「五月病」の原因「陰陽」「気」の乱れ
「五月病」の原因「陰陽」「気」の乱れ日本に来て4年、燃えつき症候群、空き巣症候群、スーパーウーマン症候群など、中国では聞いたこのとのない不思議な病名に出くわす。(漢方漫歩より)
五月病や六月病にも戸惑った。環境の変化に適応しきれない人の、心身の疲労と軽いうつ状態のことで、五月病は大学生に多く、新人OLやビジネスマンは発症時期が少し遅れて六月病になるという。 いずれも心身症領域の疾患だが、中国漢方の立場からみた場合、ポイントは2つある。
1つは、陰陽のバランスの崩れだ。
中国漢方では、人の健康状態を陰陽のバランスでとらえるが、五月病や六月病は、明らかに交感神経(陽)と副交感神経(陰)がバランスを欠いた状態である。機能(気、陽)と物質(血、陰)両面の失調状態を改善することで、人間の体に本来備わっている心身のバランス調整能力を取り戻すことである。
気血を補い、ストレスによって消耗した体力を高めてくれる漢方の名薬に十全大補丸がある。
2つ目のポイントは「肝鬱気滞」である。中医学では、肝を精神作用との関連が強い臓器として重視している。
イライラする、気分がふさぐ、胸やわき腹が張って苦しいなどのストレスからくる全身症状を、中医学では「肝鬱気滞」と呼び、気が滞っている状態ととらえるのだ。肝機能を高め、気のめぐりをよくする漢方薬は数多く、逍遥丸や開気丸、竜胆瀉肝湯などを症状によって使いわけたい。
路京華(中国中医研究院広安門医院主治医師)讀賣新聞日曜版『漢方漫歩』1993/05/02