舌の苔厚い人は水分に注意を
中国漢方では、舌は体の健康状態を映しだす鏡と考えている。舌を観察すると、その人の体の具合、とりわけ内蔵の状態がよくわかる。(漢方漫歩より)
たとえば、体の水分代謝の状態は、舌の表面につく苔(舌苔という)に現れる。健康な人の舌はきれいなピンク色をしており、苔は薄い白色で適度に潤っている。舌の苔は自然界とよく似ている。
湿気の多いところにある岩には厚い苔がつく。乾燥地帯では苔は生えず、地面にヒビ割れができたりする。
同じように体内に余分な水分(湿)がたまると、舌の表面にはべっとりと厚い苔がつき、形もむくんで大きくなる。逆に水分が不足すると苔は少なくなり、ひどい場合には苔が全部なくなって、表面が鏡のようにツルツルの状態になる。また、舌にヒビ割れ状の溝ができることもある。
中医師は患者の舌をよく観察する。内蔵から発信される健康情報を的確にチェックできれば、早めに対策を講じられるからだ。梅雨どきは、特に舌苔が厚い人が多くなる。胃腸に余分な水分が溜まるためだ。
水分の取りすぎで苔が厚くなり、胃がポチャポチャしたり吐き気がする時は平胃散、ふだんから胃腸が弱く、食欲不振・おなかが張る・下痢ぎみの人には、消化器系の働きを高める香砂六君子湯などを、症状によって使い分ける。舌苔が厚くなりがちな人は、日頃から水分や冷たい物、油っこい物のとりすぎにも十分注意したい。
路 京華(中国中医研究院広安門医院主治医師)讀賣新聞日曜版『漢方漫歩』1993/06/13