土地の差?薬に敏感な日本人
日本にやってきて4年になる。中国から日本にきた中医師(中国での漢方専門の医師)がまず最初に驚くのが、日本の病院や漢方薬局で出される(漢方薬の)薬の量の少ないことである。(漢方漫歩より転載)
中国の煎じ薬の量は、日本の3?4倍の量はある。
中成薬(中国の漢方製剤)などの丸薬にしても、日本では1回4?5粒服用のところ、中国ではざっとその2倍、3倍の量は服む。もっとも、日本のように1粒1粒細かくは数えず、手のひらに山のように積んで飲み下すのが中国流である。 この用量の差を、私なりに考えてみた。
日本人は体質的に、漢方薬に対して中国人よりも敏感なのではないかということが一つ。腰痛を訴えるあるお年寄りの女性が、若返りの妙薬として知られる海馬補腎丸をごく少量服用したところ、短期間の内に生理が戻ってきた例がある。敏感なのだ。
生薬の質も関係ありそうだ。日本へ輸出されている中成薬の原料には、概して質がいいものを使用している。質がいいということは、薬効も強いということである。
煎じ薬では、水の違いをあげる人もいる。中国水は硬水だ。日本の水は軟水だ。軟水の方が溶解度が高いため、量も少なくて済むという理屈だ。これも一理ありそうである。
中医学には「入郷問俗」という言葉がある。その土地に入ったら、その土地の風俗習慣をよく聞くべしという教えだ。薬の用量に対しても、その原則はあてはまりそうである。
路 京華(中国中医研究院広安門医院主治医師)讀賣新聞日曜版『漢方漫歩』1993/04/04
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