ある勉強会で漢方処方の出荷ランキングの話が出ました。順位は下に記載していますが、病院で使われる漢方処方と漢方相談薬局で使われる漢方処方にはかなり違いがあります。
違いの原因は病院では「西洋的な漢方の使い方」をしており、漢方相談薬局では「体質改善を考えて」処方をするところにあるのですが。
例えば、大建中湯、病院ではどう使っているかというと「手術の後」です。術後は腸が動かなくなり腸閉塞(イレウス)が起りやすくなりますが大建中湯で予防できるとしてかなり使われています。
出荷ベース表をみると、ご高齢の先生は「こんなに大建中湯の体質が多いの?」と驚きますが、別に体質(証)とか関係なく使っているようです。
実際、漢方相談薬局で、大建中湯はほとんど使うことが無い処方でして。私自身も今年入って1~2回ぐらい、しかもごく短期なんですね。大建中湯はお腹の冷えを改善したり動きをよくする処方ではあるのですが激烈な系統の処方で。それ以外の処方、例えば小建中湯でも補中益気湯など穏やかな処方でも十分代用出来ます。
もちろん、私としては”漢方の効果が見直されている”ということ、嬉しいのですが(^-^;;;; 漢方処方は「証に合わせて~」使って欲しいなと。”80代おばあちゃんの術後に大建中湯が使われている”のを見ると、やっぱり違和感を感じてしまうわけです(^-^;;;;
ランキングを見ていますと、2位はこむら返りで整形外科、3位は認知症周辺症状改善のため介護関連で使われているようです。三大処方と言われる当帰芍薬散・桂枝茯苓丸・加味逍遥散が下位なのが少し歯がゆいですね。
市販(一般用)はドラッグストアで販売されているものも多いのでしょう、比較的軽い症状で出すような処方が多いです。
- ダイエット :防風通聖散
- 風邪 :葛根湯、小青竜湯、辛夷清肺湯
- 泌尿器 :八味地黄丸、五淋散、清心蓮子飲
ランキングを見ると色々と考えることも多いです(^-^;;;
順位 | 2015(医療用 | 2013(医療用 | 2012(一般用 |
1 | 100 大建中湯 | 大建中湯 | 防風通聖散 |
2 | 68 芍薬甘草湯 | 補中益気湯 | 葛根湯 |
3 | 54 抑肝散 | 抑肝散 | 八味地黄丸 |
4 | 1 葛根湯 | 六君子湯 | 辛夷清肺湯 |
5 | 43 六君子湯 | 加味逍遥散 | 小青竜湯 |
6 | 107 牛車腎気丸 | 芍薬甘草湯 | 清心蓮子飲 |
7 | 41 補中益気湯 | 麦門冬湯 | 五淋散 |
8 | 62 防風通聖散 | 牛車腎気丸 | 芍薬甘草湯 |
9 | 24 加味逍遥散 | 柴苓湯 | 麦門冬湯 |
10 | 23 当帰芍薬散 | 小青竜湯 | 猪苓湯 |
左:ツムラ出荷ランキング数量ベース 2015年版(※)
中:医療用漢方製剤使用量ランキング 2013年(松浦Infomation
右:一般用漢方製剤繁用処方ランキング(松浦Infomation
※勉強会で書き留めた順位なので、間違いがありましたらお知らせ下さい(^-^;;;;
日本老年医学会が「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」を発行した。高齢者は薬の副作用などが出やすいため、薬物療法の安全性を高める目的で05年から作成している。この15年度版から漢方薬も大きく取り上げられた(中略)「高齢者の緊急入院の3~6%は薬剤が原因であり、後期高齢者になるとその数字は15%超にのぼります。高齢者は複数の病気を抱えるために多剤併用になりがちで、平均6種類以上服用しているという報告もあります。中でもなるべく少ない薬剤での治療を選択するために、漢方薬が用いられるケースが増えています。ガイドラインにも高齢者に有効性が示唆される漢方薬として5つが掲載されました」週刊文春2016.08.11・18