帯状疱疹後神経痛と漢方薬

帯状疱疹のご相談が時々あります。発症後3日以内前後でしたら病院を受診して抗ウイルス薬をもらうようにお勧めしますし、それ以上経っている場合・そして痛みが強い場合は漢方の軟膏やら西洋薬やら漢方薬やらなんとかして耐えるように・・・とお話ししています。だいたい、3週間ほど過ぎれば楽になっていく方が多いです。

もちろん、その後は、頑張って体力を落とさないように養生ですよ。無理しないように養生の漢方薬をお勧めしています(^-^;;;; そっちのほうが重要です。

帯状疱疹のウイルスはいつの間にか潜伏して、年齢を重ねたりストレスがひどかったりして免疫力が低下すると、帯状疱疹として発症します。「何が原因ですか?悪いことをしたんですか?食べ物が悪いですか?」、聞かれることもありますが、特にこれを食べたから起こった、という原因はありません。毎日の生活が大切。ほんと困ったことや疲れたことが続いた頃に、悪いタイミングで起こります。免疫力などが下がると起こるんです

最初の皮膚症状は、3週間~3ヶ月程度で自然に治りますが、約20%ぐらいで「帯状疱疹後神経痛(帯状疱疹後の神経障害性疼痛)」という痛みがでる方もおられます

帯状疱疹は病院に行くと抗ウイルス薬などが処方され、皮膚症状は改善するのですが、痛みだけが継続して残ってしまいます。かなりのくせ者で、それの帯状疱疹後神経痛はなかなか治りにくい(難治性)し、再発もしやすくなります。

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目次

帯状疱疹後神経痛の西洋薬的対処法

帯状疱疹の時期に症状が強かった場合は、その後の帯状疱疹の後の痛みも強くなるようです。

  • 50歳以上
  • 初期に強い疼痛を起こした
  • 皮膚症状が重症であった

例えば上記のような症状があれば注意しましょう。痛みはピリピリ、触ると電気の走ったように痛い、灼熱感、鈍痛、殴られた後のような痛み、など人によって違いますが、ただただ、不愉快な症状が長く続きます。かわいそうな感じです。

で、どうすれば痛みが治まるのか・・・!もちろんその話なのですが、その前に少しだけ別の話を。慢性疼痛って実は色々と種類があります。

痛みの分け方

慢性疼痛のガイドラインによると国際疼痛学会の慢性疼痛の分類は7つに分けられます。

  1. 神経障害性疼痛(chronic neuropathic pain)
  2. 運動器疼痛(chronic musculoskeletal pain)
  3. 術後痛及び外傷後慢性疼痛(chronic postsirgocal and posttraumatic pain)
  4. 頭痛・口腔・顔面痛(chronic headache and orofacial pain)

その他は省くとして、神経障害性疼痛というのが帯状疱疹後神経痛です。運動器疼痛は腰痛など・・・つまり何が言いたいかというと、神経の痛みなので「市販の痛み止め(イブ・ロキソニン)」は効きません。

お電話いただく中で「痛み止めが効かなくてねぇ、触れると痛いんだよ」というお問い合わせ。そうなんです。市販の鎮痛剤は効きませんよ。

では、病院ではどんな処方をしているのか。ガイドラインからの抜粋になりますが(参考記事参照)、

  • リリカ(プレガバリン)という処方薬はよく使われます。ガイドラインでも推奨されています。
  • 抗てんかん薬のガパベン(ガバペンチン)も使われますが、保険適用として記載時点で認められていないので処方されるのは難しいかもしれません。その他の抗てんかん薬はあまり勧められていないようです(弱く推奨)。
  • 三環系抗うつ剤のトリプタノール(アミノトリプチン)も有効です。ただ、副作用の口渇・便秘が起こって辛い、という方もおられます。
  • トラマドール・モルヒネも有効のようですが、あまり使われてはいないようです。

