冷え性体質「衣食住」に問題
日本人は、体質的に冷え性の人が多い。(漢方漫歩より)
現代っ子の低体温状態(36度以下)がよく話題になるが、「冷え」の状態は大人にも当てはまる。日本で漢方相談の現場に立ち会う機会も多いが、「冷え」は年齢・性別を問わず、常に訴えの上位にある。
日本人の冷え性体質は、衣食住の習慣からきているように思えてならない。食生活でも、肉、魚、野菜、いずれも生が大好き。生ものの摂りすぎは、体を冷やすが大丈夫だろうか。キュウリやトマトですらいためて食べる中国人から見ると、心配である。飲み物もまたしかり。冬でもレストランでは氷水が出るし、街には清涼飲料の自動販売機があふれている。
中国には「久而増気」という言葉がある。一つのものを長く食べ続けると、その気が増えるという古人の教えであり、今でも食生活に生きている。熱いものをたくさん、しかも長く摂り続けると陽気(体を温めるエネルギー源)が増え、冷たいものの摂りすぎは、逆に陽気をそこなう。ふろ上がりのビールも、ほどほどが大切である。
服装の面でいえば、冬でもミニスカートで頑張る女性が目立つ。冬は寒冷の刺激が強く、陽気の消耗も激しい。おしゃれ感覚を楽しむのもいいが、衣服によって陽気を守る工夫もなくてはならない。 日本には日本の生活習慣があり、それをとやかく言うつもりはないが、冷え性体質の人は衣食住にもう少し配慮があってもよいのでは。
路 京華(中国中医研究院広安門医院主治医師)讀賣新聞日曜版『漢方漫歩』1993/05/09