波のある気持ちを落ち着かせる処方、抑肝散の症例

抑肝散は気持ちを落ち着ける処方

色々なところに書かれている抑肝散。「抑肝散=痴呆症の漢方薬」と勘違いされている方も多いです。が、抑肝散は応用範囲の大きい処方です。 当薬局でご相談を受けていて、何例か特徴的な症例がありました。

80歳代、女性、ご家族からの相談。最物忘れがひどく、病院にてMRIを撮影。脳には異常がないとのこと。家族を続けて亡くして精神的な落ち込みがあった。医師からは「身内を亡くしたことの精神的ショックで、起こっているのでは?」といわれる。

気分の波が激しく、イライラなども起こしやすい。病院から処方された薬は無く、健康食品としてブルーベリー、養命酒などを服用。(その他略 

 ご高齢で「体の元気が不足している」状態に加えて、精神的なショックで「肝(感情や精神的なエネルギー)」が乱れた状態です。 

その他色々と症状をお聞きしましたが、体の元気を補う「補気薬」に「抑肝散」を加えて、様子を見て頂きました。当時は、外出も出来ないような体調で、娘さんもすごく心配されていましたが、1ヶ月ほどすると、外出する元気も出てきたようです。 

食事中にヒステリーを起こして泣き出したり、暴れたり。そんな興奮した気持ちが落ち着いてきたと同時に、補気の漢方薬を加えたことで外出する元気が出てきました。家に籠もってしまうと身体も心も落ち込んでしましまいます、外出で新しい刺激を受け、物忘れの症状もかなり改善しました。

認知症ではない症状でも抑肝散を使い、また、補気薬を加えることで改善がめざましかった症例です。いまでも、元気にご来店頂いています。 yokukansan05

高齢者に多い病気の中で、介護する家族らの負担が大きいのは、アルツハイマーや脳血管障害に伴って起きる認知症だ。時間の感覚や場所がわからなくなる見当識障害や記憶障害などは認知症の「中核症状」と言われるが、介護者にとって、「中核症状」より「周辺症状」の方が大きなストレスになることがわかっている。  周辺症状には、暴力や幻覚、徘徊(はいかい)などがある。これらを軽くするとされるのが、漢方薬の「抑肝散(よくかんさん)」だ。

 抑肝散の「肝」は、漢方医学的にいえば、血を蓄えて精神活動をつかさどる部位。肝の働きが病的になると、怒りっぽくなったり多動になったりする。荒井教授は「抑肝散は、幻覚などの原因となる『脳の暴走』を止めると考えられる」と説明する。

「ヨミドクター(2)複合的な症状に威力」より引用  yomiDr./ヨミドクター(読売新聞)2009/11/11 

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この記事を書いた人

福田優基のアバター 福田優基 薬剤師/国際中医師

ゆうき先生:漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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