認知症に効果のある漢方:抑肝散と××××の使い方

エーザイの認知症の勉強会を受けてきました。エーザイはアルツハイマー型認知症の処方としてよく使われている「アリセプト」のメーカーです。

※アリセプト 効能効果:アルツハイマー型認知症における認知症状の進行抑制(病院で処方を受ける医薬品です)

アリセプトは最初は軽度から中程度の認知症への適用でしたが、最近では高度認知症にも適用が認められています。認知症の患者さんが直接漢方薬局に来局、ということはほとんどないのですが、患者さんのご両親がアリセプトを服用している、ということは時々相談されますので、最近はどういった流れになっているのかな?と興味を持ちました。

講義のポイント:
認知症の患者さんは、認知機能検査(MMSE)も大切だが、患者さんの意欲(バイタリティーインデックス)も大切。
適切なケアはアリセプトの服用にも勝る効果がある。QOLに効果(アリセプトで意欲が上がることで、適切なケアにつながることもある、とフォローあり)
アリセプトで効果が認められるのは3ヶ月後からぐらい。
軽度の認知症は2年間、中程度は1.5年間、それ以降は高度というように移行していく。初期の診断が大切。

ケアは重要とのことです。ケアというのは一緒に運動するや声かけなどの身体的や精神的なケアのこと。それによって生活水準はある程度維持できるようです。

アリセプトは鬱状態も改善するらしく、服用を始めて行動力がアップすると、介護者への暴言などの周辺症状がでることもあるようです。その場合は、病院では抑肝散やメマンチンといった処方を併用するとよい、とのこと。確かに、抑肝散で落ち着く例はありました。このときに、抗うつ薬などの量が多く処方されていると急にショボーンとしてしまって、難しくなるようです。

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漢方の抑肝散は、アルツハイマー型認知症の周辺症状を抑制します。中医学では平肝熄風・疎肝健脾の処方と言われ、児童の夜泣き・疳の虫に使われた処方でした。高齢者と児童。不思議な取り合わせですが、認知症で起こる周辺症状とは、結局は同じなのでしょう。

周辺症状とは:認知症の症状には、誰にでも見られる「中核症状」のほかに、人によって現れ方の違う「周辺症状」があります。周辺症状は、お金を取られたと思い込む妄想や、あちこち歩き回って帰れなくなる徘徊、排泄物をいじる不潔行為などさまざまですが、こうした言動や行動につき合うのはとても大変なことです。介護をする人が疲れ果ててしまうことが少なくありません。漢方薬は、こうした周辺症状を改善する効果が高いといわれています。[認知症フォーラム.comより引用]

また、漢方の勉強会に出たときに、認知症に活血化瘀の処方をつかうという話があり。(活血化瘀とは血行循環改善のことです) お勧めするときにはそういった系統の漢方薬を併用していただくことが多いです。

2008年の毎日らいふに、福岡大学の藤原道弘教授(当時)が、こういった記事を書かれています。

認知症を引き起こすアポトーシスを押さえるものとして藤原教授が着目したのは、血行をよくする漢方でした。アルツハイマー型認知症は脳梗塞や糖尿病を併発しやすく、脳血管型認知症は慢性的な虚血が原因とされています。双方に共通するのは血流の問題、漢方で言う瘀血の状態です。いわゆる血液どろどろの生活習慣が、認知症を引き起こす神経細胞のアポトーシスを促進しているのではないかと考えました。

認知症の改善が期待できる処方として「釣藤散」や「当帰芍薬散」などがあります。藤原教授はその中で、血液をさらさらにする作用や、高血圧、心不全などの予防効果が高く、抗酸化作用にも優れた「丹参」を主薬とする「冠元顆粒」に注目。虚血によって認知障害にしたラットに与え、記憶障害やアポトーシスの改善効果を調べる研究を行いました。

結果はラットを虚血にする14日前から7日後まで21日間投与したケースでは記憶障害もアポトーシスも症状はかなり軽くなり、虚血後7日間与えたケースでも記憶障害に優位な改善が見られ、アポトーシスも減らせると言うことがわかりました。(後略)[毎日らいふ 2008年5月号]

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この記事を書いた人

漢方を専門に学ぶ薬剤師。大学卒業後、東京・高知の漢方薬局にて漢方を研鑽。漢方薬局の二代目として大阪に戻る。このサイトでは、身近な漢方であるようにと「分かりやすい言葉」で説明するように心がけています。

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