血栓性外痔核・肛門周囲膿瘍・痔瘻の漢方のポイントを解説!注意点や早く治るためのコツも紹介

痔の中でも激痛の痔、血栓性外痔核・肛門周囲膿瘍をまとめています。

「血栓が詰まるか」「ばい菌(雑菌)で腫れるか」と原因は違いますが、どちらも痛みは強いです。もし受診をしていないようなら病院をお勧めしていますが、一般薬(ポラギノールM)を使ったり、漢方薬をお薦めすることもあります。

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血栓性外痔核を繰り返す場合は、冷えの改善+生活習慣の見直し+瘀血体質の改善などをお勧めしています。例えば温経湯・桂枝茯苓丸・冠元顆粒などです。

目次

血栓性外痔核と肛門周囲膿瘍の違い

血栓性外痔核
けっせんせいがいじかく
肛門周囲膿瘍
こうもんしゅういのうよう
(痔瘻)
痛み 激しい痛み、肛門の腫れ 激しい痛み、肛門の腫れ
原因 排便時にいきむ、
同じ姿勢を繰り返す、
寒いところで作業をする、
便秘や飲酒、香辛料など。
血流が悪くなったため
血栓ができて詰まる。
肛門と直腸の境目のポケットに
入った雑菌が皮膚の表面で炎症を
起こす。
特徴 急に出現する。
見た目 いわゆるイボ痔。
肛門の便の出口のあたりがボコッと腫れる。
静脈のような青紫の瘤。
触ると堅い豆のよう。
皮膚が破れると出血する。
閉塞していると便の出口のすぐ脇で腫れる。
触るとニキビのようにやや堅さとブヨブヨさが混在。
膿は出口がないため徐々に大きくなる。
開放部位があれば膿と血が出てパンツが汚れる。
養生法 温めると楽になる。
座浴やカイロを当てる*など
煙草を吸わない。
便秘・下痢を避ける。
風呂に入り清潔にする。
(下腹部を温める)
炎症のあるときは冷やすと楽になる。
便秘・下痢を避ける。
風呂に入り清潔にする。
西洋医学的には 保存療法か手術か。
安静にしていると1週間程度で
血栓が溶けて、徐々に痛みが
消えることも。
痛みが酷い場合は手術になる。
閉塞している場合は手術。
切って膿を出すと楽になる。
術後、抗生剤(フロモックスなど)と
鎮痛剤(ロキソニンなど)
応急処置
お薦めの方法
安静にして痛み止めを使う。
円形座布団などもお薦め。
予後 3~5日目が痛みのピークで、
1週間程度で痛みは消える。
血栓も数ヶ月で完治する、治りやすい痔。
肛門周囲の皮がたるむことも。
1年ぐらいでの再発率はざっくり
3割ぐらい*(らしい)
痔瘻(じろう)に進行しやすい。
痔瘻になると治療は手術のみ。
漢方処方 瘀血体質:
乙字湯や浸膏槐角丸+
田七人参+冠元顆粒など
痰湿体質:
荊防敗毒散や竜胆瀉肝湯+
整腸作用のあるサプリメント

※典型的な例をまとめてみましたが、大きさや堅さや場所など人により様々ですので、病院で目視してもらうことが大切です。痔・肛門周囲膿瘍の初期には痛みがなく違和感だけの場合もあります。違和感を感じたときに恥ずかしがらずに病院の肛門科を受診しましょう。ちなみに、日々の生活に円座は基本アイテムです。痔瘻の体験談はこちらが、複雑痔瘻 入院前日記 〜自分には関係ないと思っていた病気〜(消えていました)参考になりますでしょうか。痔瘻になれば治療は手術(入院)です。

痔のツボ、会陽

血栓性外痔核でカイロを当てる場合、直接当てるのもいいかもしれませんが、痔のツボ「会陽(えよう)」に貼るのはいかがでしょうか。このツボ(会陽・会陰)は経絡、足の太陽膀胱経と督脈が交差する場所です。痔以外にも生殖器や泌尿器に効果のあるツボで、場所はお尻のくぼみのあたり、尾てい骨から1cmぐらい横(左右)です。このツボを刺激することで、肛門の血流が良くなり痛みが緩和します。直接カイロを当てる場合は、低温やけどに注意しましょう。

漢方でなんとかしたい

血栓性外痔核

(血栓性外痔核が持病の)某先生は、循環を改善する漢方処方、田七人参+冠元顆粒と紫雲膏の軟膏を愛用しているようです。

田七人参は色々なメーカーから販売されています、当薬局では活血の強い文山田七(クリーク)をお薦めしますが、医薬専用メーカーの田七末なら何でもいいとは思います。

安い田七はあまり効果がない気がします。紫雲膏はしもやけなどにも使う循環をよくする漢方の軟膏です。

肛門周囲膿瘍・痔瘻

肛門周囲膿瘍は、毛嚢炎の時期に「桂枝湯」を使います。ごくごく初期ですよ。ちょっと成長し始めると膿を持ち始めますので残念ながら次の段階に進みます。

この段階では触ると若干熱を持っていたり、鈍い痛みがあったりします。病院を受診して、状況が酷ければ手術になることも多いですし、抗生剤を渡されて「様子を見ましょう」と指示される場合もあります。

この「様子を見ましょう」でご相談をいただく場合、基本的には、痔瘻の穴を深くしないために、漢方を使います。例えば荊防敗毒散+大黄牡丹皮湯(+排膿散及湯)を併せて使っています。

この処方、溜まった膿を出さないと治らないので、まずは膿を出しやすくなります。ナプキンを張っておくといいでしょう。ナプキンが膿でベタベタしてきたら治る段階です。

 

痔瘻は手術しても再発することがあります(悲しいですけれども)。

再発の予防として、体質的に脾虚+湿熱の方が多いので竜胆瀉肝湯+補中益気湯(補中丸)での体質改善をお勧めすることが多いですね。軟便傾向が続くとその分だけリスクが大きいので、軟便の時期が長い方には食物繊維の製品(ラブレ)を併用してもらいます。

手術をすると肛門の形が変わり、便が細くなった・排便しにくくなったという相談もあります。コレに関しては漢方でなんとも出来ないので、肛門拡張をお勧めしています。ちょっと恥ずかしいですが・・・、頑張るしかないです。

その他の肛門周辺の痛み

肛門の痛みで多いのは痔核・肛門周囲膿瘍(痔瘻)そして切れ痔(裂肛)ですが、それ以外の場合もあります。

骨盤内の病気でも女性に多い小腸瘤(子宮脱に似たような感じです)、男性の場合は前立腺炎でも会陰部に違和感が出ることもあります。

検査でも原因のハッキリしない慢性的な肛門周囲の痛みもあります。「特発性肛門痛」と呼ばれ、肛門周囲の神経や筋肉の痙攣・痛みではないかともいわれています。

例えば、夜に起こりやすく短時間で治まる一種のこむら返りのような痙攣状態や、座っているときに起こりやすい持続的な神経痛(虚血状態によるもの)の可能性もあります。西洋医学では消炎剤や抗痙攣剤、痛みが強ければ神経ブロックなど。東洋医学では針治療や漢方では槐角丸+芍薬甘草湯、桂枝加朮附湯加減なども検討されています。

参考:低位筋間型肛門周囲膿瘍に対する切開排膿に関して 日本大腸肛門病学会雑誌

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この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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