どの処方薬を選ぶかについては、かかりつけのDrと相談してください。リリカかトリプタノールがほとんどで、+ビタミン剤(B群)を加えて、という処方が多いようです。

漢方薬としての対処法

ということで、やっと漢方薬の話になります(^-^;;;; 漢方薬は上記の処方などと併用も可能です。

ガイドラインから漢方での記述を抜粋しますと、

神経障害性疼痛(慢性疼痛治療)に対する漢方薬の効果と安全性は現時点ではエビデンスに乏しく不明である 2D:使用することを弱く推奨する

いまいち解明されていないけど、効くかもね・・・という記述ですが、私としては併用をお勧めしたいと思います。

 

状況 処方名
冷えの傾向があり、温めると楽になるor変わらない 桂枝加朮附湯・附子末・真武湯など
表面に熱傾向や浮腫などがある、体質的にも熱く感じる 越婢加朮湯・黄連解毒湯など
水分代謝が悪く、グジュグジュする、化膿しやすい 勝湿顆粒・竜胆瀉肝湯・茵蔯五苓散など

 

帯状疱疹後疼痛に関しては、桂枝加朮附湯や附子末を使うこともありますし、それをベースとして「瘀血:おけつ」という血行循環が悪いため(神経の)回復が上手くできなかった症状、と考えて、通導散や桃核承気湯、桂枝茯苓丸、といった血行循環改善の併用も検討します。

芍薬甘草湯や竜胆瀉肝湯を使って良かった例もあります。病院の処方と併用して頂く場合もあります。また、そういった症状が出る場合は、体力面が低下している場合もありますので、そちらの改善で十全大補湯・人参養栄湯・麦味参顆粒など全く別の漢方薬をプラスしたりもします。気血の流れが悪く悪化するタイプ、ストレスで悪くなるタイプの場合は、逍遙散・柴胡疎肝湯・血府逐瘀丸・芎帰調血飲第一加減などを使う場合も有ります。

実際、「病院の処方でも今ひとつ改善しない」「経過観察中」というご相談でも使ってみると効果があるかも、というお話は多いです。もちろん西洋薬・漢方薬にかかわらず100%効果があって、ぴたっと止まる!そんな症状ではありません。

漢方薬を使って楽になった例

70代で帯状疱疹を発症、その後ピリピリとした痛みが「顔の部分」に続く。病院では様子を見ましょう、とのことで処方薬は無し。農家の方ですが、ご相談時は、大きなマスクをしていたので、「どうしてマスクをしているのですか?」とお聞きしたら、『風が当たると、ちりちりと痛むんです』とのことでした。

あと、風邪も最近引きやすく、体力面も少し低下気味とのことで、血行循環を改善する処方と、元気を付けるような処方をお渡ししました。それから1ヶ月ぐらいして。また後来店時に体調をお聞きしました。そのときは、部屋の中でなら、マスクをとれるようになっていまして。そのうち、『痛みが取れたわけでもないが、マスクは時々外せるようになりました』ということで。なかなか完治するのも難しいですが。そのまま漢方薬を継続してもらっています。

帯状疱疹ウイルスと口唇ヘルペスの違い

帯状疱疹 単純ヘルペス
疾患 水痘・帯状疱疹 口唇ヘルペス
性器ヘルペス
予後 通常再発を繰り返すことはないが、
帯状疱疹後神経痛として疼痛が
残る場合がある
再発を繰り返す
感染性 帯状疱疹患者から感染して帯状
疱疹を発症することはまれ
接触感染をする

帯状疱疹、口唇ヘルペスは似たようなウイルスによって起こります。どちらも免疫力の低下によって起こしやすくなります。

参考資料

  • pharmaTribune V4 No4 April 2012
  • 厚生労働省科学研究費補助金 慢性の痛み政策ホームページ「慢性疼痛治療ガイドライン」(2018年3月)※サイトの中段あたりにPDF版があります
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この記事を書いた人

福田優基のアバター 福田優基 薬剤師/国際中医師

ゆうき先生:漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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