40代、私と同世代のドリンク剤といえば、リゲイン・鉄骨飲料・ユンケル黄帝液で、ビジネスマンはみんな飲んでいたようなイメージがありますが、このユンケル黄帝液の大切な生薬のひとつが「牛黄」です。

牛黄、名前の通り牛から出る黄色いもの、胆汁などが固まったものですが、高貴薬と言われ万病が治ると珍重されていました。昔はこのような「玉」の状態で売っていました。今は、粉末にして滅菌した製剤やカプセルに入れた製剤、他の生薬と併せたような製剤と、製剤になっているものがほとんどです。
牛黄の使われ方
中国の古典には「大人の精神錯乱を治したり、寿命を延ばしたり、物忘れがしなくなったり」に使うと書かれ、幅広く活用されていました。現在臨床での使い方としては、
- 鎮痙作用(消化管の痙攣、差し込みなど)
- 肝障害改善
- 解熱
- 貧血改善
- 抗酸化作用
- 鎮静(交感神経の興奮を抑える)
の5つが多く、特に「交感神経がオーバーヒートしている」状態にはよく使っています。 「人参(高麗人参)」を含むことから、精神面だけでなく肉体面の疲労も補ってくれますので、使ってすぐに効果を感じる処方です。
牛黄を使った製品・製剤には色々とありますので、まとめています↓↓↓↓
牛黄(ゴオウ)
ひときわ価値のある高貴薬 それが<牛黄>
金の何倍もの値段が付く生薬がゴオウ(牛黄)です。ゴオウはひと言でいってしまえば、牛の胆嚢にできた、胆石(結石)のこと。しかし、この胆石が発見できるのは牛1000頭に1頭ともいわれ、その希小性と、多くの人の健康を支えるすばらしい薬効とが相まって、ゴオウを「高貴薬の中でもひときわ価値のある特別な存在」たらしめています。
形状は直径約1~4cmの球形または塊状。色は赤みがかった黄褐色で、切断面には木の年輪のような紋様が見られ、口に含むと心地よい苦みの中にわずかに甘みが感じられます。値段が高いため、古来ニセ物も多く、特に粉末にしてしまうと区別が難しくなるので、「日本薬局方」では粉末にしたものは適合品とは認めていません。
無病息災の願いを託された<牛黄>
ゴオウはかなり古くから効き目のあらたかな薬として珍重されてきました。
最も古い記述が見られるのは5世紀以前に編まれた「漢方のルーツ」ともいえる薬物書『神農本草経』です。365種類もの薬物を収載したこの書の中でゴオウは「上薬」に分類され、「命を養う薬」として、毒がなく、量を多くのんだり長期にわたって服用しても害がない薬とされています。
ゴオウがいかに人々にありがたがられているかを示すエピソードのひとつに護符の話があります。護符とは「牛黄宝印」とか「牛玉」とか書かれたお札。
無病息災のお守りの一種ですが、この護符の文字はゴオウを入れた墨によって墨痕鮮やかに記されています。
墨に溶け込んでいるだけでも人間を災厄から守ると信じられているゴオウ。昔も今も最高ランクの効き目を持つ生薬として重用されています。
赤ちゃんからお年寄りまで広く用いられる<牛黄>
ゴオウの薬効としては『神農本草経』に「驚癇寒熱、熱盛狂痙」という記述があります。現代の言葉に直すと、驚いて卒倒した者や高熱で痙攣を起こした者、精神異常をきたした者に効くという意味です。
また、時代が下って漢の時代の漢方書『名医別録』には、「小児の百病、諸癇熱で口の開かぬ者、大人の狂癲を療ず」とあり、つづけて「久しく服すれば身を軽くし、天年を増し、人をして忘れざらしめる」と記されています。これはゴオウが「子どものあらゆる病気、口も開けないほどの高熱、大人の精神錯乱など幅広い症状」に用いることのできるお薬で、しかも長期に渡って服用すると「寿命を延ばし、物忘れしなくなる」働きも期待できることを示しているものです。
ゴオウはまさに赤ちゃんからお年寄りまで年齢を問わず効果をあらわす貴重なお薬といえます。
疲労から意識障害まで、さまざまに応用される<牛黄>
現代の中国では、ゴオウを芳香開竅薬というカテゴリーに分類しています。よい香りを持ち、心に入って邪を除き、意識回復に働く薬という意味です。
おもな効能としては、開竅豁痰、清熱解毒が挙げられ、高熱や熱病による意識障害、炎症や痙攣に効果があるとされています。とくに脳梗塞などの脳血管障害による意識障害に用いられるケースが多く、これはゴオウの末梢の赤血球数を増加させる働きや、抗酸化作用によるものと考えられています。
生薬は、構成成分が複雑なため、作用を簡単には説明できないといわれています。なかでもゴオウは価格も高価なことから、研究が進みづらかった生薬のひとつです。しかし、薬効に対する研究は徐々に積み重ねられており、上記以外のいくつもの作用が発見されて、滋養強壮薬や強心薬、小児用薬、感冒薬、胃腸薬などに広く応用されています。(救心製薬:健康の強化書より抜粋)
牛黄の製剤を使った症例
50代女性、ややがっちりタイプ。仕事が忙しく、疲労感で午後から逆上せる。血圧はやや高い、ドリンク剤を飲んで頑張っているが、ドリンク剤は糖分が多いため気にしている。胃腸が弱く食事を少し多めにとるとすぐに下痢をする。
この方の場合は、「牛黄の製剤」を午後から服用してもらい、あと漢方薬を1種類継続していただきました。2~3日で、疲労感が落ち着いてきて逆上せにくくなり、夕方までバリバリと働けるようになった、とのことです。
高いドリンク剤を毎日服用していたのですが、そちらよりも効くということで、「牛黄の製剤」を継続されています。午後に熱感のある方でも、夕方だけ「牛黄の製剤」、それ以外の時期には別の処方を検討する場合があります。