習慣性流産と漢方薬

習慣性流産

 習慣性流産とは、「自然流産を連続3回以上繰り返す」と定義されています。

原因としては、免疫的なもの、染色体の異常、内分泌系の異常など様々、かつ複合している場合もあります。

原因を特定しようと思っても、「これだ」ということが判らないことがあります。

 

西洋医学的な習慣性流産の予防

習慣性流産を予防するために「バイアスピリン(100mg 1日1錠/朝)」などを服用されている方も多いのではないでしょうか?

「なぜ、血液を凝固させないバイアスピリンが効くの?

というご相談は時々受けますが、これは、

 

習慣性流産の方に自己免疫疾患*などで血栓ができやすい体質が多い 

→ 血流の緩徐な胎盤の細い血管で血栓ができて詰まりやすい。

 

という理由です。妊娠後には、ヘパリン(カプロシン)の皮下注射が併用される場合もあります。

(静脈注射はすぐに効果がなくなるので、持続性の皮下注射。連日打つ必要があります )

すべての習慣性流産に効果があるとは限りませんが、有効な対処法です。

習慣性流産

 

漢方薬的な習慣性流産の予防法

 「柴苓湯」を服用している方が時々おられます。

免疫の調整に柴苓湯を使いますので、あながち間違いではありませんが、中医学の場合はもう少し詳しく体質を検討します。

ご相談を頂く体質の中で、腎虚、気虚、血虚、又は混じったような体質は多いです。

 

虚証  
腎虚 腰のだるさ、腹痛、下腹部の下垂感、口喝、手足の熱感 参馬補腎丸、参茸補血丸、etc
血虚 腎虚に似るが、眩暈、皮膚に艶がない、顔色淡黄など 帰脾錠、婦宝当帰膠、etc
気虚 腎虚に似るが、動くと発汗、時折出血ありなど  補中益気丸、参苓白朮散、etc

併せて冠元顆粒、田七人参、泰山盤石散*などを加味しお勧めすることもあります

病院での治療に併せて、漢方薬を服用することも出来ますので、ご相談いただければと思います。 

 

参考/習慣性流産

*泰山盤石散(たいざんばんじゃくさん)

気血双補(体の元気をつけて)、安胎(赤ちゃんを保持する)処方。日本では発売されていないため、煎じ薬として作ることがある。十全大補湯から肉桂と茯苓を抜き、続断、黄芩、砂仁、糯米を加えたものに相当する。習慣性流産の予防には、妊娠2ヶ月目から本剤を1週に1剤服用させ2?3ヶ月間続けると良い。 中医臨床のための方剤学より

*自己免疫疾患の抗リン脂質抗体症候群(APS)

 抗リン脂質抗体症候群では、血管内皮細胞に作用してPGI2とTXA2の産生均衡がTXA2優位に傾き血栓が形成されやすい。

参考文献

日経DI2008/09

漢方の君臣方剤学 愛新覚羅恒章先生、愛新覚羅啓天先生

 

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この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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