「のどに何かが引っかかっているような気がするけれど、病院で検査しても異常がない」「ストレスが溜まると胸が苦しくなり、首のあたりに違和感がでてしまう」そんな経験はありませんか?
これらは気のせいではなく、中医学では明確な病態「梅核気(ばいかくき)」として捉えられています。店頭相談でも保護者会に言ったら喉のあたりがキュッとして・・・とか、嫁姑問題でキュッとして・・・とか。大変です。今回は、そんな現代人の心の疲れと身体の不調を繋ぐ「気の滞り」を改善する半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)について、古典の知見を交えて深く解説します。
半夏厚朴湯の効能効果
「喉の違和感」と書きましたが、違和感にも種類がありますよね。風邪でもエヘンエヘンとなりますし、魚の骨が刺さっても違和感が起こります。半夏厚朴湯の効能効果を見てみましょう。
効能効果:体力中等度をめやすとして、気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う次の諸症:不安神経症、神経性胃炎、つわり、せき、しわがれ声、のどのつかえ感(「クラシエ」漢方半夏厚朴湯エキス顆粒)
添付文書には「咳・不安神経症・神経性胃炎」などの「神経症」と記載されています。一般に「神経症」と聞くと、「鬱病???」と想像してしまいますが、この場合は病名のつかないような「気にしやすいタイプ」「神経がか細い」ぐらいの軽い意味です。 神経・ストレスからきた違和感に使う処方です。

漢方では「気」はエネルギーの源であり、体内をスムーズに循環しているのが健康な状態です。しかし、ストレスという「壁」ができると、気は行き場を失います。
半夏厚朴湯は、この「渋滞した気(エネルギー)」の交通整理を行います。こうして気の流れが回復する、つまり自律神経のバランスも回復します。
主な症状「喉のつまり」
30~50代ぐらいの女性に多いご相談に
ノドに何かが引っかかっていて、けど痰は出ないんです
との相談があります。喉が詰まったような、けど風邪ではありません。どちらかというと、喉が細くなる・・・水道のホースを上下に引っ張ると、きゅーーーっと細くなりますよね。あんな感じです。
さらに詳しく聞くと
子供が受験期
親の介護
子供達がなかなか実家に寄りつかない
嫁姑関係が渋い
仕事が忙しいのに上司が理解をしてくれない
仕事場の同僚や取引先との人間関係
というような「ストレスを抱えている場合」が多いです。ネクタイで締められるとか、喉に何かを巻いたようなとか、痰が粘りついているとか、、、色々な表現がありますが、すべて「ストレスが原因の自律神経の乱れ」です。
こういった「ノドの違和感」はサスペンス溢れる頃の中国でも多かったらしく、梅核気(ばいかくき)と呼ばれました。自律神経の乱れが原因ですから肩こり、首凝り、イライラ、寝付きが悪い、動悸、食欲不振などが同時に起こる場合もあります。
漢方的視点からの深掘り解説
ここからは詳しく解説していきましょう。
半夏厚朴湯の構成処方
構成生薬: 半夏(はんげ)、厚朴(こうぼく)、茯苓(ぶくりょう)、生姜(しょうきょう)、蘇葉(そよう)
方意(生薬の役割分担):君臣佐使の視点
半夏厚朴湯は5つの生薬からできています。
- 君薬(主役):半夏 燥湿化痰の主薬。胃の気を降ろすことで吐き気を止め、のどの違和感を改善。
- 臣薬:厚朴 強力な行気作用を持ち、胸やお腹の張りを取ります。半夏と協力して「痰」と「気」の結びつきを破壊。
- 佐薬:茯苓・蘇葉
- 茯苓: 脾(胃腸)を助け、痰の元となる余分な水分を排泄。また、精神を安定させる(安神)働きも担います。
- 蘇葉: 気を巡らせ、半夏の働きも助けます。また、その芳香によって溜まった「気」を外へ発散させます。
- 使薬:生姜 半夏の毒性を抑えつつ、胃を温めて機能を正常化させ、全体の調和を図ります。

