加味平胃散のポイントを解説!注意点や早く治るためのコツも紹介

湿邪という外部からの影響で胃腸が弱くなってしまう、それを改善するのが加味平胃散(かみへいいさん)です。胃がポチャポチャする、食欲不振、全体的に重い、といった胃腸症状を改善します。

目次

加味平胃散の効能効果

加味平胃散の効能効果を見てみましょう。

体力中等度で、胃がもたれて食欲がなく、ときに胸やけがあるものの次の諸症:急・慢性胃炎、食欲不振、消化不良、胃腸虚弱、腹部膨満感(松浦薬業)

なんとなく上記のような効能効果では胃腸虚弱にすべて効くように思えますが、実際は「湿邪」に絡む症状に効果があります。中医学では湿滞脾胃(しつたいひい)、湿困脾胃(しつこんひい)と呼ばれます。四文字熟語のほうが、なんとなくイメージをつかみやすいです(^-^;;;; ドロドロの地面でぬかるんでいる・・・のを改善するイメージでしょうか。

湿邪で起こる症状は?

湿滞脾胃はわかったけど、じゃぁ実際どんな症状が起こるのよ?と言われると、、、。湿によって脾胃の気の流れが阻害されるので「上腹部膨満感、胃もたれ、食欲不振(なんとなく食べられない)、吐き気、嘔吐、腹痛(重い)、呑酸(酸っぱいものが上がってくる)、胸のつかえ、咳、動悸、味覚異常」など。

湿は重い性質を持つため「疲労感(なんとなくだるい)、手足のだるさ(むくみ、なんとなくぽってりしている)、体のだるさ、眠くなる、下痢をする(軟便気味)、オリモノが多い」などが起こることもあります。

すべて起こるわけではありませんが、こんな感じです。おなじ胃の改善に使われる六君子湯との違いはこちらに記載しています。

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平胃散の症例(口コミ)

症例:食欲不振・胃の不快感(70代女性)

体格が細いご高齢の方、女性。猛暑のため水をたくさん補給していたら胃がなんとも言えない水っぽい感覚に。下痢が続き食欲も無いため、病院を受診したが整腸剤だけ処方されて・・・、ということで来局されました。

夏場の暑さでは体力低下のお悩みも多いですが、こうした水による胃腸機能低下のお悩みもあります。

※ 体力低下の場合は麦味参顆粒をお勧めしています↓↓↓↓↓↓

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漢方では余分な水(体に不必要な水)を「湿邪」と呼びます。ご家庭でも排水口に溜まった水は・・・いやーな感じですよね。「邪」という言葉がぴったりです。

この女性の場合は、水の取り過ぎに加えて、素麺やうどんなどの水っぽい食事が多かったようで。逆流性食道炎の予防で制酸剤(タケプロン)も服用していました。胃酸も薄まって、これまで以上に消化が出来なかったのでしょうね。

加味平胃散と○○という2種類の処方をお勧めして生活養生をお話しして、お帰りになられました。次回ご来局頂いたときから、調子が良く浮腫もなくなった~とのことで、その後はずーっと長く愛用していただいております。季節で少し処方を加減しますが、もう5年以上になります(^-^;;;;

症例:合コン前の男性(大学生)

珍しい相談です。20代のがっしりとした体格の男性が来局し「今から合コンなんですが、とても酔いやすくて・・・二日酔いにならない漢方ってありますか?」とのこと。

う~ん、と考えて。黄連解毒湯と加味平胃散を数日分お渡ししました。連絡が無かったのでしばらく忘れていたのですが、後日、友達の分も購入して帰られました(^-^;;;;

この組み合わせ、私自身が考えたわけで無く。東京の漢方薬局に勤めていたときですが、某先生が飲み会前になるとコソコソっと漢方薬を飲んでいまして。「先生、何を服用されているんですか?」と伺ったところ「黄連解毒湯と加味平胃散」をこそっと見せてくれました。

また、ある別業界の知り合いですが「飲んだ後はタケダ漢方胃腸薬K末が良く効くんだよ~~!」といってました。これは「香砂平胃散加芍薬」つまり平胃散の成分が入っています。

平胃散は湿邪を抜く処方ですから、、、飲み過ぎたお酒も「湿邪」と考えるんですね(^-^;;;; 飲む量は楽しい気分の邪魔にならない程度、ほどほどで、よろしくお願いします。

処方構成

加味平胃散(蒼朮・厚朴・甘草・生姜・大棗・陳皮)+(神麹・麦芽・山楂子)は平胃散の6種類の生薬の組み合わせに、3種類の生薬を加えて合計9種類の生薬で成り立っています。メインの組み合わせが「蒼朮・厚朴」。湿を乾かし脾胃を元気にする組み合わせです。

蒼朮辛・苦、温燥湿・健脾
厚朴辛、温行気
甘草甘、平益気和中
生姜辛、微温
大棗甘、微温
陳皮辛・苦、温理気和胃
神麹辛・甘、温
麦芽甘、平
山楂子酸・甘、微温

引用:中医臨床のための中薬学

平胃散と加味平胃散の違い

ベースとなっている平胃散、これには脾胃の湿邪をしっかりと取りのぞき、悪心・嘔吐・下痢を改善、脾胃の機能を立て直すのが目的です。邪気を取り除く、つまりは「胃腸の乾燥機・除湿器」みたいなものです。

湿邪の原因は上記のような多めの水分・酒だけでなく、生もの・刺身・アイスクリームといった冷食、消化しにくいもの、も含まれます。

なぜ加味しているのか

この加味平胃散の加味の部分。神麹・麦芽・山楂子という消導薬(消化を促進する生薬)を加えることで、弱った胃腸を助けています。神麹・麦芽・山楂子といえば、晶三仙ですね!

併用処方とは?

平胃散は基本的な処方のため色々な処方と組み合わせます。熱傾向があれば黄連解毒湯や、貧血傾向があれば帰脾湯と組み合わせたり、ストレスがあれば逍遥丸を加えたりと症状によって加減されています。ご相談ください。

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この記事を書いた人

福田優基のアバター 福田優基 薬剤師/国際中医師

ゆうき先生:漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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