(;´Д`)」と言われることが多いです。あの血を吸うウネウネしてる生き物、気持ち悪いですが、使うのは処理して乾燥させた後干し昆布みたいになったものです。
漢方は植物だけでなく、生き物や鉱石を使う場合があります。例えば、鹿茸(鹿の角)は有名ですね。今回の水蛭ですがどのヒルを使ってもいいわけではなくて、特別な種類を養殖して使われています。
参考書「中医臨床のための中薬学」ではその効果について、
水蛭: 破血逐瘀・消癥。血瘀による無月経腹腔内腫瘤などに(中略)水蛭は鹹で入血し苦で泄結し、肝経血分に入って破血逐瘀・消癥し、瘀血停滞の経閉癥瘕(ちょうか)・跌打損傷の瘀血作痛に対する良薬である。(中医臨床のための中薬学 P307)
ややこしいですが「血行循環が悪く、痛みまで出てしまった部分を通す」という意味です。
破血逐瘀・消癥
血行循環と言えば世の中に医薬品も健康食品もあふれていますが、作用機序は様々。このサイトは漢方のサイトなので、漢方についてお話ししたいと思います。
血行循環不良の概念は漢方にもありまして「瘀血(おけつ)」といいます。太い血管というよりも毛細血管や微小循環の詰まりの事を指しています。
瘀血について、身近な生理痛を例にとって考えてみましょう。生理痛に桂枝茯苓丸は有名ですが、では桂枝茯苓丸と水蛭はどう違うのか。図にしてみました。
ひとことでいえば詰まっている状態が違います。やや流れにくくなった状態を血瘀、動かなくなった状態を瘀血、完全に詰まってしまったのが不通(絡閉不通:癥瘕[ちょうか])です。
あくまでイメージですよ。通常の生理痛なら桂枝茯苓丸でも治せるのですが、状態が酷くなったら水蛭などもっと流せる生薬を足します。
上の図では赤血球が詰まったようなイメージに書いていますが、赤血球が詰まっているわけでも、血小板が詰まっているわけでもありません。具体的なモノではなく「何かが」詰まっていると考えます。
詰まっている場所も太い血管ではありません、毛細血管です。絡閉というように、こまかーい、張り巡らされた裏路地、路地裏の不法投棄のイメージですね。心筋梗塞に効果がある、というよりはもっと細かい部分の詰まりに使います。
原因の改善も大切
もちろん、原因の改善も大切になります。偉い先生が言いました。瘀血の原因については下記のような可能性があると。
- 寒邪が血を凝滞する
- 熱邪が血を粘調にする
- 痰濁が経脈を停滞させる
- 気虚による推動力の低下
- 気滞による血行不暢
- 外傷
この原因(や部位)を考えて、桂枝茯苓丸を選択するのか、気滞が強いならば血府逐瘀丸にするかもしれませんし、加えて「水快宝」を足してあげる、そんな選択が必要かと考えています。水蛭についてさらに詳しく知りたい場合は、百度(中国)の記事をお勧めします。中国語です(^-^;;;
三稜・莪朮とは?
三稜(さんりょう)・莪朮(がじゅつ)はセットで使われることが多い生薬です。
例えるなら、東大寺南大門の阿吽の金剛力士像のような・・・三稜は「血中の気薬」、莪朮は「気中の血薬」といわれています。血の流れを除いて、気の流れを巡らし、痛みを取るという便利な働きです。
激烈な働きをする生薬ではないので、上手く水蛭の補佐をしています。
水快宝がリニューアルして
ということで、色々と書きましたが・・・。水蛭の処方がイスクラ産業さんより発売されています。水蛭+三稜+莪朮の処方です。
旧製品の水快宝は2006年発売です。最初は試験的なよくあるボトルのパッケージでしたが、何度かリニューアルしています。
今回はやっと本腰を入れてパッケージを作るようになったようで、とても嬉しいところです(^-^;;; 今回に限っては、内容も変わっています。
新旧の水快宝、比較
新旧水快宝で比較しました。なんと水蛭が5倍になりましたが、内容量は半分になりました(^-^;;;;; お値段据え置きなので、トータルで考えるとお得になったような気もします。
旧 水快宝 | 新水快宝 | |
---|---|---|
三稜 莪朮 山楂子 |
各3g | 各3g |
水蛭 | 100mg/day | 500mg/day |
金額(税抜) | 6200円 | 6200円 |
服用目安 | 15粒/day | 15粒/day |
内容量 | 450粒 | 225粒 |
発売:イスクラ産業株式会社 健康食品です
この商品は店頭のみの販売になります
味は少し苦みが強くなったかな、それほど大きな違和感はなかったです。
[st-kaiwa1]活血の処方(冠元顆粒・桂枝茯苓丸・血府逐瘀丸etc)に+αするつもりで使いたい[/st-kaiwa1]
水快宝をおすすめしないタイプ
水蛭・三稜・莪朮は血行循環を良くする処方(破血)という話をしましたが、おすすめできないタイプもいます。そう、出血傾向です。出血性の疾患と妊婦さんは避けた方がいいでしょう。合わない場合はすぐに中止しましょう。
説明は分かりやすいように簡単に書いています、厳しいツッコミはご勘弁ください。