舌の色「寒熱」の傾向を判断
中国漢方には、病は舌に現れるという考え方がある。
これを基本に、舌の状態をさまざまな角度から見ることによって、病因や病気の程度をつかもうというのが舌診だ。舌を観察すれば健康状態は一目瞭然である。
前回は、舌の表面につく舌苔について触れた。舌の状態とともに、舌診で重視されるのが舌の色である。
中国漢方では病気を診察した後、体の寒熱の状態をよく見る。
体が熱傾向にあるか、冷え傾向にあるかによって、使用する薬は大きく違ってくる。この寒熱を判断するのに、舌の色は大いに役立っている。
舌の色は、赤(鮮赤)・ピンク・白(薄いピンク)の3つに大別できる。
健康な人の舌はピンク色であるが、体調や病気によって色は常に変化する。
赤っぽい舌は、体が熱っぽかったり、熱がこもっている人に多く見られ、体の栄養やエネルギーの過剰、急性の炎症による熱症状(内熱)などを物語っている。
一方、白っぽい舌は冷え性タイプの人に多く見られる。老化や臓器の働きの低下によって、体がエネルギー不足や貧血傾向にあることを表している。
舌の赤い熱性タイプの人は、体の熱を冷ます作用のある黄連解毒湯や三黄瀉心湯が効果を上げる。
逆に舌が白っぽく冷え傾向にある人は、エネルギー生産量を上げて、体を温める作用のある八味地黄丸、海馬補腎丸などが使用される。
路 京華(中国中医研究院広安門医院主治医師)讀賣新聞日曜版『漢方漫歩』1993/06/27