「ドロドロ血」を漢方で解決!瘀血・活血・破血の違いを薬剤師が徹底解説

漢方の世界で「血(けつ)」のトラブルを語る上でよく使われる単語、「瘀血(おけつ)」「活血(かっけつ)」「破血(はけつ)」という3つの単語について、解説していきます。
店頭の相談では「微小循環の血行が悪いんですよ」「瘀血ですね」とよく使います。じゃぁその違いは・・・?

皆さんに最初にお尋ねします。 「あなたが今、一番解決したい『血の巡り』に関するお悩みは何ですか?」
肩こり、生理痛、シミ・くすみ、あるいは心臓病などのケア、検診での数値など。色々とありますよね。これらを思い浮かべながら読んでみてくださいね!

目次

瘀血(おけつ)とは何か? 「ドロドロ血」という病理状態

まず最初に理解しておきたいのが「瘀血」です。これは、漢方における「状態(病態)」を指す言葉です。

瘀血の定義

漢方・中医学では、血液がスムーズに流れず、滞ったり、どこかに溜まって動かなくなったりした状態を「瘀血(おけつ)」と呼びます。例えるなら、「枯草が溜まって流れが悪くなった側溝」のような状態です。

枯草が溜まって流れが悪くなった側溝

水の流れが悪くなりますが、流れてはいる。病気と病気じゃないのの間ぐらい。ちょっと何か症状が出てくるかな、という段階です。

瘀血のサイン(症候)

漢方では、瘀血によって「独特のサイン」が現れると考えます。例えば、

  • 刺痛(しつう): 針で刺されたような、チクチクした鋭い痛み。痛む場所が固定されているのが特徴です
  • 夜間に悪化: 瘀血による痛みは、夜になるとひどくなる傾向があります。
  • 皮膚の乾燥: 漢方の古典『金匱要略』では、古い瘀血がある状態を「肌膚甲錯(きふこうさく)」と呼び、皮膚がサメの肌のようにガサガサになることを指します。
  • 舌の裏側の静脈: 舌を裏返した時に、静脈が太く浮き出ていたり、紫や黒ずんでいたりするのも重要な指標です。

活血(かっけつ)とは何か? 優しく巡りを促す「掃除」

次に「活血」です。これは「瘀血」という悪い状態を治すための「治療方法(治法)」を指します。活血の処方を活血薬とまとめたりします。

活血の役割

活血とは、滞っている血を動かし、スムーズな流れを取り戻す作業です。例えるなら、「枯草が溜まって流れが悪くなった側溝の枯草を掃除して流れを良くする作業」に近いです。

代表的な処方:冠元顆粒(かんげんかりゅう)

「活血」といえば、当薬局でイチオシしている「冠元顆粒」。今回は冠元顆粒をご紹介しますが、それ以外にもいろいろな処方が活血薬としてありますし、処方の方向性は少しずつ違いますので、体に合った処方を選んでください。

冠元顆粒、中国の「冠心2号方(かんしんにごうほう)」という理論をベースに作られた比較的新しい漢方処方です。主役となる生薬は「丹参(たんじん)」で、血管を広げ、血栓を防ぐだけでなく、新しい血を作るサポートもすると言われています。

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血流を良くする、といえば病院で処方される血栓の形成を妨げる抗血小板薬・抗凝固薬(バイアスピリン・プラピックス)」、血管を広げる血管拡張薬(アムロジピン)が有名ですが、漢方薬はそれらの処方とは違う働きがあります。

活血の素晴らしいところは、単にゴミを取り除くという単一の働きだけでなく、古いものを取り去ることで新しい元気な血が生まれる下地を作る(化旧生新:かきゅうせいしん)などの複数の観点から生薬が組み合わされているという点にあります。

瘀血を重視した「駆瘀血薬」といういい方もあります。「活血薬」と「破血薬」を併せた概念です。イメージとしては駆瘀血薬(弱)と駆瘀血薬(強)。

破血(はけつ)とは何か?強固な塊を打ち砕く「工事」

最後に、もっとも強力な手段である「破血」について解説します。

破血の役割

活血が「掃除」なら、破血は「解体工事」です。長年の放置によってガチガチに固まってしまった瘀血を、強力に打ち砕く手法です。

強い瘀血を「血結」「癥瘕(ちょうか)」と呼び、現代でいう腫瘍や強固な癒着、ひどい血栓、子宮内膜症・筋腫などを指すことがあります。

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破血の特徴

破血に使われる生薬は非常にパワーが強い生薬です。例えば動物系生薬では「水蛭(すいてつ)」が該当します。

水蛭は、水田などに生息するヒルを乾燥させた動物性の生薬で、最大の特徴は、その唾液に含まれる「ヒルヂン」などの抗凝血成分にあります。

ヒルが血を吸う際に血液を固まらせないこの働きを応用し、漢方では滞った血液である「瘀血」を解消する「駆瘀血剤」として用いられます。特に、古くから滞っている頑固な瘀血(陳旧性瘀血)に有効とされ、脳梗塞(血栓の溶解)、月経不順、無月経、子宮筋腫、打撲、下腹部の張りと痛みなどに使われます。

代表的な漢方処方には、「抵当湯(ていとうとう)」や「大黄䗪虫丸(だいおうしゃちゅうがん)」などがあります。ただし、強力に血を巡らせる作用があるため、妊婦や瘀血のない人には禁忌(使用不可)とされています。

抵当湯・大黄䗪虫丸は日本では販売されておりません。

日本では「活血の処方+水蛭」など組み合わせを工夫する必要があります。水蛭は生薬のほかにイスクラ産業「水快宝」に含まれています。

注意点: 破血は「攻め」です。虚証に使いすぎると、正気(体のエネルギー)まで削ってしまう恐れがあります。相談しながら使いましょう。

ステップで考える

店頭でのご相談でお話しする場合は、まずは瘀血がある→その原因を探しつつ、お話しするようにしています。

STEP
瘀血の原因を探る

血が滞る原因は一つではありません。例えば、

  • 気滞(きたい): ストレスで「気」が止まり、血も連動して止まる。
  • 寒凝(かんぎょう): 冷えによって血が滞る。
  • 気虚(ききょ): 血を押し出すエネルギーが足りない。

原因が違えば、使う「活血薬」も変わります。冷えているなら温めながら巡らす、ストレスがあるなら気を巡らせながら巡らす、といった具合です。

STEP
活血から始める

通常は、安全性の高い「活血」からスタートしています。「桂枝茯苓丸」は有名な処方ですね。桃核承気湯、通導散、温経湯、芎帰調血飲第一加減、血府逐瘀丸・・・いろいろな処方があります。

STEP
必要に応じて破血を検討

「長年のしこりがある」といった場合、破血薬を組み合わせていきます。

まとめ:血の巡りを整えて「未病先防」を

肩こりやシミといった身近な悩みから、高血圧や動脈硬化といった生活習慣病まで、あらゆる問題の背後に瘀血が隠れています。

自分自身の症状が「瘀血」なのか、原因は何か、そして今の自分に必要なのはどういった処方か。それを判断し説明するのが、私たち漢方の専門家の役割です。

単に血流を良くするだけでなく、体全体のバランスを整えながら、自然に血が巡る体質へと導く点が漢方の良さです。ぜひ一度、「私の瘀血、どうすればいいですか?」と相談してみてくださいね。

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