何かの原因(だいたいがストレス)で「肝気が停滞」することから始まります。上半身の気の流れが悪くなり始めます。気の溜まりは、五行で考えると「肝から脾」にも影響(相克関係)します。脾胃にだんだんと影響が及び、脾胃の気の流れが悪くなります。特に「胃」の上から下にものを移動する働きが低下します。溜まった胃気は上にあふれ出して、症状としては「悪心・ゲップ・痞え」が起こります。上半身の気の停滞は、肺にも影響を及ぼします。肺の気が逆上すると咳になります。肺は水代謝も司っていますから「痰(有形・無形)」が生じたり、気と痰が入り交じり結びついて(痰気互結)ノドの違和感や痞えも悪化します。
と、詳しめに解説しましたが、何が言いたいかと言いますと(^-^;;;;
このストレスなどを原因として、肝・脾・肺の歪みが絡み合って「ノドの狭窄・悪心・げっぷ・胃のつかえ・息苦しさなどの気の氾濫・痰の詰まり」が起こっています。症状は実際にはもっと多彩で、胃の症状:悪心・嘔吐、ゲップやしゃっくり、胃のつかえ、逆流性食道炎のような気持ち悪さ、神経性胃炎、胃アトニー、呼吸器の症状:せき、薄い痰、息苦しい、気管支炎、しわがれ声、咽頭炎、・・・・色々と使えます。高齢者の嚥下困難にも使えるようです。
半夏厚朴湯のイメージ
半夏厚朴湯をGeminiでイメージ図にしてみました。「草原に立ち込めた霧を爽やかな風で吹き飛ばす」ということで「半夏・蘇葉・厚朴・生姜」で立ち込めた霧を吹き飛ばします。

半夏厚朴湯のポイント
半夏厚朴湯で多い質問が「最近、効きにくく感じる」。
昨年、喉が詰まったので半夏厚朴湯を処方されたが驚くほどすっきりと治った。今年も起こったので半夏厚朴湯を服用しているが・・・効きにくくなったように感じる。
こんな感じです。半夏厚朴湯は「症状を取る力」が強いです。のどのつかえなどは、数日の服用で変化を感じることも多いですが、体の弱い部分を補正するチカラは少ないです。半夏厚朴湯で症状が改善しても肝・脾・肺の弱さはまだ残っています。
ストレスはずーーーっと続いているのですから、症状が良くなってるうちに体質を改善することが大切です。例えば半夏厚朴湯を「加味逍遥散+香蘇散」に変更するなどです。
類似処方
半夏厚朴湯と加味逍遙散との違い
漢方を勉強された方に半夏厚朴湯の話をすると「加味逍遥散も半夏厚朴湯にストレスに使うとのことですが、どう違うんですか?」という質問を受けたことがあります。同じストレスに使う処方ですが処方構成や使い方は全く違っています。
| 同じ | 違う | |
|---|---|---|
| 半夏厚朴湯 | 茯苓・生姜 | 半夏・厚朴・蘇葉 |
| 加味逍遥散 | 茯苓・生姜 | 当帰・川芎・牡丹皮・芍薬 柴胡・薄荷・山梔子・甘草 |
半夏厚朴湯は「半夏」を基本とした「痰」を解消して下に降ろす処方、加味逍遥散は「柴胡」を基本とした詰まりかけた気の流れを調整すると同時に土壌を改善する処方。加味逍遥散のほうが長期戦の処方です。症状があろうが無かろうが服用します。半夏厚朴湯は症状が無くなれば中止する場合が多いです。もちろん、同時に使うこともあります。
まとめ
「検査で異常がないから」と諦めず、漢方なら改善できることも多いです。気の巡りを整えることで、スッキリとした毎日を取り戻してみませんか?

